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- イギリス人の半数近くが"合意なき離脱"に備えて、自宅に買い置きをしている。
- 最新の調査によると、40%の人々が食料や薬、衣服といったものを買いだめしているという。
- メイ首相の後任候補2人はともに、必要があれば欧州連合(EU)から合意なしに離脱するとの考えを示している。
- 現在の離脱期限である10月を前に、企業は品物を保管しておく十分なスペースがないと警鐘を鳴らしている。
- 食品加工業の業界団体、フード・アンド・ ドリンク・フェデレーション(Food and Drink Federation)は、「数週間以内に、買い物客は手に入る商品や店の品揃えの大きな変化に気付くだろう」と、Business Insiderに語った。
イギリス人の10人に4人は、可能性高まる"合意なき離脱"に備えて、食料や薬、衣服といったものを買いだめしている。
情報会社「Blis」の消費行動に関する最新調査によると、イギリス人の40%は合意なき離脱によって、物がなくなるのではないかとの恐れから、自宅に買いだめを始めている。
中でも一番多いのが食料で、回答者の56%が買いだめをしているという。他にも、44%が日用品を、37%が薬をストックとして買っているという。
衣服も例外ではない。離脱期限である10月31日に合意なき離脱をしたあとの物不足もしくは価格高騰に備えて、回答者の28%が、余分に衣服や靴を購入しているという。
メイ首相の後任候補であるボリス・ジョンソン氏とジェレミー・ハント氏はいずれも、合意の有無にかかわらず年内のEU離脱を約束している。ジョンソン氏は、10月31日の離脱を「やるか死ぬかだ」と強調している。
こうした中、イギリスの企業は10月31日の可能性高まる合意なき離脱に向けて、準備を急いでいる。
Business Insiderが4月に報じたように、10月の離脱は、もともとの離脱期限だった3月に比べて、スーパーマーケットの陳列棚が空になる危険性が高い。
なぜなら、3月の離脱期限に向けて使うことのできた倉庫スペースの大半は、クリスマス・シーズンの需要の高まりに備えて予約済みで、10月の離脱期限に向けて使うことができないからだ。
今回の調査結果を受け、フード・アンド・ドリンク・フェデレーションの広報担当者は、10月末にEUから合意なき離脱をした場合、イギリス人は一部の食料品がすぐに品切れになることを想定しておくべきだと警鐘を鳴らす。
「EUからの合意なき離脱は、イギリスの食品・飲料業界にとって悲惨なことになるだろう」と、担当者はBusiness Insiderに語った。
「数週間以内に、買い物客は手に入る商品や店の品揃えの大きな変化に気付くだろう」
その上で、10月末という小売業者がクリスマスに備え始める中での離脱期限に向けては「特に厳しい」との見方を示した。
担当者は、「クリスマス向けの製造がピークに達し、必要な倉庫スペースがすでに予約済みとなっている中、食品・飲料メーカーは冷凍・冷蔵倉庫や、輸送能力の確保に苦労するだろう」と語った。
「したがって、メーカーにはそれ以外に製品を作ったり、材料または完成品を保管しておく余力はないだろう」
「生鮮食品の在庫が減り、イギリスの食品輸入は秋以降、増えるだろう。だからこそ、合意なき離脱は大きな影響を及ぼす」
ジェレミー・ハント氏。
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また、今回の調査では、回答者の55%がブレグジットの結果、可処分所得が減るだろうと見ていることも分かった。
Blisのチーフ・マーケティング・オフィサー、ダイアン・パールマン(Diane Perlman)氏は、「これは、EU離脱の決定がいかにイギリスの小売業者に直接、影響を及ぼすかを示すサインだ」と、Business Insiderに語った。
「現実世界の顧客の行動を理解することで、小売業者はより良い準備ができる」
ブレグジットに反対するグループ「Best For Britain」のCEO、ナオミ・スミス(Naomi Smith)氏は、「青いパスポートに飽き足らず、ジョンソンやハントといったブレグジットの狂信者は(イギリス政府が戦時中に国民に配布した)食料配給手帳をも復活させようとしているようだ」と、Business Insiderに語った。
「生活必需品の買いだめは、イギリス繁栄という約束からは程遠い」
「イギリスにはいろいろなものがない。だからこそ、ブレグジットを止める必要がある」と、スミス氏は言う。
(翻訳、編集:山口佳美)