ロンドンでウーバー・ジャンプの自転車に乗ってみた。
Shona Ghosh/Business Insider
- ソフトバンクは今、テック界最大の資金提供者。10兆円ファンドと呼ばれる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」から、ウーバー、ウィーワーク、スラックなどのテック企業に巨額の出資を行っている。
- ファンドは孫正義氏が采配を振るう。ビジョン・ファンドという名前は、人類とテクノロジーの発展に関する同氏のビジョンにちなんで名づけられた。フード・デリバリーからタクシー、ロボットまで、あらゆるものに投資している。
- 筆者はソフトバンクが出資する企業だけで24時間を過ごしてみた。すると、孫氏の壮大なビジョンには問題もあることが分かった。
- ウーバー、ウィーワーク、オヨを使って生活することはお金がかかる —— そしてこれらのサービスは完璧からは程遠い。不健康な食事を勧められ、ミーティングには遅刻するし、サービスもイマイチだった。
ウーバーを使っている人のほとんどはおそらく、ソフトバンクの名を聞いたことはないだろう。ソフトバンクは日本のコングロマリットで、世界の有望なテック企業に投資している。
ソフトバンクは通信事業者だが、型破りな創業者、孫正義氏は1000億ドル(約10兆円)の投資ファンド「ビジョン・ファンド」を設立した。旅行、仕事、食べることや寝ることなど、生活を変える企業を中心に支援している。
ビジョン・ファンドという名称は、孫氏の「ビジョン」にちなんで付けられている。同氏(ニックネームは「ヨーダ(Yoda)」)は我々の未来の生活について、300年の計画を立てている。
同氏は2010年の衝撃的なプレゼンテーションでこのビジョンの概要を語り、その内容は2017年に広く報道された。プレゼンテーションでは、人類が200歳まで生きる、AIやロボットがほとんどの仕事をこなす、そして我々が脳に何らかのチップを埋め込むと予測した。
孫氏の2010年のプレゼンテーションのスライドの一部。
SoftBank
ソフトバンクのパートナーは皆、この壮大な構想に共感しているようだ。ウーバーは自動車を減らし、ウーバー・イーツはキッチンをなくし、オヨ(Oyo)はホテルの使い方を一変させ、ウィーワークはオフィスでの仕事を変えようとしている。
だが2019年の今は、この300年のビジョンの最初の10年に過ぎない。ソフトバンクとその投資先が、この劇的な改革にどの程度、成功しているのかを見極めることは少し難しい。
なので、筆者は丸1日、ソフトバンクが投資している企業のサービスのみを使って生活し、仕事をし、食事をしてみた。我々の暮らしの未来像を示すこのビジョンについて、何か分かるかどうか調べてみた。
ソフトバンクが投資している企業のすべてがイギリスでサービスを提供しているわけではないため、筆者は主にウーバー、ウィーワーク、オヨ、そしてスラックを使ってみた。
結果は、何とも言えないものだった。
これらのサービスは明らかに、スマートフォンに依存し、手軽な利便性を求める世代をターゲットにしている。だが、共通点はそこだけのように思えた。必ずしも常に便利とは思えなかった —— ウーバーは時間通りに来ず、ラッシュアワーの混雑したロンドンでは明らかに選んではいけない交通手段だった。
ウーバー・イーツも同じ。フード・デリバリー・サービスは、すでに家庭での調理に影響を与えていると考えられているが、アプリがイギリスのフル・ブレックファスト(伝統的な朝食)とパンケーキを推奨し続ければ、我々は公衆衛生上の危機に直面するだろう。
一方、オヨが提供する標準的なサービスでは、部屋は快適で、タオルも良かった。だが、浴室の換気扇は壊れていて、ラジエーターも明らかにおかしく、窓は割れていた。
筆者の体験を見てみよう。
食事はウーバー・イーツのみで。デリバリーの朝食で1日がスタート。
明らかに不健康なメニューを勧めてくる。
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パンケーキを注文。一気に1日の適正カロリー、2000キロカロリーの半分、1000キロカロリーを食べる。おそらく毎日食べたらいけないものだと思う。
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全体的には素晴らしい。だが、誰かに朝食を持って来てもらうのは奇妙な感じ。
Shona Ghosh/Business Insider
スラックで同僚にパンケーキを見せた。
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仕事に行く時間。いつもの自転車ではなく、ウーバーを使う。
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ウーバーは仕事をするには最高のタクシー・プラットフォームだと思っているとドライバーのイルファンは語った。
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渋滞。自転車で行くより時間がかかった。
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次の体験に遅れた —— ウィーワークのシェアオフィスで1日仕事。
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ウィーワークのビジネスモデルは大胆だが、すぐにオープンで明るいスペースの虜になった。
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入居者のシンは、売り上げの約4分の1がウィーワーク経由で生まれていると語った。
シン(右)と友人のクリス(左)。
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次はウーバー・ジャンプ(Uber Jump)の自転車に乗って、ロンドン中心部を抜けてミーティングへ。
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ウーバー・ジャンプに乗るのは初めて。まさにゾクッとする経験だった —— いい意味で。
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ウーバー・ジャンプの自転車は街を動き回るには間違いなくスマートな方法 ── インフラが整備されていれば。
Jump Bike
悲しいことに、返却場所を間違えて10ポンド(約1300円)追加で取られた。
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ミーティングの後はランチタイム。ウーバー・イーツで2度目の注文。
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ウィーワークへ戻り、無料のシードルで一息。
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あちこちにロゴがあるのは少しカルト的だったが、一貫したアイデンティティーを構築するためだろう。
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シンによると専用オフィスは月に約500ポンド(625ドル)。
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ようやく仕事は終わり。今日はオヨのホテルで夜を過ごす。
オヨの創業者リテシュ・アガルワル。
Oyo
筆者が選んだオヨはロンドン西部の高級住宅街ベルグレイビアにある。予約サイトは複雑だったが、何とか予約できた。
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イェルプ(Yelp)の2014年のレビューでは星1つ。それから改善されているかどうか見てみよう。
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顧客サービスは満点ではない。薄汚れた受付に座っていた男性は、アラビア語で大声で電話していた。電話で話したまま、カードキーを手渡し、部屋を指さした。
清潔とは言えない受付。
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一見、かなり良さそうな部屋。ベッドも快適で、シーツもきれいなようだ。だが、道路沿いの1階でうるさかった。窓は壊れていた。
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浴室は良かった……だが、換気扇のスイッチを入れるとひどくうるさかった。
なぜかラジエーターが動いている。7月なのに。しかも24度。だが、これがロンドン中心部で76ポンド(約1万円)払った結果。
部屋から見えるベルグレイブ・ロード。
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今夜はここが私の家。荷ほどきして、落ち着いてから、ウーバー・イーツで本日3度目の注文。
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カトラリーを付けてとリクエストしたのだが忘れられた。しかたなくラムのケバブをティースプーンで食べた。
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このミスがあったのでレビューは星2つにしたが、後で少し反省した。
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ベッドに倒れ込み、壊れたスプリングがあることに気づいた。壊れたスプリングとラジエーターをよそに、何とか6時間寝た —— そして、実験も終わり。
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食費、宿泊費、交通費に約200ポンド(約2万7000円)かかった。高い!
Michele Tantussi / Stringer
オヨ:76ポンド
ウーバー・イーツ(3食):65.35ポンド、間違って頼んだ分のキャンセル料18.75ポンドを含む
ウーバー(30分×2回):30.73ポンド、チップは含まない
ウーバー・ジャンプ:16.56ポンド、返却場所を間違えた追加料金10ポンドを含む
ウィーワーク:無料
合計: 188.64ポンド
ウィーワークで仕事をしたり、ジャンプの自転車に乗ったのは、とても楽しい体験だった。だが、ウーバー・イーツを頼むことも、オヨに泊まることもしばらくはない。
ニューヨークにあるウィーワークの看板。
Reuters
筆者は300年ビジョンを考えた天才ではない。だが、ソフトバンクの戦略は、自身で体験してみるとかなり場当たり的に思えた。
Koki Nagahama/Getty Images
移動、食事、働き方が大きく変わる未来は来るだろう。だが、まだ先の話。
ウーバーの自動運転車。
Business Insider/Corey Protin
(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)