7月20日、緊急会見を開き、詐欺被害にあった被害者やその家族らに謝罪した宮迫博之さんと田村亮さん。
撮影:伊藤有
振り込め詐欺グループの宴会に参加して金を受け取ったとして、吉本興業から「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんが契約解消、「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんが謹慎処分を受けた「闇営業」問題。
宮迫さんと田村さんの2人は7月20日午後3時から東京都港区内で急遽、記者会見を開いた。冒頭、2人は反社会勢力から金銭を受け取ったことを改めて認め、振り込め詐欺の被害者らに謝罪した。
だが、会見で明らかになったのは、謝罪会見を開きたいという2人の訴えを拒み続けた所属事務所・吉本興業への不信感。なぜ吉本は「真実を語りたい」と言う2人の訴えを退けたのか。
会見の要旨は以下の通り。
「お金をもらっていない」と身勝手な解釈をしていた
Q 宮迫さん自身は引退を申し出たと伝えられているが、その経緯は?
宮迫:引退を覚悟して、謝罪会見をしたいという意向は会社には伝えたことはある。
その経緯を話すと長くなるが……。
まず最初に僕が「FRIDAY」の直撃を受け、反社会勢力のパーティーに参加したか、参加者全員100万円ずつギャラを受け取ったかと聞かれた。写真を見せられても、5年ほど前のことだったので全く記憶がなく、思い出せなかった。
その時僕は、「全員が100万円もらえるような営業なんてあるわけないよ、そんなんもろてへんよ」「反社会勢力の知り合いなんておるわけない、なんなのこの記事は」と言い、掲載されるわけないとタカをくくっていた。
(パーティーに誘った)入江(慎也)くんに電話をして、振り込め詐欺の被害者の方から奪ったお金を受け取ってしまったのかが確認したが、入江くんの答えは、「そんなのはないです」と。
次の日に入江くんから電話があり、「お金のことを言わなくていいですか」と言われた。僕はいつも開いている年末の忘年会をそのお金で払っておいてくれ、と言った部分だけはなんとなく覚えていた。
本当に身勝手な自分の解釈で、忘年会の支払いに当てたので、「じゃあギャラは自分はもらっていないんじゃないか」と。そのほかの人間もお車代程度だろうと思い込み、「もらってないということでいいん違うか」と。もらってないと言うといてくれと、入江くんに指示を出した。
会社は金をもらったことを知った時、「静観でいきましょう」と
記者を前に質疑に答える宮迫さん、田村さん。
撮影:伊藤有
その後、入江くんから連絡があり、吉本を解雇されたと聞いた。こんなことで解雇になるんだ、と僕はまだ重要性に気づいていなかった。詐欺の被害に遭われた方がいることにも気づいていなかった。会社になぜこんなことで解雇になるんだと詰め寄ったりもした。自分が悪いのに。
3日後、「FRIDAY」を発売され、自分の想像をはるかに超えて、世間の反応が大きく怖くなった。翌日亮くんから電話があり、「お金のこといいましょう」と言われても、まだ僕は打ち上げ代を出してもらっただけ、と思い込みたいという保身の気持ちがあった。
亮くんがもらった額は50万、自分は100万。僕はその額から忘年会の代金を支払ったあとのお釣りはもらっていたので、6月8日、それを会社には伝えた。
しかし、吉本が金をもらっていたと発表したのが24日。間が空いているのは、僕たちが8日に金額を伝えた時、会社から「静観でいきましょう」と言われたから。
僕もこれが表に出たら、どれだけの騒動になるのか、どれだけの迷惑をかけるか怖くてたまらなかった。だから僕たちも納得してしまった。
会社は「記者会見をさせるつもりはない」と
だけどその後、1日、2日経つうちに、詐欺被害のお金を受け取っているんじゃないかという報道を目にして、情けなく、申し訳なく、自分のことを許せなく思い、何度か吉本社員に「大丈夫か、会見を開いて言った方がいいのではないか」と訴えた。それでも、会社からは「静観です」と言われた。
そして24日、会社に急遽(参加していた)全員が呼ばれ、「全員謹慎」と告げられた。僕は謹慎は当然だと思ったが、僕と後輩達の罪はまるで違う。そのときに亮くんが「記者会見をやらせてください。自分たちの口で金額、経緯を伝えさせてください、(吉本を)辞めて1人でも会見をしたい」と声をあげてくれた。
それでも会社は「ダメだ、記者会見はさせるつもりはない」と。
同席していた吉本の弁護士や社員を退席させて、吉本興業の岡本社長と僕、亮くんら話し合いになった際、一言目に「お前等テープ回してないだろうな」と言われた。
そして、「亮、お前辞めて1人で会見すればいい。ほんなら、連帯責任で全員クビにするからな。それでもいいなら記者会見をやれと。俺にはお前等全員クビにする力がある」と言われ、全員何も言えなくなりました。
その後謹慎期間の間もワイドショーやいろいろな番組で先輩、後輩、仲間達がつらい思いをしながら、僕たちに対するコメントを言いづらい中、言ってくれた。本当に申し訳ないです。
それを見ていてやはりこのままではダメだ、引退してでも記者会見をやらしてくれと会社にはなんども連絡した。
突然送られてきた「引退会見」か「契約解除」の2択の書類
経緯を説明する宮迫さん。
撮影:伊藤有
7月8日に僕と亮くんが吉本に行き、僕が全責任を負って引退するので、引退会見でもいいので謝罪させてくれと岡本社長に嘆願した。その時は「引退はさせない。させるわけにはいかない。謝罪会見はさせてやる。その代わり時期はこちらで設定する。それはいつになるか約束できない」と。
僕は、「会社のためにもすぐにやるべきだ」と言ったが、時期はこっちで決めるの一点張りだった。「僕と後輩は罪が違うので謹慎期間を短くしてやってくれ、家族がいるので」とお願いし、それはわかったと言ってもらった。
そのあと亮くんと話して、恐らくあの感じでは1カ月2カ月引き延ばされて、結果うやむやにされるのではないか、会見もさせてもらえないのではないかという不信感が拭いきれなかったので、僕たちは自分たちに弁護士をつけることを選択した。
弁護士を通じて(吉本と)話し、そこからは会見は近日中にという方向性に向かい、安堵していたところ、僕たちの弁護士に突然、僕と亮くん2人の引退会見か契約解除を選べという書面が送られてきた。
謝罪会見をさせてもらえると思っていた僕たちはどうしていいかわからなくなった。僕たちが弁護士をつけたことで、吉本サイドも構えてしまったのかも知れない。僕たちの思いとあまりにも違ったので、もう一度岡本社長と話をしたいと、吉本本社に向かったが、そこで現れたのは(吉本側の)弁護士2人だけだった。
そこで2人の引退会見、それを拒むなら2人の契約解除、この決定はゆるがないと改めて言われた。
僕たちは(岡本社長と)話させてくれと頼んだが、断られました。記者会見をやるなら、明日の12時に引退会見だと。その場合、2時間後にここに戻ってきて、こちらで考えているQ&Aを練習してもらう。そう告げられた。
会社を出て亮くんと話し、そうするぐらいなら、会社を辞めて自分たちで会見をしようという判断になり、今日に至った。
「この世界のことしか知らない。引退は考えていない」
吉本興業は、7月19日付けで宮迫さんとのマネージメント契約を解消する旨を公表している。
出典:吉本興業
Q 結果、契約解除となったが、宮迫さんの思いは?
宮迫:僕が引退をするのは、しかるべきだと思うので、契約解除をされたことに対して文句はない。
Q 引退ではないのか?
宮迫:18歳から30年間、この世界のことしかやってきていない。僕ができることは、この世界で学んだことしかない。僕のようなものでも何年か経てばお役に立てることもあるかもしれないので、今は引退ということは考えられない。
Q 宮迫さんは反社会勢力との付き合いはあるのか?闇営業問題とは別に、2016年7月のキャバクラで反社勢力と一緒に写った写真も出てきたが。
宮迫:3年前、写真を撮った記憶はうっすらとある。中学の同級生と行った店で、トイレから出てきたときに撮った写真。今回の記事に一緒に行っていた同級生が憤慨し、当時の店長を探してくれて、「写真を撮るのを止めに入った」という証言しても良いと言ってくれている。
刺青があったことも一瞬だったので、気づかなかった。
Q 5年前とはいえ100万円もらったことを覚えてないということは、度々こういう風にお金をもらうようなことがあったのか?
宮迫:自分の金銭感覚がおかしいのだと思う。今も当時も、後輩を集めて忘年会や飲み会をやるのが好きで、常にそれ相応の金額を財布に入れていたので、入江くんにお釣りをもらったことも、泥酔していて財布の中が増えたのか減ったのか気づいていなかった。
子どもが謝ろうとしているのに、なぜ親は止めるのか
謝罪会見を開かない姿勢をとった吉本興業に対して「子どもが悪いことをしたことを謝ろうとしているのを親は止めるべきではない」と、自身の考えを述べる田村さん。
Q 吉本からは会見もダメ、引退もダメと言われた時に、会社にその理由を聞いたか?
宮迫:吉本側の弁護士から「会見の成功はない、それをわかっているのですか?傷口を広げるだけですよ」と。岡本社長からは「こんなことでは引退させられない」と言われた。
田村:会見を止めている理由が全くわからなかった。本当にファミリーだと思うなら、子どもが悪いことをしたことを謝ろうとしているのを親は止めるべきではない。僕は本当のことを言いたかった。(吉本に対して)不信感しかなくなってしまった。本当のことを言うのがどんどん遅れてしんどいことも伝えていた。
Q 現段階で発表されているのは、宮迫さんの契約解除だけ。亮さんの立場は?
田村:(引退会見をするなら)2時間後に戻って来いと言われ、「戻らなかったらどうなるんですか?」と聞いたら「契約解除」だと言われたので、自分も「契約解除」だと思っている。個人的には契約解除していただきたいと思っている。
Q なぜ最初に「金をもらっていない」と嘘をついてしまったのか?
宮迫:紛れもなく、僕の保身です。最初は軽い気持ちだった。その時に詐欺被害に遭った方たちの苦しみに、こんな年にもなって気づけなかった。
「僕たちの嘘を信じて動いてくれた先輩に申し訳ない」
Q 先輩芸人に対しても嘘をついてしまっているが。
宮迫:(長い沈黙)返せないほどの恩をいただいている先輩に軽い気持ちで、勝手な自分の思い込みで「金をもらっていない」と言ってしまった。取り返しがつかない、もうお会いすることもできない。
時折、ハンカチをとる姿もあった。
Q 松本(人志)さんには連絡したのか。
宮迫:電話して、自分の勝手な解釈で「打ち上げ代を出してもらっただけだ」と話した時に、松本さんからは、全員がいくらもらったかなど細かいことを言った方がいいと言われていたのに、恩義のある先輩の大事なアドバイスをちゃんと受け止められなかった。
田村:僕が嘘をついたのが(相方の)淳、Twitter、ラジオの生放送。吉本にお金をもらったことを告げ、吉本側と僕たちで結局は「静観しよう」ということになったその足でラジオに出演し、とっさに嘘が出てしまった。それを信じて動いてくれる先輩がいたこと、本当に申し訳ないです。
宮迫:謹慎が発表になった時にもう一度松本さんに電話した。松本さんは「休んでいる間、僕(宮迫)の出ている番組、ノーギャラでも出たるから」と。こんな最低な嘘をついた自分のために、優しい言葉をかけてくれていた。
Q 入江はみんなをどう誘ったのか。
宮迫:入江くんと亮くんと3人で飲んでいる時に、「今度結婚パーティーがあるから顔出してもらえませんか」と言われたので、「行けたら行くわ」と。「ギャラが出ます」と言われたので、亮くんが「そんな大金を出すところ、大丈夫か?」と。入江くんが「僕がやるイベントのスポンサーがついているところなので安心です」と言ったので、「じゃ、大丈夫か」と思った。
僕たちはその場の最後の10分ぐらいしか参加してないので、他の芸人がどう集められたのかまではわからない。
「反社勢力の判断を1個人、芸能人としてするのは難しい」
Q こう言うことで招集されたのは初めてか?
宮迫:僕は2回目。1回目は何度か共演した芸能人の大々的な誕生日パーティーに来てくれと頼まれ、お笑いのコーナーの仕切りをしました。その時はその事務所の副社長からお車代を渡されました。
Q 闇営業、吉本の言葉でいうと、「直」の営業はあるか?
宮迫:大阪時代、30年前には何度か先輩の誘いで行ったことがあり、当時は5000円とか1万円もらった。
田村:僕は今回の問題になった2014年が初めてでした。そのほかは同郷の先輩の忘年会に顔を出して欲しいと言われて、その時は5万円もらいました。それ以外はない。
初めてだったので50万円という金額が高いのかどうかピンときてなかった。
Q 今思えば、こうすれば防げたということは?
宮迫:とんでもない認識の甘さだったが、入江くんや吉本興業の社員が一緒にやっているイベントのスポンサーが関係していると言うことで、反社会勢力だと気づかなかった。パーティーには子どもや家族連れもいたから。反社会勢力だという判断を、一個人でするのは難しい。特に芸能人はすごい難しいと思う。
Q それぞれ相方に伝えたいことは?
宮迫:もう申し訳ない、申し訳ないなんて言葉で……すみません。つきあいが長すぎて、兄弟みたいにやってきたやつを裏切ってしまったんです。すみません、申し訳ないとかそんな言葉で許されるとは思っていません。
田村:今日会見前に淳と話せた。その前も「引退か契約解除か」迷っていた。吉本を辞めるということは、淳と一緒にできないということ。一緒にやってきた番組のスタッフとも離れなくてはならない。
でも、ちゃんと自分の口で謝りたい、ちゃんとお金のことを言いたい、本当のことを言いたい、ということをさせてくれないことが引っかかっていて。僕の場合は会見を開いている今も「契約解除」にはなってなくて。その状態も辛い。
僕らはただ謝罪がしたかった。吉本には感謝しかない
吉本興業に対して「感謝しかないですよ。こんなことしたい訳ないじゃないですか」と語る宮迫さん。
Q 吉本興業に対して、どんな思いがあるか。
宮迫:こんなことを言う会見がしたかった訳ではない。僕たちは詐欺被害に遭われた人にただ謝罪がしたいだけだった。ただ、事実を細かくしゃべると、こう言う形になったのは不本意。
大阪で生まれて、子どもの頃からたくさん笑わせてもらった吉本興業に18歳に入って30年間、育ててくれたことには感謝しかないですよ。こんなことしたい訳ないじゃないですか。
田村:宮迫さんと一緒に記者会見を開きたいと言ってきたのは、会社を攻撃するつもりではない。自分たちを育ててくれた気持ちすら伝わっていない。
弁護士を立てた理由も、業界の目線ではない第3者を入れたかったから。吉本側も「いいやん」と。でも実際弁護士がくると態度が変わった。それからは吉本の弁護士としか話ができなくなった。僕たちも不信感が出てきた。もともと謝罪会見をしたいということだったのが、どこから話が変わっていったのか。
僕がすごく不信に思ったのが、「在京、在阪5社は吉本の株主だから大丈夫やから」と言われたのが、「何が大丈夫なのか」と。もともと好きだった会社なのに、こういう風に変わっていくのかという思いが募り、どんどん不安になった。ファミリーだと言っていた人がこういう風に変わっていくんだと。
Q 吉本はファミリーと言っているが、手のひらを返してきたように見えるが。
田村:ちょっとずつ、信用が崩れていった部分かと思う。ギャラも僕たちからどのぐらい持っていかれているのかわからない。そういうことの積み重ねが今回につながっているかもしれない。
今後は考えられない、でも2人でできることをしていく
今後の活動に関しては「今は考えられない」と話す2人。
撮影:伊藤有
Q 今後2人はどう活動していくのか。
宮迫:自分のついた嘘のせいでこんなことになっているので、今はまだ今後のことは考えられない。
田村:僕もこの先のことは考えられない。
Q この会見中に亮さんに対しても、吉本から契約解除という発表があったが。
田村:びっくりしないし、むしろ宮迫さんと一緒のタイミングで契約解除にならなかったのがおかしいと思っている。
Q 亮さんは引退は考えているのか。
田村:契約解除なので、自分でこれから何をしていくのか考えます。引退は考えていない。
Q 家族にはどう言っているのか。
宮迫:妻は一般の人間なので、なぜ謝罪会見ができないのかと言っていた。会見をさせてもらえないと話すと、「もう辞めた方がいいんじゃないか、責任をとって引退した方がいいんじゃないか」と言われた。
大学生の息子とはまだきちんと話せてない。彼がどのように感じているのか、はかりかねる。
田村:妻は「やっと言えるのか」と。今後どうなるかわからないけど、本当のことをしっかり謝罪してきなさい、と。自分の子どもに見せられるような会見にしなさいと。
Q 今後、当分は謹慎するのか。
宮迫:謝罪会見をしたら、詐欺被害に遭われるかもしれないお年寄りのところに赴いて、自分たちなりにわかりやすく、こういう事例があると、劇のように啓蒙活動などできるのでは、と何度かみんなで話し合ってある程度形もつくった。でも現状契約解消されているので、残りのメンバーとはその活動はできないと思う。
僕ら2人でできることを模索していく。
(文・浜田敬子、小林優多郎、西山里緒、取材・撮影・伊藤有)