ブランドレスの共同創業者で前CEO、ティナ・シャーキー。
AP Photo/Mark Lennihan
- 2019年3月、「ブランド製品ではない」家庭用品を販売しているeコマースサイト「ブランドレス」のCEOティナ・シャーキーが辞任。ウォルマートの元COO、ジョン・リッテンハウスがCEOに就任した。
- これは同社の最大の出資者であるソフトバンクが、ブランドレスに利益を上げるように求めたことから生じた緊張状態が一因とThe Informationは伝えた。
- ソフトバンクは2018年、ビジョン・ファンドを通して2億ドルを出資、残りは分割で支払われる予定だった。
- 現在のところ、ブランドレスは1回目の支払いしか受け取っていない。この問題についてよく知る人物は、ブランドレスが財務目標を達成できなければ、ソフトバンクは残りの1億ドルを支払わない可能性があるとThe Informationに語った。
ブランドレス(Brandless)は急成長を遂げている企業価値5億ドル(約550億円)のeコマース・スタートアップ。だが最大の出資者であるソフトバンクとの関係が怪しくなってきている。The Informationが6月26日に伝えた。
The Informationによると、摩擦の原因はブランドレスの財務にあり、ソフトバンクは支出を抑えて利益を上げることを求めているようだ。このため、ブランドレスの複数の幹部が退社し、CEOも変わった。
ティナ・シャーキー(Tina Sharkey)は2019年3月、「より焦点を絞った役割」を担うためにCEOを辞任すると述べたが、The Informationは、辞任の理由の一部はソフトバンクとの間の緊張が高まったためとする関係者の言葉を伝えた。
The Informationによると、2018年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはブランドレスに2億ドルを出資、同社の評価額は5億ドルに達した。出資により、ソフトバンクは同社の株式の40%を取得した。ソフトバンクは出資を分割で支払うことになっていた。だが、ブランドレスは現在まで、分割払いの1回目しか受け取っていないと言われている。
匿名の情報筋がThe Informationに語ったところによると、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはブランドレスが財務目標を達成しない場合、残りの1億ドルを支払わない可能性がある。しかしThe Informationはまた、ブランドレスには十分な資金があり、取締役会の意見が割れているため調達が遅れているだけとする別の情報筋の話も伝えた。
いずれにせよ、ソフトバンクは近年、シリコンバレーのテック系スタートアップへの最大の投資家であり、ウーバーやSlack SoFiをはじめ、数十の企業に大きな投資を行っている。この「もつれた関係」は注目に値する。
我々はソフトバンクにコメントを求めたが、ソフトバンクはコメントを拒否した。
2015年に設立されたブランドレスは、家庭用品を消費者に直接販売している。
ブランドレスの広報担当者は、当社は「さまざまなウェルネス分野で革新を続け、新しいチャネルでの販売を加速するための十分な資金を得ることができている」とBusiness Insiderにステートメントで述べた。
また、新CEOのジョン・リッテンハウス(John Rittenhouse)は「ウォルマート、ターゲット、LVMH、Moda Operandiなどの経営陣としてeコマースと小売における数十年にわたる経験を持ち、消費財ビジネスの複雑さを十分理解している」と述べた。
The Informationによると、ブランドレスでは今回の混乱によって、COOのメーガン・ラフィ(Meghan Laffey)、事業開発責任者のリー・アン・グラント(Lee Anne Grant)、サプライチェーン&オペレーションの責任者のデイブ・マクルーア(Dave McClure)など、複数の幹部が辞任している。
(翻訳:Toshihiko Inoue、編集:増田隆幸)