AP Photo/John Locher
- アメリカでは、銃や銃弾を販売する一部大手企業が苦戦している。トランプ政権下では、消費者は銃規制が強まる心配はないと見ていて、「恐怖をベースとした購入」がないことがその原因だという。
- 銃弾の売り上げが減っているのは、これまでの「恐怖」で消費者が買いだめをしているからだ。
- ある企業の幹部は、「回復には18~24カ月かかるだろうと見られていたが、2年以上が経った今も市場は回復していない」という。
アメリカでは、銃や銃弾を販売する一部大手企業が苦戦している。トランプ政権下では、消費者は銃規制が強まる心配はないと見ていて、「恐怖をベースとした購入」がないことがその原因だという。
ホワイトハウスと上院を共和党が支配する中、民主党が銃をより厳しく規制する法案を通過させる可能性は低く、銃が買えなくなるのではないかという不安から、消費者がパニックを起こしたように銃や銃弾を買い込むような状況にはない。
業界にとって、これは皮肉とも言える。銃器に対する需要を見る上で参考になる、ハンドガンの購入者の全米犯罪歴即時照会システム(National Instant Criminal Background Check System)への照会数は、2018年に6%減少し、2019年第1四半期は8%減少した。
銃器大手のアメリカン・アウトドア・ブランズ(American Outdoor Brands)のCEO、ジェームズ・デブニー(James Debney)氏は6月19日の第4四半期の決算発表で、「規制に対する恐怖…… をベースとした購入がない 」と述べた。「今はそれが全く見えない」という。
スミス&ウェッソン(Smith & Wesson)を所有するアメリカン・アウトドア・ブランズの2018年4月までの1年間のハンドガン及びロングガンの出荷量は、ヒラリー・クリントン候補(当時)が大統領になるのではないかと消費者が恐れた前の年に比べて、約82万丁少なかった。 銃規制が強化されるのではないかとの"恐怖"が消えたことによって、同社のハンドガンの売り上げは2億3000万ドル(約247億円)以上、割合にして41%減少。ロングガンの売り上げもほぼ半減し、約9000万ドルだった。
デブニー氏はアナリストに対し、「市場はほぼ底に達したようだ」と語ったが、「ここから成長し始めるか? それは分からない」と話した。
2020年の大統領選も、銃器ブームにつながる可能性がある。決算発表で、銃規制をめぐる保守派のレトリックが強まれば銃器が売れるだろうと、小売業者は在庫を確保しているのかと尋ねられると、デブニー氏は、そうした兆候は見えないと答えた。ただ、前回、急激に銃器の売り上げが伸びたのは、投票日の4、5カ月前のことだと、同氏は指摘した。
デブニー氏は、「(選挙まで)まだ1年残っている。前回の選挙と同じ時期には宣伝をスタートさせる」と言い、「まだまだ先の話だ。成り行きを見守りたい」と語った。
銃器を扱う他の企業も苦しんでいる。スターム・ルガー(Strum Ruger)は「市場全体の需要が低下した」結果、2019年第1四半期の純売上高が13%、1株当たり利益が9%それぞれ減少。同社のリボルバー(回転式拳銃)とライフルの売り上げも、2018年と同じようなトレンドにあると報告している。中間選挙で民主党が下院の過半数を取っても、売り上げが増えることはなかった。
同社のCFO(最高財務責任者)、トーマス・ディニーン(Thomas Dineen)氏は2月、第4四半期の決算発表で、「中間選挙のあと、需要が増えるかもしれないと思ったが、そうはならなかった」と述べた。
銃弾の売り上げも、同様の問題に直面している。銃規制が強まるのではないかと恐れた消費者は銃弾を買いだめしているため、新たな銃弾を買う比率が落ちている。オリン(Olin)の銃弾の製造を行う「ウィンチェスター」部門も、2018年の売り上げは4%減り、2019年第1四半期の売り上げは8%減少した。
同社のCEO、ジョン・フィッシャー(John Fischer)氏は5月、第1四半期の決算発表で、「個人消費者の在庫レベルは依然として高く、短・中期的に商品としての需要に圧力をかけるだろう」と述べた。
2019年2月には、これまで通り、年間1100~1200万ドルの需要を回復するためには、消費者が在庫を消費するまで「もう1年半」かかる可能性があると述べた。
同じく銃弾を販売するビスタ・アウトドア(Vista Outdoor)も、"消費者の在庫"に苦しんでいる。
CEOのクリストファー・メッツ(Christopher Metz)氏は5月、第4四半期の決算発表で、「銃弾市場は底に達したように見えるが、わたしたちが望むような回復のJカーブは依然として見られない」と述べた。
「回復には18~24カ月かかるだろうと見られていたが、2年以上が経った今も市場は回復していない」と、メッツ氏は言う。
(翻訳、編集:山口佳美)