スターバックスは、モバイルオーダーの取り組みを日本でもスタートした。同サービスで注文したユーザーは、店ではただ商品を受け取るだけでいい。
スターバックスコーヒージャパンは6月25日、スマートフォンアプリで注文から決済を行い店舗で商品を受け取れる「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー・アンド・ペイ)」を発表した。
6月26日から東京都内56店舗が対応し、2019年末までに300店舗、2020年末までには全国展開を目指すとしている。
Mobile Order & Payを利用するにあたって、ユーザー側に特別な費用などは発生しないが、スターバックスの会員制度「Starbucks Rewards」への登録および同社専用の電子マネー「スターバックスカード」へのチャージは必須となる。
一言も店員と話さずに注文から決済、受取まで
注文にはiPhoneおよびAndroidスマートフォン向けの「スターバックス」アプリを利用する(6月25日以前に利用していたユーザーは、各アプリストアでのアップデートが必要)。
Mobile Order & Payはアプリで注文・決済を行い、指定された時間に商品を取りに行くだけとなるので、仕事の合間など行列に並びたくない急いでいる時に最適だ。
商品はサムネイル写真から選べる。全商品ではないが、定番のコーヒーメニュー以外にも紅茶などの商品も選べる。
決済は会員情報に紐づけられた「スターバックスカード」のメインカードの残高が利用される。残高が少ない場合は、チャージも可能。
無事に注文が完了すると、受取時間の目安とオーダー番号が表示される。オーダー番号は「コーヒーの産地」+「番号」の組み合わせだ。
また、細かなカスタマイズをアプリで簡単に指定できるのもポイント。スターバックスのトッピング注文は一時期「呪文のようだ」などの評判もあったが、Mobile Order & Payなら店員と一言も交わさずとも注文できるため、普段は試せないような複雑なカスタマイズにも挑戦できる。
注文する商品によってカスタマイズできる項目は異なるが、ユーザー好みに設定できる。
なお、今回発表されたMobile Order & Payのできることと、できないことをまとめると以下のような具合になる。
■できること
- コーヒーや紅茶などの飲料の事前注文(開始当初は約40種類)
- 注文可能な商品は1回あたり最大5つまで
- 注文時にはトッピングなどのカスタマイズも指定可能
- Starbucks Rewardsのポイント「Star」も付与
- ドリップコーヒーなどがおかわりできる「One More Coffee」特典の適用(eTicketとしての付与)
■できないこと
- 食べ物やグッズなど対象商品以外の注文(今後拡充を検討)
- 注文確定後のキャンセル・返金
- モバイルスターバックスカード以外での決済
- 受取時間の指定(今後提供を検討)
- eTicketを用いた注文
なぜモバイルオーダーの日本上陸は遅れたのか?
日本はモバイルオーダーの後発地域にあたる。
このようなアプリを用いた事前注文の仕組みである「モバイルオーダー」は、海外での導入事例がすでにある。
中国ではコーヒーチェーンのluckin coffee(瑞幸珈琲)は基本的な注文スタイルとしてモバイルオーダーが根付いており、スターバックスもアメリカや韓国で導入済みだ。
スターバックスコーヒージャパン デジタル戦略本部長、濱野努氏。
スターバックスコーヒージャパンでデジタル戦略本部長を務める濱野努氏によると「アメリカでの(モバイル)オーダー比率は(全体の)16%。韓国も同様の数値」と実際の売上にも貢献している実績があるとしており、「日本でも同様のポジティブな効果が出ると考えている」(同氏)と話す。
とはいえ、なぜアメリカや韓国の導入から数年も遅れて、いまになって日本上陸を果たしたのか。
それはひとえに「会員基盤の成熟度」にある。Mobile Order & Payは、確かに店舗のオペレーションの改善や早く持ち帰りたいというユーザーニーズへの対応という側面があるが、基本的にはStarbucks Rewards会員向けの施策である。これはアメリカや韓国も同様だ。
Mobile Order & Payは「Starbacks Rewards」会員向けの施策だ(LINE内で発行できる「LINEスターバックスカード」会員も、スターバックスアプリの利用が必須)。
スターバックスコーヒージャパンCMO(Cheef Marketing Officer)の森井久恵氏。
日本では2017年9月にStarbucks Rewardsが導入されたが、こちらもアメリカなどでの提供が先行していた。日本でも順調に会員数を伸ばしたものの、先行した国に比べると当初は規模が小さかった。
しかし、今回の発表会でStarbucks Rewardsの日本での会員数は約439万人と公表された。スターバックスコーヒージャパンのCMO(Cheef Marketing Officer)を務める森井久恵氏は「強固な会員基盤となったいま導入する」と発言しており、同社としてはモバイルオーダー機能を提供するに十分な会員数が集まったと判断したのだろう。
日本正式リリースながら、運用は“実証実験的”
Mobile Order & Payの対応店舗には目印となるステッカーなどが掲示される。
スターバックスコーヒージャパンは、2020年末までの全国展開を目指しているが、注文と決済が手順が省けるとは言え、実際の現場でのオペレーションに大きな影響を及ぼすため、当初は「実証実験」的な扱いのサービスになるという。
例えば、現段階のMobile Order & Payでは「受取時間 ●〜●分後」とアプリに表示されるだけで、ユーザーが受取時間を指定することはできない。受け取りが大幅に遅れた場合、キャンセル・返金不可のため、同社広報は「受取指定した店側とコミュニケーションをとってほしい」と、基本的には現場判断にまかせる姿勢をとっている。
メインターゲットのビジネスパーソンがいるエリア以外も、実験的な意図があり対応店舗を増やしていく方針。
また、Mobile Order & Payのメインターゲットについて、濱野氏は「急いでいるビジネスパーソン」と考えており、ビジネス街などに位置する店舗をモバイルオーダー対応させる方向性を示している。
ただ、サービス開始当初の対応店舗のリストには、東京郊外にあるショッピングモール内の店舗も含まれている。
この点について、濱野氏は「他国では郊外でのモバイルオーダー(の利用比率)は多くない」としつつも、「日本ではショッピングモールなどでの長い列の軽減につながるかもしれない」「我々が気づいていない(顧客)ニーズもあると思う。見つけながら店舗を拡大していきたい」と、試行錯誤しながら日本でのモバイルオーダーの在り方を探っていくとしている。
(文、撮影・小林優多郎)