宮迫博之さん、田村亮さんの緊急謝罪会見をうけ、7月22日14時から会見にのぞんだ吉本興業の岡本昭彦社長。
撮影:西山里緒
振り込め詐欺グループの宴会に参加して金を受け取ったとして、「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんが吉本興業の契約を解除された問題で、同社の岡本昭彦社長が2019年7月22日午後、東京都内で記者会見した。岡本社長は、宮迫さんの処分を撤回する考えを示した。
宮迫さんは7月20日、謹慎処分を受けた「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんとともに記者会見をしていた。
7月20日に開かれた宮迫さんと田村さんの会見。謝罪会見のはずだったが、吉本興業への不信感も語られた。
撮影:伊藤有
岡本社長は
「なによりも、宮迫くん、(田村)亮くんに、ああいう記者会見をさせてしまったことについて、2人に対して、深くお詫びを申し上げます。処分の撤回を行い、戻ってきていただける日がくるのであれば、全力でサポートをしていきたい」
と語った。
契約を解除された入江慎也さんについては、処分は撤回しない。一方で、一連の騒動を受け、岡本社長と大﨑洋会長については1年間、50%の減俸とするという。
吉本と宮迫さんらの衝突は「すれ違い」なのか
深々と頭をさげる岡本社長。
撮影:西山里緒
「それは、ぼくのいけないところ」「ぼくのダメなところ」
岡本社長は会見の中で、報道側からの質問に対して、何度もこの表現を繰り返した。
宮迫さんと田村さんの記者会見や、その後の所属芸人たちの発言から、岡本社長について、複数の「いけないところ」について指摘があった。
まず、宮迫さんが会見で、「会見したら、全員連帯責任でクビにする」と岡本社長に言われたことを明らかにした。
岡本社長の説明によれば、6月24日の宮迫さんや田村さんを含む芸人たちとのミーティングが、記者会見や受領金額などについて会話が堂々巡りしていたため、「場をなごませる」目的で「クビや」との発言をしたという。
社長は笑いを取りたかったが、社長のネタは、進退の瀬戸際にいた芸人たちにはまるで受けなかった。
撮影:今村拓馬
「会見を止めるということではなくて、本当に情けない話だが、そういうこと(筆者注:詐欺の被害者の存在)を分かっていないのかなと思って言ってしまった」
と岡本社長は説明する。
極楽とんぼの加藤浩次さんは22日、日本テレビ系「スッキリ」で岡本社長について「社員に恫喝みたいな『おい、お前ら』っていうのを言う人というのも知ってます」と述べている。
この点について、岡本社長は
「若いころは、恫喝ということは思っていませんが、強い口調で怒ったりということはありました。いまは部屋でひとりでいるんで、ないと思います」
と述べた。
「パワハラと思いますか?」と問われた岡本社長は、
「ぼく的にはそんなつもりはないが、相手がそういうふうに感じているのであればそうです」
と答えた。
「在京・在阪5社は吉本の株主やから大丈夫」発言の真意
20日の緊急会見では時折涙ながらに、謝罪の遅れを訴えた。
撮影:今村拓馬
20日の会見では、田村さんが「在京・在阪5社のテレビ局は吉本興業の株主やから大丈夫と言われた」と話し、テレビ局と大手芸能事務所のいびつな関係をうかがわせた。
その点については、小林良太弁護士が経緯を説明した。
この発言があったのは、7月11日の面談でのことだ。田村さんと宮迫さん、双方の弁護士らが出席した。
小林弁護士は、
「田村さんから会見を生中継したいという話がございました。吉本は、各局が株主でいらっしゃる。それに対して、吉本は、生中継をするとしても、どういった時間帯にするのか、というのは配慮しないといけないですよと、弊社の弁護士から先方の弁護士に伝えた」(小林弁護士)
と説明した。
2019年4月まで、吉本興業(現社名・吉本興業ホールディングス)には、社長が2人いた。
大﨑洋・現会長が共同代表取締役社長(CEO、最高経営責任者)で、岡本・現社長が共同代表取締役社長(COO、最高執行責任者)を務めていた。
4月に、当時の大﨑CEOが代表取締役を維持したまま会長になり、岡本COOが社長に就任したが、「前に出るのをきらう」(吉本興業関係者)と言われる岡本氏はメディアの前に出ず、大﨑会長が会社の顔を務める体制が続いていた。
吉本興業の大﨑洋会長。
撮影:今村拓馬
宮迫さんと田村さんが7月20日に開いた記者会見で、宮迫さんが岡本社長から「(田村さんが吉本を辞めて)会見したら、全員連帯責任でクビにする」と告げられたことを明らかにしたため、風向きが一気に変わった。会社側の立場を説明するため、岡本社長の会見は避けられない状況になった。
岡本社長は、会見を開いた狙いについて、次のように説明している。
「すべての芸人、タレント、社員が、宮迫くんと亮くんの会見を見て、不安を感じたと思います。本日はみなさんが疑問に思っていることにつきまして、正直にお話をする機会をいただきたく思う」(岡本社長)
一連の騒動で浮かんだのは、芸人と契約書を交わさず、若い芸人や社員からは「恫喝気味」ともとられる岡本社長のパワハラ気質など、旧態依然とした芸能事務所の姿だ。
岡本社長らが今後厳しく問われるのは、こうした古い姿の吉本興業を、どこまで変えることができるかだろう。
進退について問われた、岡本社長はこう答えた。
「まだまだいろんな調査がありますので、まずはこのことをやりきらないといけない。しゃべりづらい環境があるんじゃないかということも、全力で変えていくことをやらなければならない。まずは僕自身がどこまで変えられるかが大きな問題だ」
(文・小島寛明、撮影・西山里緒)