YouTuber事務所UUUMが「note」に出資した理由。トップ対談で語られた“共感提携”の意図

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ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏、UUUMのCEO、鎌田和樹氏、ピースオブケイクCXOの深津貴之氏に提携の経緯や目的を聞いた。

撮影:伊藤有

「note」を運営するピースオブケイクが、YouTuber事務所のUUUMと資本業務提携を発表した。

ピースオブケイクはマンガ、文章などのコンテンツとユーザーをつなぐメディアプラットフォーム、かたやUUUMはYouTuberの動画制作をサポートするインフルエンサーの大手プロダクション。

事業の形態は異なるが、どちらにも共通するのが「クリエイター」というキーワードだ。

ピースオブケイクの加藤貞顕CEO、UUUMの鎌⽥和樹CEOに提携の経緯とこれからを聞く。

4月に初訪問、月内にはほぼ出資を決めていた

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「お互いに会社よりもクリエイターファースト」と話す、UUUMの鎌田氏。

「お互いにクリエイターのことを第一に考えている。会社よりもクリエイターファースト、その価値観が一致した」

ピースオブケイクに出資し(金額は非公表)、資本業務提携を結んだUUUMのCEO、鎌田氏は語る。

「価値観の一致」は企業の提携などでよく語られる言葉の1つだが、両社の話を深掘りして振り返ると、この言葉が両社にとって重要な意味を持っていることがわかってきた。

ピースオブケイクCXOの深津貴之氏は「クリエイターは(自分たちと一緒にビジネスをもつくっていく)チームの一員。彼ら(クリエイター)のキャリアに寄り添っていきたいという想いが(鎌田氏と)同じだった」と話す。

ピースオブケイクCEOの加藤氏とUUUMの鎌田氏が、最初に顔を合わせたのは2019年3月。スタートアップ企業向けの、あるイベント会場で審査員として同席したことがきっかけだった。

「noteがなぜ伸びているのか以前から興味があり、少し前から個人的に使い始めていた」という鎌田氏。少なくとも3月11日から取材日の7月17日まで、毎日欠かさずにnoteの投稿を続けてきた。

イベントでの出会いで「一度なにかご一緒にできないか話しましょう」と意気投合し、翌週の4月初旬には早速、鎌田氏がピースオブケイク本社(東京都港区)を訪問している。

さらにその翌週には、UUUMの渡辺崇CFOがミーティングに加わり、資本業務提携を前提とした話し合いが一気に進んだ。実質4月中に資本業務提携の意思は固めていたという。その後、UUUMの通期決算に合わせて、7月12日の資本業務提携発表に至った。

UUUM初の「共感提携」の意味

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ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏。左は同CXOの深津貴之氏。

ピースオブケイクとUUUMの提携は、どんなビジネスをつくるための布石なのか。

鎌田氏と加藤氏の言葉から受ける印象は、目先のビジネスではなく、かなり先に置いたビジョンに向かって突き進むための提携という姿が見える。

「うちは事業会社なので、出資や買収にあたっては、いかにシナジーが生み出せるかを計算します。ただ今回に関しては、今この瞬間に発生する取引利益というよりは、将来にわたってこういう世界観(をやっていく)だろうなという、初めての出資だと思っていて。

ここから何年かにわたって……もしかしたら何十年かもしれないですけど……できあがっていく世界への先行投資をしたような(感覚)」(鎌田氏)

UUUMは2018年9月、インフルエンサーマーケティングのプラットフォームを運営するレモネードを買収(吸収合併)している。このときは、直近のビジネスを広げ加速するための買収という意図が強かった。

今回の提携は、ピースオブケイクの加藤氏の言葉を借りれば、

「大きくいえば、インターネットの内外で個人のクリエイターが活躍できる、おもしろい世界を一緒に作ろうということ。見ているゴールは同じでも、それぞれに登り方が違えば、そこにシナジーは生まれる」(加藤氏)

とはいうものの、疑問もある。YouTuberやインフルエンサーの活躍が広がる今の時代、クリエイター支援をする企業はほかにもある。その提携先になぜ、UUUMはピースオブケイクを選んだのか?

この理由を鎌田氏は「今後も個人のクリエイターが活躍できるという世界感を共有でき、かつ“競合にならない仲間”」(鎌田氏)であることが大事だったと説明する。

動画領域に強いUUUM、書き手に寄り添い、稼げる世界をつくりたいと「note」を通じてクリエイター発掘と支援をしてきたピースオブケイク。それぞれが補完関係にあるような強みがある。

「利益ばかりを追求していくと、派手に炎上させるなどのチキンレースにいきがち。(けれども)UUUMもnoteも“負の感情で稼がない”というところに共通性がある。そういう価値観を共有できる仲間は大切」(深津氏)という基本的な価値観が、説明なくお互いの中にあることが重要だった。

「おもしろいコンテンツや良い記事を作ったらちゃんと報われる。そういう世界を一緒に作っていきたい」(加藤氏)という、同じ山の頂上を目指すための「共感提携」だというのが、両社トップの会話から強く感じた印象だった。

日経 ×ピースオブケイク×UUUMという新しい展開はある?

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撮影:伊藤有

ピースオブケイクは2018年8月、日本経済新聞社と資本業務提携を結び、日経から3億円の出資を受けている。

その際は、日経新聞社 常務取締役の渡辺洋之氏を社外取締役に迎えているが、今回はUUUMから役員は入らない。「僕らは事業会社なので、そこの(取締役の)椅子がほしいとかは全然ない。事業に対してコミットして、結果を出せれば(十分)」(鎌田氏)

日経とUUUMという全く色彩の異なる2社と提携することについて、ピースオブケイク側はnoteを「街」に例える。

「ニューヨークには、金融街もあればブロードウェイも中華街もある。それと同じで、noteは“街”だからいろんな“場”があっていい」(加藤氏)。

「株主にはUUUMも日経も、TBSもいるけど、みんな仲良くが基本方針。むしろ我々がハブになることで、日経とUUUMのコラボレーションのように、新しいものが生まれる起点、きっかけになればうれしい」(深津氏)。

直近の目立った協業ビジネスとしては、noteのクリエイターのグッズをUUUM運営のECサイト「MUUU(ムー)」で販売する計画がある。

もちろんこれは、両社がつくっていくビジネスのほんの入り口にすぎないが、noteにMUUUの販売機能や導線を組み込む手法については、すでに技術検証も始めている。

一方でUUUM所属のYouTuberがnoteでコンテンツを書き始めるといった動きは、提携発表以降、既に自然発生的に起こっている。「もういつでも、UUUMマガジン(UUUMクリエイターまとめ)も作れるくらい」(深津氏)だという。

「逆にnoteのクリエイターが動画デビューして、UUUMでお世話になることもあり得るし、動画以外でマネジメントをしていただくこともあり得る」(加藤氏)

「マネジメントについてはお手伝いできる。逆に文章についてはまだまだの部分もある。そこはお手伝いいただきたい。お互いに欠けている部分を補いあえれば」(鎌田氏)

と、“本丸”のクリエイターの活躍の場を両プラットフォームに広げていくことについても、積極的に検討している。

企業の資本業務提携では通常、売り上げ拡大に向けた双方の思惑は否が応でも見え隠れするものだ。

けれども、今回のUUUMとピースオブケイクの提携は、まるで、互いに理想を追い求めるクリエイター同士が「とにかく、一緒にやろうぜ」と握手を交わしたかのように見える。

「創作を続けるためにはマネタイズも必要で、そこに注力しているのはnoteもUUUMも同じ。おもしろいコンテンツや良い記事を作ったらちゃんと報われる。そういう世界を一緒に作っていきたい」(加藤氏)

両者の提携からこの先、どんな新しいコンテンツが生まれていくのだろうか。

(聞き手・伊藤有、文/写真・太田百合子、伊藤有)

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