優しすぎて会社を辞められない若者問題、親にも会社にも「申し訳ない」

電車通勤風景

「優しすぎる」ことが理由で、就職が決まっても大きな悩みを抱えてしまう若者たち。

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キャリアコンサルタントとして就活生のキャリア相談に乗っていると、「優しすぎる人」に遭遇することがある。

ちょうどこの時期は、就活生の中に内定を取り始める人が増えてくる。キャリア支援をしていた就活生から「行きたかった企業に受かりました!」という吉報を受けて、安堵したのも束の間、後日、「親が反対しています」と相談にくることがある。ここまでは、よくある話だ。

なるほど、A社に行きたい就活生とA社に行かせたくない親とで戦っているのか、と。だが、就活生からの話を聞き進めると、その構図ではないことに気付く。

望まぬ選択、親に申し訳ない

働く男女1

親の希望した企業に行くことが出来ないことに対して「親に申し訳ない」。

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「親の希望しない企業に行くのはなんだか申し訳なくて」という発言だ。

その就活生は、自分の進みたい道を分かってくれない親を、どう説得するかに悩んでいたのではない。親の希望に沿うことができない申し訳なさに悩んでいたのだった。さらに難しいのが、こうした「優しすぎる人」は、本人が親と喧嘩することを望んでいないため、主張することをためらってしまう。

なぜ、自分の人生であるはずなのに、親の意見を聞いてあげられないことに対して自責の念を抱かなければならないのだろうか。確かに、親には自分が独り立ちするまでを育ててもらい、格別な恩がある。だから、親に対しては申し訳なくなる気持ちも分からなくもない。

かく言う私も、大企業を退職する時は、親から多少の反対はあり、「がっかりさせてゴメンね」という気持ちはあった。だからと言って、意思を曲げたことはないが。しかし、「優しすぎる人」は、親以外でもこの申し訳なさを発動してしまう。

社会人からキャリア相談を受ける中で、退職をしようかどうか悩んでいるという相談は多いが、「優しすぎる人」が決まって言うのは、「会社に申し訳ない」という発言だ。

例えば、退職したいと上司に伝えた時、「給与を上げるから」「定時で帰らせるようにするから」などといった好条件を提示され、引き止めに遭うケースがある。その時、退職の意思が揺らぎ、「ここまでしてくれる会社に申し訳ない」と思ってしまう人がいる。

結果も出さずに辞めてはいけないのか?

リクルート生

退職を希望していても、会社から提示された好条件に「ここまでしてくれる会社を辞めてしまうのは申し訳ない」と退職を踏み止まってしまう。

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しかし、よく考えてみてほしい。その好条件は、あなたに退職されないために出した条件であるということだ。本当にいい職場であれば、退職をチラつかせずとも、相談すれば改善に向けて動くはずだ。つまり、その会社は“現金な会社”であって、そんな会社に申し訳なくなる必要は全くない。だが、「優しすぎる人」は、会社への申し訳なさを払拭できずに悩んでしまう。

こうした人を増やしてしまう背景として、申し訳なく思うことを強要する文化もあると考える。私が入社して1年が経とうという時、「あなたへの研修でお金もかかっているのだから、若手のうちに辞めるのは違うよ」と、会社の人に言われたことがある。

確かに、会社が研修を用意してくれたことに感謝することは大切だが、研修をやってくれた会社に残らなくてはいけない、というルールはない。ただ、それを真に受けてしまうと、辞めたいと思った時に「研修までしてくれた会社に申し訳ない」と思ってしまいかねない。

また、「結果を出していない身分で退職してはいけない」と思い込んでいる人にも会うことがあるが、結果が出ていようがいまいが、退職する権利は誰にでもある。

「結果も出ていないのに会社に申し訳ない」という理由で、自分が本当にしたい選択ができなくなっているのは非常にもったいないことだ。人に申し訳ないという理由で希望を諦める生き方は、自分のキャリアに申し訳ないと思った方がいいくらいだ。

感謝の気持ちをセットで持ってみて

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自分が決めたことを貫いていくために「感謝の気持ち」がキーワードになっていく。

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しかし、自分が「優しすぎる人」であることに悩む人が、急にそうでなくなることは難しい。「申し訳ない」という気持ちを抑えてください、と言っても不可能だろう。

そういった人にお伝えしているのは、申し訳ないという気持ちとセットで感謝の気持ちを持ってほしい、ということだ。先述した就活生の場合、A社に行かせたくないと思っている親に対して、申し訳ないという気持ちになるのは仕方ないことだとして、「そこまで真剣に考えてくれてありがとう」という気持ちを持つことをまずはオススメしている。

そして、(A社を選んで)社会人になった時に、たくさん恩返しをしてあげたらいいではないか、と。元気にやっている姿を見せれば、親もきっと安心してくれるから、自分の決めた道を進んでほしいと願っている。

また、一見自分の為を思って言ってくれているような意見も、実は親のエゴだったり、会社の利益のためだったりする。相手に「申し訳ない」と思って選んだ選択が、相手の思うつぼだった、なんてこともあるだろう。

だからこそ、自分の決めたことを貫いてほしいと、私は思う。

(文・境野今日子、写真はイメージです)


境野今日子:1992年生まれ。株式会社bitgrit人事部長、株式会社地方のミカタのキャリアコンサルタントなどの職場で働くパラレルワーカー。新卒でNTT東日本に入社、その後、帝人を経て現職。就活や日系大企業での経験を通じて抱いた違和感をTwitterで発信し、共感を呼ぶ。

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