米中貿易摩擦の渦中にある中国IT大手ファーウェイ(華為技術)の任正非CEOは、開発を進めている独自OS「鴻蒙」について、「アンドロイドに対抗するものではなく、自動運転を含むIoT機器への搭載を目的としているものだ」と詳細を明らかにした。
2019年に入って精力的に公の場に出ている任CEO。
ファーウェイの「心声小区」より
ファーウェイのイントラネット掲示板「心声小区」に掲載された、英フィナンシャル・タイムズとフランスの週刊誌ル・ポワンのインタビュー全文で言及されている。
グーグルがファーウェイとの取り引きの一部を打ち切ると報じられた直後の5月下旬、ファーウェイはすでに独自OSの「鴻蒙(Hongmeng)」開発に着手し、商標登録も済んでいることが判明した。
スマホビジネスを統括する余承東(リチャード・ユー)コンシューマー事業部CEOが、「我々はグーグルやマイクロソフトを使い続けたいが、どうしようもないときはやるしかない。早ければ2019年秋、遅くても2020年春に自社のOSを発表する」と語るなど、グーグルに対抗する動きとして注目された。
ファーウェイは2018年に鴻蒙の商標を申請していた。
中国の知的財産権を管轄する「国家知識産権局」の公式サイトより
ファーウェイは8月9日に世界から5000人を招いて開催するグローバル開発者大会で、鴻蒙をお披露目するとも噂されている。
任CEOは、英仏メディアのインタビューに対し、「鴻蒙システムはスマホのために作ったのではなく、IoTに搭載するのが目的だ。自動運転や工業の自動化に活用する」と回答。
「我々は、世界に開放されたスマホ用OSシステムを使い続けることを希望する。ただし、アメリカの圧力が及べば、自分たちでやるしかない。その場合、エコシステムをつくるには2、3年が必要だろう」との見通しも示した。
アメリカ規制の影響はパブリッククラウド
トランプ米大統領は6月29日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の記者会見で、ファーウェイに対する締めつけを緩和する考えを示したが、ロス商務長官は7月10日、安全保障への脅威がない製品の提供は認める一方、ファーウェイを今後も、輸出禁止の対象リストに残し続けるという見解を示した。
任CEOはアメリカの規制について、「5G、光伝送、コアネットワーク、無線ネットワークは規制の影響を受けない。光システムは世界の先端を走っており、アメリカの助けは必要ない。5Gも2、3年は追いつかれない」とする一方で、「アメリカ製のx86ベースのサーバが使えないと、パブリッククラウドの構築に影響が出る」と語った。
任CEOによると、アメリカが規制を発動した5月中旬以降、海外市場で端末販売は急落したものの、現在は持ち直しているという。また、「中国では同情を集めたためか、スマホ販売が大幅に伸びた。ただし、同情や愛国心では買わないでほしい」とも語った。
(文・浦上早苗)