ソフトバンクが買収したアームの共同創業者、ヨーロッパの未来に強気な理由

アマデウス・キャピタル・パートナーズの共同創業者、ハーマン・ハウザー氏。

アマデウス・キャピタル・パートナーズの共同創業者、ハーマン・ハウザー氏。

Reuters

  • ハーマン・ハウザー氏はヨーロッパを代表するテック系投資家。
  • ソフトバンクが300億ドルで買収したアームの共同創業者で、1997年に設立されたアマデウス・キャピタル・パートナーズの共同創業者でもある。
  • 同氏は欧州イノベーション会議(EIC)のメンバー、同会議は今後7年にわたって、ヨーロッパのテック企業に最大1000億ドルを投じる可能性がある。
  • 資金供給を増やすことは、シリコンバレーに追いつくための取り組みの大きな部分を占めると同氏は述べた。

ヨーロッパのテック業界がますます勢いを増している。

イギリス、ドイツ、フランスからユニコーン企業が続々と誕生している。

シリコンバレーでは生活費や人件費が目も眩むほどに上昇したことから、スタートアップ企業や投資家はヨーロッパに新たなチャンスを求めている。

さらに、ヨーロッパのベンチャー・キャピタルファンドが成長したこともその要因となっている。起業家たちがシリコンバレーに対抗できるよう支援している。

「かつてシリコンバレーとアメリカ東海岸、イギリス、ヨーロッパの差は大きかった」とアマデウス・キャピタル・パートナーズ(Amadeus Capital Partners)およびソフトバンクが買収した半導体大手アーム(Arm)の共同創業者ハーマン・ハウザー(Hermann Hauser)氏はBusiness Insiderに語った。

「順位は今も変わらないが、その差は極めて速いスピードで縮まっている。状況は大きく変化している」

だが、ハウザー氏のポジティブな見解にもかかわらず、ヨーロッパのVCの投資額は、アメリカのVCの5分の1程度に留まっている ── 同氏はこのギャップが、ヨーロッパ企業が利用できる資金を増大させるモチベーションにつながり、ヨーロッパがシリコンバレーに追いつく後押しとなると述べた。

シリコンバレーに追い付く

ハウザー氏は「欧州イノベーション会議(EIC:European Innovation Council)」のメンバー、同会議は今後7年にわたって、ヨーロッパのテック企業に最大1000億ドルを投じる可能性がある。この資金は、EUの長期財政計画のもとで暫定的に承認された「ホライズン・ヨーロッパ(Horizon Europe)」プロジェクトの一環であり、研究およびビジネスに対して助成や融資の形で支援を行う。

十分ではないが出発点、とハウザー氏は語った。

この取り組みを支援するのが、2007年に設立された欧州研究会議(ERC:European Research Council)。同会議は、あらゆる分野の有望な研究者に潤沢な助成金を提供しており、2014~2020年の予算を前期の2倍近くとなる131億ユーロ(約150億ドル)に増加させた。

「土台となるものを見れば、ヨーロッパの大学は今も世界最高レベル ── アメリカに肩を並べ、中国を上回っている」とハウザー氏は続けた。

「大学は知的財産を生み出すマシン。ERCの功績でもある」

ハウザー氏は、次のチャレンジはさらなる資金供給、特に規模拡大のための資金供給と述べた。

「資金はある。ただ、どう配分すればよいか分からない」

例えば、シリコンバレーには、会社を3億ドル規模から5億ドル規模にスケールさせた経験を持つ人が大勢いるが、ヨーロッパにはほとんどいない。ヨーロッパ企業にそうした人材やマネジメントの専門家を取り込むことが、成長に向けてのチャレンジの助けとなるとハウザー氏は述べた。

「シリコンバレーも最初の20年は、成功とは言えないものだった」とハウザー氏。

「ヨーロッパも最初の20年をちょうど終えたところ。特にベルリンとロンドンのフィンテックに期待している」

[原文(BI PRIME):Why this VC who cofounded a $30 billion SoftBank-owned semiconductor firm is bullish on Europe's tech future — 'We have the money, we just don't know how to allocate it'

(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)

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