娘4歳まで別居婚でワンオペ。家庭を一切考えない転勤は、いつまで社会の常識なの?

日本企業、転勤

「転勤」という「絶対命令」は、いつまで続くのか。

Shutterstock/ TokyoVideoStock

夫の育児休業明け直後に転勤内示を受け、退職を余儀なくされたと告発する元社員家族のTweetや、その後の「問題なかった」との会社の公式見解が炎上したカネカ騒動。

育休を取得した男性に対する「報復だ」という批判の声と合わせて多く上がったのが、「家庭の事情を一切、考慮しない転勤内示」への違和感だ。

Twitter上などでは「家を買ったら転勤になった」「内示から4日後に赴任地へ行けと言われた」「共働きで結婚直後に転勤」など、「会社の転勤命令」に対する、過酷な体験談や悲鳴の声は絶えない。

共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を逆転して20年超になる今、転勤が夫婦や家族の負担になるケースはさらに増えている。

終身雇用や年功序列と引き換えに、日本企業が社員に強いて来た「転勤」という慣習は、いつまでどこまで「絶対命令」なのか。

※Business Insider Japanでは、日本の転勤制度の「常識・非常識」について考えるアンケートを実施しています。文末のアンケートにご協力ください。

娘が4歳で「ワンオペ終わる」と号泣

終身雇用、年功序列

社員はプライベートの事情を、社命に対しては押し殺すべきなのか。

撮影:今村拓馬

「やっとワンオペが終わる」

大手企業の関西本社に勤めていたサヤさん(36)は、夫の住む東京への転勤内示を受けた当時、号泣した。サヤさん一家が結婚以来、初めて本格的に一緒に暮らせるようになったのは、娘がまもなく4歳になろうとする頃だった。

育児休業中こそ夫の赴任地で生活したが、それ以外の期間、サヤさんは一人、自分の勤務地である関西地方でワンオペで娘を育ててきた。家族がそろうのは子連れで夫の勤務地をサヤさんが訪ねる、月1〜2回程度だった。

サヤさんが勤める企業は女性でも全国転勤は当たり前、夫は東京が本社の別の大手企業に勤める。

結婚以来、ずっと別居が続き、娘が生まれてからというもの、「夫と同居したい」との希望を会社に伝えてきたが、会社の反応は「子どもがいて通常ローテーションに入れないのであれば、受け入れ先がない。同居のための特別な配慮は難しい」というものだった。

しかも、時短勤務も「前例がない」と認められず、1歳児を一人で抱えてフルタイム。仕事のスケジュールと子どもの体調との綱渡りのような日々に疲れ果てた。

退職願を出した直後に、希望通りの勤務地に

GettyImages

家族で一緒に暮らしたい、そのことを叶えるのも社命の前には至難の技だった。

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娘が2歳の頃、夫が地方から東京本社に異動になったタイミングで「せめて(夫の勤務地に近い)東京近郊を」と願い出るが、会社は「受け入れ先がない」の繰り返し。

しかも、夫の異動の1年後に、サヤさんが受けた転勤内示は、依然として関西エリア。

社員の家庭の事情などは一切、考えずに、ただ「2年ごとの転勤」ルールが実行されているだけだった。

「正直、絶望しました。保活や仕事の引き継ぎなどが重なり、ほとんどノイローゼ気味になって。退職を決意したんです」

その転勤先で退職願を出した直後に、突然、夫の住む東京への異動が決定したのだ。それが冒頭の号泣だ。

しかしサヤさんは結局、その会社を退職し、現在は別のIT企業に勤めている。

というのも、「これでしばらく家族で暮らせる」とほっとしていた同居生活から1年が過ぎた頃。

再び上司に「2年ごとに異動があるから、次の夏には異動の可能性がある」と言われた。張り詰めていた何かがプツン、と切れたのだ。その数カ月後に、転職先が決まると、今度こそサヤさんは会社を辞めた。

専業主婦がいることが前提の制度

企業によっては「内示から数日後に赴任」といったように急だったり、配偶者の勤務地に一切、考慮しなかったりという転勤制度は、専業主婦世帯が前提となっている。短期間での家族分の引越し作業や、子どもの転校や行政関係など一連の手続きは、昼間の時間を使ってやってくれる存在がなければ、あまりに過酷。

数年毎の定期的な全国転勤ともなると、共働き家庭が念頭にないことは明らかだ。これは、夫婦のいる世帯のうち共働きが6割超という現代に、果たして合っていると言えるのか。

子ども3人抱えた転勤族妻の再就職はいつか

転勤

「2〜3年で転勤を繰り返すので、私が仕事を続けることは実質、不可能でした」。働きたくても働けない現実がある(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

北関東在住の専業主婦で、6歳の長男と3歳の双子を育てるマナさん(37)は、エンジニアの夫が転勤族。もともとマナさんはアパレルメーカーで働いていたが、長男の出産後、復職しないまま退職した。

理由は夫の転勤だ。

「2〜3年で転勤を繰り返すので、私が仕事を続けることは実質、不可能でした。双子の誕生で子どもが一気に3人になったので、学費を考えれば私も働いた方がいいのですが」

長男が生まれた頃は都内に住んでいたが、その後、東北地方を経て、現在は子どもが生まれてから3カ所めだ。

夫の帰りは早くても午後10時を過ぎるため、双子が生まれたばかりの頃は、長男の幼稚園を長期に休ませて、山陰地方の実家に1年近く里帰りして子育てをした。

次もいつ夫が転勤になるか分からないので。できるだけ一緒に暮らそうと思うと、正直、自分は仕事に戻れるのか?とは思います

モヤモヤするものの、夫の父親も転勤族で、退職まで単身赴任を続けていた。

「ほとんど、父親と暮らした記憶がない。父親とは共通の話題がない」という夫が、「自分は父親のようになりたくない」と、家族帯同で転勤を望んでいる以上、マナさんに選択肢はあまりない。

「結婚して子供が生まれて、家買ってから転勤させる」

子連れママ

結婚式の招待状を上司に渡した当日に異動を言い渡されるケースも(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

転勤にまつわる違和感は、インターネット上にもあふれている。

新婚でも共働きの転勤は、こうなる。

私自身は、

結婚式の招待状を上司に渡した当日に異動を言い渡されました。

式の準備もドタバタな上、結婚式→新婚旅行→別々の家へ帰宅となりました。(一部抜粋)

これは、ブラックジョークなの?

先日小規模ながら歓迎会をして頂き、「会社は結婚して子供が生まれて、家買ってから転勤させる。その状況になったら辞めたくても辞められないから」というお言葉を頂きました。

年代が高めの世代とみられる人からは「かつては当然だった」という声も。

結婚したら転勤・子供が出来たら転勤・家を買ったら転勤みたいな理不尽な扱いは全国展開の大手では当然の仕打ちで、それが嫌だと思う人は「そういう会社に入社しない」形で防衛してたな。事業エリアが限定されている会社か、もしくは地元の中小企業を就職先にしてたな……。

終身雇用の保障なし転勤への違和感

社員のプライベートを考慮しない転勤制度は「よくある話」で片付けられてきたが、その根幹が揺らぎ始めているのも事実だ。

世界のトヨタ自動車ですら「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」(豊田章男社長)。

名だたる大企業で組織する経団連の会長も「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」(中西宏明会長)という時代。

大前提である終身雇用が崩れる中で、急な転勤命令や望まない配置など、社命を無条件に受け入れることに、少なくない数の人、特に今の20代30代が抵抗を持ち始めていることは、カネカ炎上騒動からもみて取れる。

「会社の命令は絶対」だった時代から、経済環境も働く人の意識も変わりつつある。転勤制度そのものが、社員の心情や生活の実態に、本当に合っているのだろうか。

みなさんは、転勤制度についてどう考えますか。日本の転勤制度の「常識・非常識」について考える、アンケートにぜひ、ご協力ください。

(文・滝川麻衣子)

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