ロボットベンチャーのMUJINが2019年の上場を検討、その秘密の源泉とは

工場で使われる産業用ロボットに知能を与えるベンチャー「MUJIN」。創業から5年で飛躍的な成長を遂げ、いよいよ株式上場の検討を開始した。

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提供:MUJIN

この成長を支えているのが、業界の既成概念を覆す高い技術力だ。MUJINはいかにして世界中から優秀な人材を確保しているのか、CEOの滝野一征氏(32)に聞いた。

MUJINの売上は、2016年5月期で約2億円。2017年5月期の売上見込みを5億円とし、翌年にはさらにそれを倍増させる方針だ。国内を中心に販売する同社は、来年をめどに海外展開を開始する。滝野氏がBUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで明らかにした。

「日本のGDPの多くを占める製造業において、産業用ロボットの分野で革命を起こすことがMUJINの使命だと考えている。上場は通過点にすぎない」。

金融界には、上場時の時価総額が1000億円規模になるとの憶測もある。

東京・本郷にあるMUJINのオフィスでは、米国、中国、日本、ウクライナと、多様な出身地・国籍のトップエンジニアが働く。社員数は約30名。MUJINの経営を指揮するのが滝野氏だ。テクノロジー部門は、ブルガリア出身の米国籍、カーネギーメロン大学で博士号を取得したCTOのRosen Diankov(出杏光魯仙)氏が牽引する。

ロボットに教えることなく自律制御させる技術、いわゆる動作計画(モーション・プランニング)が、MUJINの技術の根幹だ。モーション・プランニングの世界には2人の権威が存在すると、滝野氏はいう。1人はグーグルのロボティクス部門からトヨタのリサーチ研究所に移ったジェームス・カフナー(James Kuffner)氏。そして、そのもう1人こそ、CTOのRosen氏だ。

ロボットの天才集団として知られる米国ウィロー・ガレージ(Willow Garage)にも所属していたRosen氏。同氏が築いたロボット界における人脈は、MUJINが人材を発掘する上で大きな鍵を握ると、滝野氏は話す。「カフナー氏がトヨタで自動運転を牽引し、RosenはMUJINでロボットをやっている」。

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MUJINのコントローラ

中西亮介 / BUSINESS INSIDER JAPAN

2015年3月、MUJINは自社で開発したコントローラの販売を開始した。コントローラは、既存の産業用ロボットを自律的に動かすための「脳」と「目」にあたる。従来の産業用ロボットは、人が教えた一定の動作を繰り返すよう、コントローラで動かされている。こうした従来の方式では、バラ積みピッキングや箱詰め、組立など必要に応じて複数の動作が必要となる作業の自動化は困難だか、MUJINの技術を使えばこれらの自動化が可能になるという。

トヨタ、ホンダ、日産、東芝、日立、キヤノンなどの大手企業は、MUJINのコントローラを納入している。

「高給インターン制度」

高い技術や知識を持つ人材を確保するため、MUJINはインターンを積極的に採用する。マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学、北京大学、上海交通大学などで、ロボティクスやAI(人工知能)を研究する優秀なエンジニアの卵たちをインターンとして招き入れ、約6カ月間、プログラミングに従事させる。彼らが大学へ戻るまで、正社員並みの給料を支払うという。

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提供:MUJIN

「インターンシップ期間を終えても、重厚長大な産業ロボットの分野で革命的なイノベーションを起こしたいと思う学生たちは、再びMUJINに戻ってくる。リクルーターに数百万円を支払うより、はるかに効果的だ」と滝野氏は語る。「中国やアメリカには、激しい競争の中で生き、トップ・スクールでコンピュータ・サイエンスを学ぶ学生が多くいる。少子高齢化の日本とは状況が違う」。

オンラインで行うプログラミング選手権大会も、MUJINの人材発掘ツールの1つだ。滝野氏によると、前回は各国から賞金を目当てに約600人が参加した。米国、中国、東欧には多くの優れた人材が隠れていると、滝野氏は強調する。

「MUJINのエンジニアは、なぜわざわざ一番ややこしい多軸の機械である産業用ロボットをやっているのかを理解している。人に、社会に長年にわたってインパクトを与える産業になるわけです。このビジョンがあるから、皆が落ち着いて開発に取り組んでいるのです」と滝野氏。

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提供:MUJIN

世界では、2014年末の時点で推定148万台の産業用ロボットが稼働している。日本ロボット工業会のデータによると、過去10年間で60%以上増加した。そのうちの2割に相当する29万6千台が日本で稼動しており、最多。次いで、米国の21万9千台。

中国における稼働台数は、2005年の1万1557台から激増。2014年には、16倍以上の18万9千台となり、17万6千台のドイツを抜いた。中国ではロボットを製造する企業数もここ数年で著しく伸びている。「ロボットの脳の部分であるコントローラに対する需要も旺盛だ」と、滝野氏は言う。

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