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- アメリカでは、学生ローン債務がこれまでになく増えている。
- その結果、お金のないミレニアル世代は人生のさまざまな節目を先送りにしている。
- 2020年の大統領選を目指す民主党の候補たちは、大学にかかる費用をオフセットする政策を提案している。
アメリカは、学生ローン危機に苦しんでいる。
2018年のStudent Loan Heroのレポートによると、アメリカでは1970年以降、賃金が67%上昇した一方で、大学の授業料はそれ以上の割合で上がったという。その結果、学生ローン債務は記録的なレベルに達した。
不況の後遺症や生活費の高騰とあいまって、学生ローン債務はミレニアル世代の貯金を困難にし、結婚、マイホームの購入、子どもをもうけるといった人生の節目を先送りさせている。
2020年の大統領選を目指す民主党の候補たちは、大学にかかる費用をオフセットする政策を提案している。エリザベス・ウォーレン上院議員は、既存の学生ローン債務の大半を免除し、大学無償化を実現する1兆2500億ドルの計画を示している。元下院議員のジョン・ディレイニー氏やセス・モールトン下院議員、カーステン・ギリブランド上院議員は、学生ローン債務の免除や、国家に奉仕する仕事に就く大学生への奨学金を提案をしている。
一方、バーニー・サンダース上院議員やエイミー・クロブチャー上院議員、エリック・スウォルウェル下院議員、起業家のアンドリュー・ヤン氏は、大学にかかる費用と学生ローンの負担を下げる案を示している。
アメリカの学生ローン債務がいかに悲惨かを示す10の事実を見ていこう。
1. 学生ローン債務の総額は1兆5000億ドル以上
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Student Loan Heroによると、2018年の学生ローンを利用した卒業生1人あたりのローン債務の平均は2万9800ドル(約320万円)だった。
2. 大学の授業料は、1980年代の2倍以上
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The College Boardの統計を引用したStudent Loan Heroによると、1980年代後半から2018年までに、アメリカで学士号を取得するのにかかる費用は公立校で213%、私立校で129%増えた(インフレ調整済み)。
年間授業料は公立校で3190ドルから9970ドルに、私立校で1万5160ドルから3万4740ドルに上がった。
一方で、Student Loan Heroの2018年のレポートによると、賃金は1970年以降、67%増にとどまっている。
3. アメリカでは300万人以上の高齢者が、今も学生ローンの返済を続けている
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借金を返済しているのは、若い世代だけではない。消費者金融保護局(CFPB)のデータを引用したBusiness Insiderの以前の記事は、アメリカでは300万人以上の60歳を超える人々が、総額860億ドル以上の学生ローン債務を抱えていると報じた。
4. 2018年5月現在、アメリカでは101人が100万ドル以上の学生ローンを抱えていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた
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専門職学位の取得にかかる費用も上がっている。2013年には、100万ドル以上の学生ローンを抱えていたアメリカ人の数は14人だったと、ウォール・ストリート・ジャーナルは教育省を引用し、報じている。2018年までにその数字は101人に増えた。
同紙によると、学生ローンの金利は2004年から2012年の間に6%以上上がった。
歯科矯正医のマイク・メルさんは2018年5月の時点で106万945ドルの学生ローンを抱えていて、そのローン残高は20年後には200万ドルに達する見込みだと、同紙は報じた。
メルさんのケースは、医者や歯科医、弁護士といった高収入の見込める仕事に就くことが、かつてのような"金持ちへの道"ではないことを示している。
5. 白人の家庭よりも黒人の家庭の方が借金が多く、ローン返済ができなくなる可能性が高い
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ブルッキングス研究所の2018年1月のレポートによると、学士号を取得した黒人卒業生がローン返済できなくなる —— つまり270日間、支払いが滞る —— 割合は、白人卒業生の5倍であることが分かった。
学生ローンは、白人家庭と黒人家庭の貧富の差を広げている。レビー・エコノミクス・インスティテュート(Levy Economics Institute)の2018年の研究によると、若い白人家庭は黒人家庭に比べて、12倍も裕福であることが分かった。学生ローン債務を除外しても、5倍だ。
6. 2023年までに、最大で借り手の40%が学生ローンを返済できなくなる
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ブルッキングス研究所の2018年のレポートは、最長で卒業後20年間、学生ローンの返済を続けている人々を追跡し、卒業後12年から20年にかけて、ローン返済ができなくなる人の割合が増え続けていることが分かった。
同レポートは、1995~2003年の間に大学に入学した人々の、卒業から20年後の債務不履行の割合を分析した結果、借り手の約40%が2023年までにローン返済できなくなると見込んでいる。
7. 個人破産の申請のための支援サービスを利用する人の32%が、学生ローン債務を抱えている
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支援サービス「Upsolve」のユーザーに関するLendEDUの研究によると、こうした人々の借金のうち、平均で49%を学生ローン債務が占めている。
ただ、アメリカでは一般的に、学生ローン債務は個人破産を宣言しても返済義務は消滅しない。
8. 2018年の調査では、アメリカ人の13%が子どもを持たないと決めた理由として、学生ローン債務を挙げた
Brian Snyder/Reuters
これが20~45歳のアメリカ人の答えだ。ニューヨーク・タイムズの調査を引用し、Business Insiderが報じた。
学生ローン債務は、マイホームの購入にも影響を及ぼしている。
公立大学で5年間を過ごし、3万2645ドルの学生ローンを抱えるサプライチェーン・コンサルタントのブーン・ポーチャーさんは「学生ローンが残っているうちは、住宅ローンを組む気になれない」と以前、Business Insiderに語っていた。
公立大学を卒業し、約2万5000ドルの学生ローンを抱えるある水資源エンジニアは、「今の時点では、マイホームの購入は夢物語に感じるが、頭金を貯めるために、できるだけ節約しているところだ」と、Business Insiderに語った。
9. 学生ローン債務危機は、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン危機と似ているとする声もある
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返済ができない学生ローンの借り手の割合は、2008年の金融危機で住宅ローンの返済ができなくなった人の割合に近い。
Citi Global Perspectives & Solutionsのレポートによると、2017年の時点で学生ローンの返済ができない、もしくは90日以上返済が滞っている人の割合は11%だった。2010年、住宅ローンの返済が滞っていた人の割合は11.5%で、ピークに達した。
10. 学生ローン債務を抱えているもしくは以前抱えていたミレニアル世代の40%以上は、大学にはその価値はなかったと考えている
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INSIDERとモーニング・コンサルトの調査で、今の経済的な状況と学生ローンの借り入れを考えて、大学に行く価値はあったと思うか、なかったと思うか、尋ねたところ、回答者の約21%は「間違いなく(価値は)なかった」、約23%は「恐らく(価値は)なかった」と答えた。
学生ローンを今も返済しているミレニアル世代と、完済したミレニアル世代では、前者の方が厳しい回答をしている。
[原文:10 mind-blowing facts that show just how dire the student-loan crisis in America is]
(翻訳、編集:山口佳美)