なぜ「おじさん」はダジャレを言ってしまうのか。おじさん視点で考えた

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私(筆者はアラフィフ)が立ち上げた人事コンサルティング会社の職場では、20代の若者があふれています。

20歳近く年の離れた若者に溶け込みたいとは思いませんが(うざいでしょうし)、お互い気持ちよく働くために、変な誤解はないようにしたいと思います。

わかりたいし、わかって欲しい。

それで、今回はこのテーマ「職場の“おじさん”がわからない」です。ちなみに「おじさん」でも「おばさん」でもいいのですが、総称となる中年とか壮年とかがどうもしっくりこなかったので、「おじさん」にしました。

決して、中年男性のことだけに限らないので、何卒ご理解ご容赦ください。

分析的アプローチ:ダジャレとはそもそも何か?

おじさんと若者の間にはいろいろ誤解や疑問があると思うのですが、本稿ではまず、おじさん特有の「ダジャレ」について考えてみたいと思います。「ふとんがふっとんだ」的なアレです。

まず、ダジャレとはそもそも何か? この観点はあまり聞いたことがありません。

ダジャレは心理学的には「音韻的連関」と言います。「かに」と「わに」という言葉が似ているように「音的に似ている、近い」という意味です(ラップで韻をふむ、というのもこれです)。

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言葉には「音韻的連関」だけではなく、「意味的連関」(AとBの言葉の意味は近い、など)や「形態的連関」(ひらがなの「め」と「ぬ」が似ている、など)などがあります。

通常は、話していると「意味的連関」に集中します。ところが、そこから離れて、意味とは関係なく「音に注目してしまう」ことで、「音韻的連関」のある言葉が出てくる現象、これがダジャレです。

注意力が散漫になるとダジャレが出る

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つまり、本来なら「意味」に注意しなければならないところで、「音」という側面に注目してしまうということです。

表面的に見ると注意力散漫と言われても仕方がないでしょう。実際、若者であっても、酔っ払ったり、徹夜したりして、身体的に注意力が散漫になってくると、ダジャレを言うようになります。

不意にダジャレを浴びせられた若者にしてみれば、「バカにしやがって」と思うかもしれません。しかし、おじさん的には(たぶん)違うのです。

注意には一般的な「集中的な注意」以外にも「拡散的な注意」があります。

柔道などで敵がどこから来てもいいように自然体でいろいろなところに注意しておく、これが後者の注意です。おじさんはこれをやっているのです。

おじさんは若者の話を聞きながら、意味だけではなく、若者の目の輝きから自信の有無を読み取ったり、声の高低や速度から緊張を感じたりしているのです。それによって、「これは任せても大丈夫だな」とか「少し危ないかもしれないので、ちょっとケアしないといけないかな」とか判断するのです。

鉄鋼王カーネギーも言っている

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ダジャレ、言っちゃおうかな……。(写真はイメージです)

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その人をよく理解するためには、「言葉よりも行動を見よ」と言われます。

かの鉄鋼王カーネギーも「年をとるにつれて、人が言うことには以前ほど注意を払わなくなった。人の行動をただじっと見ることにしている」と言っています。

結局、言っていることよりもやっていることに真実が表れるからです。

ただ、言葉を理解するよりも、行動を解釈する方が実は難しい。だから、初心者はまずは言葉にフォーカスするわけですが、おじさんは、ある程度言葉の部分は理解が容易になってくるので、徐々に相手の行動へ注意を払うことができるようになってきます。

それで、相手のいろいろなところに注意を拡散させるようになり、その副産物(副作用)がダジャレなのです。

ダジャレを優しく許して欲しい

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つまり、おじさんのダジャレは周囲の人たちへの優しさなのです。いろいろなことに気を配っていることの証なのです。

言葉の意味だけに注目していたら、未熟だが意地っ張りな若者が、本当は自信がないけれども強弁していることに気づかず、サポートしてあげられないかもしれません。

方針に納得がいかないけれども、反論もできないので渋々受け入れているのが分からなければ、後でもっと丁寧に説明してあげることができないかもしれません。

おじさんになってくると、役職の上下に関わらず、人の面倒を見たい、世話をしたいという思いが強くなってきます。だから、気になる人の言葉だけではなく、いろいろなことを見守っているのです。

——そう思えば、今までムカついていたダジャレに対して優しくなれたりしませんかね……。いや、無論、ダジャレなど言わない方がよいのですが。

(文・曽和利光)


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