画像:パタゴニアウェブサイト
アウトドア製品などで知られるパタゴニアは7月3日、参議院議員通常選挙日の7月21日に、直営店全店(23店舗)を閉店すると発表した。Twitterなどではこのニュースが驚きを持って拡散された。
この取り組みを推進したパタゴニア日本支社の環境・社会部門の担当者は、Business Inside Japanの取材に対し、こんな想いを率直に打ち明けてくれた。
「すごい数の問い合わせが来ており、こちらも驚いています。 投票に行くという行為を企業がサポートすることは、日本の社会ではとても新鮮なことなんだ、と実感しました。 この取り組みがここまでの反響を呼ぶこと自体が、日本社会の現状を表しているという意味で、嬉しいような、悲しいような」
同担当者によると、このプロジェクトは、2018年末に掲げられた新たなミッション 「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」のもとに考え出されたもの。
環境問題や気候変動といった問題に対して、若い世代を含めさまざまな世代に議論してもらいたいという思いから始まったのだという。
一企業が選挙のために店を閉めるということに対する、社内での反発はなかったのか。
「あえてお店を閉める必要はあるのかという議論はありました。ただ、若い人たちの投票率が下がっているなかで、企業としてこういった姿勢を示すのはとても重要だという意見は一致していました」
パタゴニアが発表した「VOTE OUR PLANET」のキャンペーン。選挙や政治についてカジュアルに話せる「ローカル選挙カフェ」も開催する。
画像:パタゴニアウェブサイト
23の直営店を1日閉店すれば、当然売り上げにも大きな影響が出る。しかし、売り上げについては「正直なところ、あまり議論に上がらなかった」とも同担当者は明かす。
パタゴニアが「売り上げを気にしない」という背景には、過去の“成功体験”がある。
2016年11月、パタゴニアはブラックフライデー(アメリカの小売店で大規模なセールが開催される日)の売り上げのすべてを環境保護団体に寄付すると発表。これが大きな反響を呼び、同年のブラックフライデーでパタゴニアは過去最高・予想の5倍を超える約11億円の売り上げを叩き出したのだ。
今回の発表に関しても、「これからパタゴニア買います」「やっぱりこういう店を応援したい」との声が集まっている。
「すげーーー! 俺これからパタゴニア買います!! こういう企業どんどん出てきてほしい 」
最後に担当者は、こう語ってくれた。
「日本では、選挙について話すことが、タブーのように感じることもあります。 けれど企業だから、個人だから、学校だから(どうすべき)というのは選挙については、あてはまらない。みんなで考え、行動しなかったら、社会としての健全性が失われてしまいます。 その中で、パタゴニアがやるべきことは問題提起をすること、選挙についてあらためて考えてほしいというメッセージを打ち出すことだと考えました」
環境問題に関する先進的な取り組みで注目を集めてきたパタゴニア。今回の発表を受け、他の企業にも選挙に関するキャンペーンを打つ動きが広がるだろうか。注視したい。
(文・西山里緒)