ライザップ「今期赤字なら退任」明言の瀬戸社長、その勝算は

ライザップ株主総会

東京都内のホテルで開かれた、ライザップグループの株主総会。周辺には案内の係員も。

撮影:小島寛明

個別指導のトレーニングジムなどを展開するRIZAP(ライザップ)グループの株主総会が6月22日に開かれた。

瀬戸健社長は株主たちの前で、2020年3月期決算(国際会計基準)で赤字となった場合は、退任するとの意向を示した。

2019年3月期決算は買収を重ねた企業の再建に手間どり、純損益で193億円の赤字となったが、「うみは出した」とする瀬戸氏は自ら退路を断った。

1年前にカルビーからライザップに転じた松本晃取締役(構造改革担当)は、この日の株主総会で退任し、今後は特別顧問として瀬戸社長のアドバイザーとなる。

今期のライザップは、半年間の「うみ出し」が、実効性のあるものだったかを問われることになる。

「今期赤字はありえない」

瀬戸健氏

2019年5月15日、決算説明会でプレゼンテーションするライザップグループの瀬戸健社長。

撮影:小島寛明

6月22日午前、東京都内のホテルで開かれた株主総会で、株主の一人は、瀬戸社長の進退について質問した。

「結果にコミットできなかった場合、社長を辞めるとか辞めないとかいう話があります」

瀬戸社長は、1年で黒字化を達成できなければ、社長を辞任するとの意向を示した。

「今期赤字というのは絶対にありえないということで、自信を持っている。黒字にならなかったら、この場にいないということだ」

重たい上場子会社群

ライザップが買収した企業群の中で、ネガティブな意味で注目を集めているのは、ワンダーコーポレーションの存在だ。

ワンダー社は、2018年3月にライザップグループの傘下に入った。

売上高は2019年3月期に700億円を超えており、東証JASDAQに上場している。

ゲームや音楽、映像ソフト、書籍の小売店「WonderGOO」や、ゲーム・音楽ソフトの小売店「新星堂」などを展開。さらに、映像ソフトのレンタルTSUTAYAのフランチャイズ店舗網も有する。

同社が抱える小売店は、インターネットの音楽や映像配信サービスへの代替が進んでいる。ワンダー社は2019年3月期決算(日本基準)では黒字を確保したものの、業態の抜本的な見直しが迫られる企業のひとつだ。

瀬戸社長も株主総会の中で、「ものを買うことが減ってきている」と消費行動の変化を認めている。

複数の関係者によれば、2018年秋以降、ライザップグループはふくれ上がった子会社群の売却先を探していた。ワンダー社も売却候補に上がったが、「ワンダーについては、引き合いがほぼなかった」(ライザップ関係者)という。

グループは、WoderGOOや新星堂の店舗閉鎖を進めており、2019年3月末までに22店舗を閉鎖した。今期もさらに店舗の閉鎖を進める見通しだ。

店舗の閉鎖を進めた結果、2019年3月期に720億円台だったワンダー社の売上高は、2020年3月期は610億円規模に縮小する予想だ。一方でライザップグループは、構造改革の進展により店舗の収益を向上させるとしている。

上場子会社の売却に苦慮

ライザップ

相次ぐ買収で膨れ上がったグループ。この半年てで採算の取れないと企業を売却するなど、「うみ出し」に注力してきた。

撮影:今村拓馬

ライザップグループには、ワンダー社を含め9社の上場子会社がある。そのうち夢展望、堀田丸正、SDエンターテイメント、ぱどの4社が2019年3月期は赤字だった。

これまで買収してきた企業について瀬戸社長は「3年以内に黒転(黒字転換)してきた」と強気を見せる。

一方で、グループにとって重荷になりかねない上場企業群がグループ内に残ったのは、前出のワンダー同様、売却先の確保に苦慮した結果との見方が強い。

この数年、グループの成長とともに、買収する企業の規模も大きくなった。

1年での黒字復帰を掲げたライザップグループにとって、こうした上場子会社の立て直しの成否が、黒字化の成否も左右しそうだ。

無軌道ともとれる買収を重ねたライザップグループに対して、「ガバナンスが欠如している」との批判が集まった。

このためグループ経営陣も刷新。22日の株主総会で、社内の取締役を瀬戸社長1人とし、5人の社外取締役が瀬戸社長を監視する体制とした。

大きな赤字を出し、株価も大きく下落したが、なお、瀬戸社長への期待は高い。株主総会で質問に立った複数の株主から、瀬戸社長を応援する発言もあった。

退任の松本氏「もうちょっと辛抱。黒字化はする」

瀬戸健社長と松本晃氏

今期黒字化を達成しないとライザップグループを退任すると明言した瀬戸健社長と、取締役を退任した松本晃氏。

2019年5月15日の決算説明会で、小島寛明撮影。

1年前、株主の期待を集めて就任した松本氏は、株主総会を最後に取締役を退任することになった。株主の求めであいさつに立った松本氏は、こうあいさつした。

「瀬戸さんとは、議論は尽くした。対立も確かにあったが、実に健全な対立だった。人間が憎み合う対立は一度もなかった。今年1年でV字回復するとは思わない。もうちょっと辛抱だが、黒字化はする」

株主から、松本氏の社外取締役への就任を求める声も出た。松本氏は今後、月に1度のペースで瀬戸社長と会い、アドバイスを続けていくという。

(文・小島寛明)

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