吉本興業のお詫びリリースを受け、一斉にお笑い芸人の謹慎処分を報じる6月25日付けのスポーツ紙。
Businesss Insider Japan
芸能界を揺るがしている吉本興業所属の芸人たちによる“闇営業”問題。なぜ所属事務所(吉本興業)を通さない、いわゆる「闇営業」を行う芸人があとを立たないのか。
その背景について、多くのお笑い芸人と長年付き合いのある、関西芸能界に詳しい業界関係者が答えた。
まず今回の報道を見てきて、一つ物申したいという。
「若手芸人が『会社がちゃんと仕事をくれて、食べていけるなら、闇営業の仕事はやらない!』と言ったという記事を読みましたが、それはおかしいのではないでしょうか。面白い芸人なら、会社の仕事だけで食っていけます。会社からの仕事がないというのは、その芸人が面白くないと言うことでしょう」
同氏は続ける。
闇営業問題で吉本興業の所属芸人11人が処分を受けた。
吉本興業のホームページより。
「まず、関西では会社が把握していない仕事を直接引き受けることを『直』と呼んでいます。いわゆる闇営業が反社と直結しているというのは間違いです。
例えば、デザイナーやコピーライターでも、会社(事務所)を通さない仕事を受けたら『直』営業になりますよね。そう考えると、芸人、歌手、アナウンサー、俳優、スポーツ選手、みんな『直』をする可能性はあるわけですよ。
ただ、『直』は内々のイベントやパーティーなどに限られます。ポスターやチラシが出る興行だと、バレますからね」
闇営業の依頼先に反社が潜むリスク
吉本興業所属芸人による「闇営業」の余波を伝える写真週刊誌「FRIDAY(フライデー)」7月5日号。
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所属事務所としては、そうした依頼主の精査をし、反社会的勢力(反社)と関係がないかをチェックするのも、大事な仕事の1つだ。当然、所属芸人たちが危ない目に合わないように、また事務所の「商品」である芸人の価値を守るためにも、そういったイベントへの出演依頼には注意している。
「お笑い芸人の事務所には、パーティーやイベントの出演依頼は当然来ますが、中身を確認して断ったりもします。例えば、お酒の入ったパーティー。せっかくの芸が披露できなかったり、絡まれたりもあるので。私が知っている事務所はNGにしていました」
身近な人物からの「闇営業」依頼が危ない
芸人たちがつい参加した闇営業先が反社だった…(イメージ図)。
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こういった理由で、お酒の入る場には大手事務所が芸人(芸能人)を出さない場合がある。そこで「闇営業」で依頼する……というパターンが発生するわけだ。
例えば、断りにくいのが、知人経由など比較的身近な人物から依頼されるケースだ。
「正規ルートでは依頼できない……そんな時、同級生の友人の兄貴の知り合いの……世話になってる先輩の同僚が、芸能人を探してるねん! となる。『直』が発生するわけです。
こういった具合に素性の知れないものですから、反社が紛れ込む時もある。
もちろん、反社も名前が出たりするとパクられますし、今やそれでしのぎ(資金獲得活動)になる時代でもない。だから、誰かに対してイイ顔をしたいときに出てくる。それはお笑い芸人だけではなく、歌手、俳優、タレント、スポーツ選手みんなに言える、業界ならではのリスクなんですよ」
反社やトラブルを遠ざけるための事務所の仕組みがある以上、闇営業(直営業)が入る隙がある。しかし、芸人本人は、その依頼主の本当の素性は確認できない……そうした経緯があるとすると、今回の騒動が発生した「構造」の理解は深まる。
とはいえ、「知らなかった」では今の時代、済まされない。金銭の受け取りを一度は否定したという事実も消せない。
吉本興業の「お詫び」プレスリリースに書かれた所属芸人11人の謝罪コメントは、お笑い界のあり方に暗い影を落としている。
(文、大塚淳史)