NHK報道で不買運動に発展。炎上する今治タオルにみるコンプラ、ブランド管理の難しさ

ノーナレを紹介するNHKのドキュメンタリー紹介ページ。

ノーナレ「画面の向こうから―」を紹介するNHKのドキュメンタリー紹介ページ。

出典:NHK

愛媛県のタオル縫製工場で働く、ベトナム人技能実習生たちの劣悪な労働環境を訴える様子を取り上げた、NHKのドキュメンタリー番組(6月24日放送)をきっかけに、インターネット上では企業を特定しようとする動きや、Twitter上で「#今治タオル不買」を呼びかける声が上がるなど、今治タオルブランドをめぐる炎上騒ぎに発展している。

報道では、問題企業の社名は出ていないため、憶測から特定された別の業者が否定コメントもだした。

6月26日、今治タオルブランドの認定や商標などを管理する、今治タオル工業組合は「NHKノーナレ報道についてのご報告」との公式見解を発表。番組で報道された企業は「組合員ではない」としながらも、「当組合の社会的責任及び道義的責任があると考えており、この問題を非常に重く受け止めております」と、組合としての責任があると、明確に認めた。

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今治タオル工業組合の報告文よりキャプチャ

一度、こうした下請けの劣悪な労働環境が明るみに出ると、SNSの拡散を通じて、不買運動が盛り上がる動きは、世界各地で起きている。使い勝手や品質に限らない「倫理的な正しさ」を含むブランドのコンプライアンスリスク管理に向き合う時代であることは、地方の中小企業や地域ブランドであっても例外ではない。

「家畜扱いされて1日中叱られています」

ノーナレ公式サイト

ノーナレ公式サイト。

出典:NHK

発端となった、NHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」では、愛媛県の縫製工場でタオルを製造する、ベトナム人女性たちが、NHK記者に連絡をとり、自分たちの置かれた悲惨な状況を訴えている。カメラは実際に、工場や寮に入り込み、以下のような状況を伝えている。

  • 早朝から午後10時過ぎまで働かされている。
  • 「仕事が忙し過ぎて、太陽や月を見られなかった」(証言)。
  • 何かあれば「ベトナムに強制帰国」と脅される。
  • 過労死ライン以上に働かされても、残業代は一律。
  • 窓のない寮に28人が押し込められて共同生活を強いられている。

ネット上で#今治タオル不買を表明する声が……

番組は、希望を持って来日した外国人技能実習生たちの悲惨な事例を描き、見た人に強いインパクトを残す。番組内でこの工場を経営する企業名は明らかにされなかったものの、触れられる地名や業種から、問題企業が今治タオルの関係者だとは分かるようになっていた。

Twitter上では、「今治タオル」をめぐる反発と擁護が飛び交った。

「今治タオルの業界組合って無いの? この番組の内容が本当なら、ブランド価値が地に落ちますよ。 いくらクオリティーが高いタオルだとしても、技能実習生から搾取して作られたものなら、絶対に使いたくありません。 組合の自浄作用に期待したいです」

「#今治タオル 不買運動を起こすと技能実習生がクビになるからやめろという意見があるが、そもそも今治タオルを作る為に彼らはやって来ているのではない。本来、服飾技術を学ぶ為にやって来たのに、外道事業者に低コストで高収益を得られるブランドの今治タオルを延々と作らされているだけ。」

「NHKはきちんと今治タオルのことについて全国に説明して欲しい地方産業潰されてしまうよ「今治タオル」のブランドを名乗れる企業には厳しい基準があります「今治で作ったタオル」とは違います#今治タオル#今治タオル不買」

「放っておくと大変なことになる」

今治タオルの地元の関係者によると、NHKの番組放送以降、取引先などから「大丈夫でしょうか」といった連絡が相次ぎ、「苦情が殺到というほどではないが、SNSの動きなどを見るうちに、放っておくと大変なことになる」と感じたという。

実際、今治市内でタオル製造販売を行う企業は、憶測から「番組に出てくるのはこの会社ではないか」との問い合わせが相次ぎ、否定コメントを出すことになった。

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番組に出てくる劣悪な工場の会社ではないかとの問い合わせに「否定コメント」を発表した会社も。

出典:愛媛県今治市のオルネット公式サイト

NHKも特定企業を中傷する動きについて「その企業は当番組で取り上げた会社ではありません」との、おことわりを表明している。

「無思考に続けてたら会社の存続を危うくする」

NHKは別の番組「バリバラ」公式アカウントでも、ノーナレの苦情殺到について発信している。技能実習生たちが、過去の同番組に出演したものと思われる。

今治タオルといえば、愛媛県北部を生産地に120年以上の歴史を持つ地元の伝統産業。2000年代になって、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんとコラボし、高品質タオルとしてのブランドを確立した。国内外で認知を広め、地域ブランドの成功事例として知られている。

ただし、製造プロセスも含めて、消費者はエシカル(倫理的)なものを求めており、それこそがブランドの真髄とも言える現代。倫理に敏感な消費者が増える時代に、下請け企業や業界の問題について「自社のことではない」という言い分は命取りになりかねない。

ネット上の著名な論者であるちきりんさんはこうTweetしている。

「さっきの話も同じなんだけど、『過去には許されていたこと』『過去には問題にさえならなかったこと』でも、無思考に続けてたら会社の存続を危うくする時代になってるってことを、みんな理解すべき。」

地元の今治タオルの基準をクリアしているタオルメーカーの経営者は、「今治ブランドは厳しい基準を設けてブランドを保持してきた。決して報道のような企業ばかりではないと知ってもらいたいが……」と、複雑な胸のうちを明かす。

今治タオル組合には、年商数十億のような企業もある一方で、年商数千万円の家族経営の中小企業もあるという。

「会社によってガバナンスやコンプライアンスの意識も異なるが、考え方や責任の取り方など、ブランドを守るためにも研修の機会などを設けて、正しい情報を互いにシェアしていくことも必要になっていくだろう」

この経営者は、時代の潮目を感じているという。

(文・滝川麻衣子、大山友理)

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