なぜSuicaは楽天Payと提携したのか?キャッシュレス決済市場はカオス状態

RPAY

A. 以下の2つだと考えられます。・(駅の発券機の)コスト削減・エンドユーザーとのタッチポイント増加

先日、JR東日本が提供するSuicaと楽天Payが提携するというニュースが発表されました。

今日の記事では、何故Suicaが、ある意味競合する楽天 Edyを有する楽天と提携することになったのか、という点の背景を読み解いていきたいと思います。

すっかりカオス状態のキャッシュレス決済市場

初めに、現在の日本のキャッシュレス決済市場を簡単におさらいしておきましょう。こちらにある、クラウドキャストさんが製作したカオスマップが非常に分かり易いので、掲載します。

国内キャッシュレス決済カオスマップ (2019年6月版)

クラウドキャスト株式会社

国内キャッシュレスカオスマップ

このカオスマップにある通りですが、NFC (Near Field Communication)としてSuica、Apple Pay、Google Payがあり、右側には昔からあるクレジットカードがあり、さらに下側に最近乱立しつつあるQRコード決済が並べられています。

この記事をご覧の方は、全体像はよくお分かりの方も多いかと思いますが、このように、特にQRコード決済で、サービスが乱立している状況だということをまず押さえておきましょう。

キャッシュレス決済市場の現況

次に、ユーザーが各サービスについてどのように感じているのかを簡単におさらいします。

スマホ決済調査 普及度は楽天Edy、機能性はペイペイ

サービス提供側からすると、非接触型のNFCと QRコード決済というのは全く違うサービスに感じるかもしれませんが、ユーザーからすれば複数ある中の決済手段の一つというふうに認識されています。

そしてユーザーからの視点でサービスを評価すると、上のリンクの表のようになっているというわけです。

・楽天EdyとSuicaが2強・お得さでは、PayPay、Lineがリード

普及度、そして店頭での使い勝手という点において、やはり非接触型NFCである楽天 EdyとSuicaが圧倒的に優位に立っていると言えるのではないでしょうか。

QRコード陣営は、PayPayやLINE Payを中心にお得感を売り出していますが、やはりユーザーエクスペリエンスという点では、非接触型NFC がQRコード決済に勝っているというのが、現時点でのユーザー認識だと思います。

非接触型のNFC、はポケットから取り出してタッチをすればいいだけであるのに対し、QR コード決済はスマホのロックを解除してアプリを起動しないといけないという点で、やはり面倒だと感じる方が多いと考えられます。

なぜJR東日本は楽天と提携したのか

楽天

撮影:小林優多郎

非接触型NFCのユーザーエクスペリエンス的な利点を考えると、Suicaが他社と組まなければいけない理由というのは一見すると無いようにも見えますが、なぜ今回、JR東日本は楽天とパートナーシップを結んだのでしょうか。

以下の記事にヒントがあります。

楽天ポイントが貯まるSuicaが2020年春に爆誕 ── JR東日本×楽天、異色のタッグのそれぞれの狙い

また、モバイル版Suicaの利用が広がれば自動券売機のユーザーも少なくなるため、駅の管理コストなどの費用も少なくなる。(中略)JR東日本の常務執行役員でIT・Suica事業本部長を務める野口忍氏は楽天との提携に関する発表会で「(Suicaの)全部がモバイルになるとは思っていない」としているが、「モバイルは手元に券売機がある感覚。モバイルの方に移行してもらえるように、今後もさまざまな提携を検討していく」としている。

一つ目のポイントは、カード型のSuicaの場合、チャージや発券など、駅における発券機のコストがどうしても重たくなります。JR東日本としては、可能な限り、モバイルSuicaに移行してもらい、駅の管理コストを下げたいというのは正直な本音でしょう。

JR東日本は2018年8月にみずほ銀行と提携し、みずほ銀行の口座から直接チャージできるSuica「Mizuho Suica」をリリースしている(iPhone)。

もう一つはここにあるように、JR東日本として、カード型からモバイルへの移行が十分に進んでいないため、外部とのパートナーシップを模索しているということが伺えます。

モバイル化を促進していくというのは、元々は鉄道会社であるJR東日本としてはあまり得意分野ではないのかもしれませんし、外部の金融機関やネットサービスと提携していくというのは、エンドユーザーのタッチポイントを増やしていくという点ではとても重要なのかもしれません。

つまりJR東日本の今回のパートナーシップの狙いは、以下の二つだと言えるのではないでしょうか。

・(駅の発券機の)コスト削減・エンドユーザーとのタッチポイント増加

Suicaとの提携から見え隠れする楽天の狙い

pay

乱立する●●Pay問題。楽天Payの目指す先とは。

撮影:小山安博

一方で、楽天側の狙いはどういったものなのでしょうか。

今回の提携で、非接触型NFCという点では、直接楽天Edyと競合するSuicaを自社サービスに取り込むことが出来たというのは、楽天Pay全体としてのユーザー接点を増やすという点で、非常に大きなメリットがあると考えられます。

まさに横綱相撲といった戦い方だとも言えるでしょう。

“共通QRコード”で各スマホ決済に対応する「クラウドペイ」--LINE Payやメルペイなど

一方で、この記事にもある通り、共通型のQR コード決済ソリューションであるクラウドペイに、楽天Payは未だに加盟していません。競合他社が同盟を組んでいるのに対し、ここでも楽天はそれらに迎合することなく、ひとり勝ちを狙ってしっかりとした横綱相撲を取っているのがご覧頂けるのではないでしょうか。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2019年6月25日公開の記事)

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