太陽光だけで宇宙を航行「ソーラーセイル」宇宙船とは?

地球周回軌道を航行する「ライトセイル2号」の予想図。

地球周回軌道を航行する「ライトセイル2号」の予想図。

Josh Spradling/The Planetary Society

銀河系を横切って、近くの恒星系をめざすときの最大のハードルの1つは、我々の宇宙船が膨張を続ける宇宙を何光年も航行するために必要な燃料を十分に搭載できないこと。

だが、スペースXのロケット「ファルコンヘビー」に搭載されて6月24日夜(日本時間6月25日)に地球周回軌道に打ち上げられた新しいテクノロジーは、恒星間航行の障害を取り除くものになるかもしれない。

「ライトセール2号(LightSail 2)」は、太陽光のみで推進して地球軌道を回る最初の宇宙船となる。このプロジェクトを率いるのは惑星協会(Planetary Society)、資金の一部はクラウドファンディングの「キックスターター」で調達した。

「新たな歴史の始まり ── ライトセール2号は宇宙航行のテクノロジーを根底から進化させる」と著名なサイエンス・コミュニケーターで惑星協会のビル・ナイCEOはプレスリリースで述べた

クラウドファンディングで資金集め

ライトセイルの地球を回るミッションは、複数のプロセスを経て行われる。

まずはファルコンヘビーロケットの打ち上げ。次に小型衛星「Prox-1」がロケットから分離され、その後、Prox-1は食パン1斤ほどの大きさで、重さ11ポンド(約5kg)のキューブサット(小型人工衛星)を放出する。

宇宙空間に浮かんだキューブサットは、最終的にアンテナ、ソーラーパネル、そして帆を張るためのブーム(長い棒)とセイル(帆)を展開する。その後、ライトセール2号は2、3週間、宇宙空間を漂った後、ソーラーセイルを展開する。

「ライトセイル2号の開発での大きな課題の1つは、小さなキューブサットにすべてを詰め込む方法を見つけ出すことだった」と惑星協会のチーフサイエンティスト兼ライトセイル計画のマネージャー、ブルース・ベッツ氏は記者会見で語った。

2016年5月23日、テスト後に台の上に置かれたライトセイル2号。

2016年5月23日、テスト後に台の上に置かれたライトセイル2号。

Jason Davis/The Planetary Society

ライトセイル2号の4枚の三角形のセイルは、形状も機能もヨットのセイルに似ていて、つなぎ合わされて344平方フィート(約32平方メートル)の大きな1枚の四角形のセイルを形づくる。

セイルはマイラー(デュポン社製のポリエステルフィルム)製で、引き裂きに強く、反射性が高い。髪の毛の直径よりも薄い素材だ。

プロジェクトの費用は700万ドル、一部を2015年にキックスターターで4万人から集めた資金で賄った。

太陽光を利用して宇宙空間を航行

「ライトセイル2号」の予想図。

「ライトセイル2号」の予想図。

NASA

ほとんどのロケットはロケット燃料を使って宇宙空間を航行する。だが燃料は有限。一度、使い果たしてしまうと、ロケットはもはやスピードも方向もコントロールすることはできず、真空の宇宙空間を漂うことになる。

だが、ナイ氏によると、ソーラーセイル宇宙船ならエネルギー供給に限りはない。太陽の光を受けて宇宙を航行し続けられるからだ。

太陽光は「フォトン(光子)」と呼ばれる小さな粒子でできている。フォトンは質量を持たないが、太陽から放射されることによって移動エネルギーを持っている。光子1個が持つ移動エネルギーは極めて小さいものだが、そのエネルギーを集めれば、ソーラーセイル宇宙船を十分に動かすことができる。

太陽光がセイルで反射されることでセイルにエネルギーが伝わり、セイルを前に進める。

「セイルにかかる力の合計は、地上のイエバエの重さにほぼ等しい。どれだけ小さいか分かるはず」とベッツ氏は述べた。

「だが繰り返すが、重要なことは絶えず続いていること。常に存在する」

宇宙空間をセイリング

ライトセイル2号は太陽光を効果的に利用するために、ソーラーセイルの向きを太陽の位置に基づいて変える。頑丈なブームがセイルを支え、宇宙船は磁力計を使って地球の磁界の変化を読み取って、その向きを変える。その後、ライトセイル2号はジャイロとモーメンタムホイールを使って、徐々に回転を始める。

地球軌道を1周するごとに、ライトセイル2号は2度、ソーラーセイルを90度回転させる。つまり、セイルを太陽に対して垂直(90度)にして太陽光を受けて進み、太陽の方向に進むとき(ヨットで言うなら、風上方向に進むとき)はセイルを太陽に対して水平にする。ヨットのタッキング似ている(下の動画のラスト、2分37秒頃からの説明が分かりやすい)。

だが、正確には宇宙空間でセイルに何が起きるかはまだちょっとした謎。ナイ氏は記者会見で次のように語った。

「帆船の帆のように膨らむのか、レースヨットのジブ(船首の三角帆)のように素晴らしいカーブを描くのか、その中間なのか」

40年以上の歴史を持つソーラーセイリングのアイデア

1976年、故カール・セーガン博士はテレビ番組に出演し、ソーラーセイリングについて語った。以来、このアイデアは良く知られるようになった。

およそ40年後、Planetary Societyはセーガン博士の夢を実現した。4年前、同組織は「ライトセイル1号」を地球低周回軌道に送った。セイルの展開には成功したが、ソーラーセイルは行わなかった。

「これは純粋に展開テストだった。我々はキューブサットを打ち上げ、受信機、通信装置など、あらゆる装置をチェックした。そしてセイルを展開し、衛星が宇宙空間でセイルを展開している様子を撮影した」と惑星協会のチーフオペレーティングオフィサー、ジェニファー・ボーン氏は記者会見で述べた。

2015年6月8日、ソーラーセイルの展開直後に、ライトセイル1号に搭載されたカメラが捉えた画像。

2015年6月8日、ソーラーセイルの展開直後に、ライトセイル1号に搭載されたカメラが捉えた画像。

The Planetary Society

ライトセイル2号は1号よりも、高い軌道に送られ、より複雑な動作を行う。目標は地球からより離れた位置まで到達すること。ライトセイル2号の輝くセイルは約1年間、地表から肉眼で見えるはずと研究者は語った。

恒星間航行への第一歩

ライトセイル2号が成功すれば、燃料を必要とせずに宇宙空間を航行できる宇宙船の存在を証明することになる。

「これはゲームチェンジャー。いつの日にか我々は別の星に向かって、宇宙をセイリングするだろう」とナイ氏は解説動画で語っている

ライトセイル2号のカメラを使って写真を取るナイ氏(2列目右端)とチームメンバー。

ライトセイル2号のカメラを使って写真を取るナイ氏(2列目右端)とチームメンバー。

Jason Davis/The Planetary Society

このテクノロジーを使えば、地球上の研究者たちはヨットを操縦するように、ソーラーセイルを操作することができる。ライトセール号のような宇宙船はいつの日か、太陽光を利用して、あらゆる方向に航行できるようになるだろう。

「ソーラーセイルはまさに理想的」とナイ氏。

「ソーラーセイルを貨物船として使い、火星などに荷物を運べるようになるだろう」

ソーラーセイルを使えば、我々は燃料不足になる恐れなく、宇宙空間をより遠くまで航行できるようになり、人類はいち早く、近くの恒星系に到達できるようになる。これは、科学者たちが地球についての基本的な疑問を解く鍵になる。

「誰もが持つ2つの疑問がある。我々はどこから来たのか? 宇宙にいるのは我々だけなのか? そして、この質問に答えたければ、我々は宇宙を探検しなければならない」とナイ氏は述べた。

「そのために必要なミッションは、小惑星、火星、そしてエウロパへのミッション」とナイ氏は付け加えた。

「そこにどのようにして行くのか? どのようにして宇宙船を送るのか? 特に小惑星に宇宙を形づくった物質を探しに行くときに」とナイ氏。

「間違いなく、ソーラーセイルを使うことになる」




[原文:SpaceX's Falcon Heavy is set to launch the first-ever 'solar sailing' spacecraft powered purely by light

(翻訳、編集:増田隆幸)

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