日本の映画人が見る中国市場。「全米が泣いた」から「中国全土で泣いた」になる時代がくる?

上海国際映画祭 日本映画 前田哲 石塚慶生

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

撮影:大塚淳史

中国の映画市場の拡大は、いまや日本の俳優、監督、美術、音楽などのスタッフらにも影響を及ぼしている。日本の映画関係者が、中国映画に出演する「制作スタッフ」として関わる機会が増えてきた。複数の映画関係者からも、制作費用や出演料などは、すでに10倍の差があると聞く。

日本で人気の俳優や著名作品の監督には、中国側の関心も高い。5年以上前から、中国からのオファーが増え始め、実際に出演した俳優も少なくない。最近であれば、俳優の妻夫木聡が出演した中国映画「唐人街探案2」は、2018年の中国の興行収入第2位の33.98億人民元(約533億円)の大ヒットとなった。次回作への妻夫木の出演に期待する声は多い。

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(写真右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

撮影:大塚淳史

やはり映画人として、巨大市場は魅力的に映るのだろうか?

6月15日〜24日に開催された上海国際映画祭と並行して行われた上海・日本映画週間。6月15日の映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」上映会では、前田哲監督とプロデューサーである松竹の石塚慶生氏が、満席の中で舞台挨拶を行った。直後に、監督やプロデューサーに取材すると、中国市場に対してはそれぞれ異なる視点で見ていた。

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(写真右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

上海・日本映画週間で映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の上映イベントで上海を訪れた前田哲監督。

撮影:大塚淳史

前田監督は非常に関心が高かった。

中国市場は魅力的ですね。知り合いのカメラマンが中国でいま撮影に関わっていて、今度は監督をやるんですよ。映画に関わる者として、より多くの人に見てもらえるならうれしい。そして、ハリウッド一強を崩すのは中国だと思います。そのうち、『全米が泣いた』ではなく『中国全土で泣いた』となるかもしれません。

この映画(こんな夜更けにバナナかよ)が中国で通用するかはわからないが、トライアンドエラーを重ねることで、中国市場に求められるものがわかってくると思います」

一方で、石塚氏は冷静に見ている。

「日本から中国に乗り込んで、なかなか上手くいっていないところを見ている。僕はまだ行くべきでないと思っています。マーケットとしては魅力だが、それより日本のプロデューサーとして、自分に何ができるかと自問自答しています。

ハリウッドと戦えるわけではないし、中国のような資金力があるわけではない。お金やスケールではなく、地に足をつけて、クリエイティブな部分で中国と組んでいければと思います。それぞれアジアならではのテーマがあるでしょうし。例えば、日本のクリエーターと中国の俳優を組み合わせるのか、あるいは日本の俳優と中国のクリエーターなのかと」

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(写真右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

上海国際映画祭と同時期にある上海・日本映画週間の上映イベント「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」で、前田哲監督(写真右)と松竹の石塚慶生チーフ・プロデューサーが舞台挨拶。

撮影:大塚淳史

日本の映画市場規模はもう10年以上、2000億円ほどで推移している。一方、中国は2018年に約9562億円と、数年以内に1兆円を超えるのは間違いないとみられている。

日本の映画産業、特に制作現場では、労働環境や収入の厳しさもあって、人材が集まらず、育たないという悪循環に陥り、誰もが危機感を抱いている。

中国市場に傾倒しよう! とまでは言わないが、前田監督の言うように、もう少しアジアに進出して稼ぎ出す取り組みを積極化させても良いのではないか。せっかく隣に大きな市場があるのだから、飛び込めるチャンスがあれば、失敗など恐れずに飛び込んでほしいと思う。

(文、写真・大塚淳史)

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