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東京在住の20〜30代の4割は地方への転職に興味があり、中でも東京都出身・東京在住の20代男性では、その割合は2人に1人に達することが、総合人材サービスのパーソルキャリアの調査で明らかになった。
少子高齢化で、地方の人口減少と経済衰退が深刻化する中、国は地方活性化を掲げ、地方移住や本社機能移転など、税金を投入して推し進めている。にも関わらず、地方移住や地方転職は大きな動きとはならず、逆に「地方から東京へ」の流れが20年以上、転入超過となっているのも事実。
地方への転職に興味をもつ若者は多くても、「東京から地方へ」が盛り上がらないのはなぜか。
ミレニアルの4割、東京都出身・在住の20代男性なら2人に1人が「地方への転職」に興味。
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地方への転職に興味のある20〜30代で、もっとも多い理由は「生活費が安い」(6割)。コスパがいいイメージだ。
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20〜30代で地方への転職に興味があると答えた人は4割もいた。その人たちに、理由を聞いた。生活コストに続いて多かったのが「満員電車に乗ることが減るため」と「自然豊かな土地で暮らせそう」が、それぞれ4割近く。
ただし、2人に1人が「交通の便」が不安と回答。4割超が給料・待遇に不安を持っている。
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地方への転職に関心があると答えた20〜30代に、不安なことを聞くと、1位交通の便、2位給料・待遇に続き、3位仕事内容(30.7%)、4位友人・知人が少ない(26.2%)、5位娯楽が少ない(25.9%)の順で多かった。
妥協しづらい点としては「地方の慣習や人付き合いに馴染めるか」「免許がない」。人間関係や日常の足に不安があるようだ。
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地方への転職で妥協できることを20〜30代の地方転職に関心層へ聞いたところ、人付き合い、免許に続いて「妥協しづらい」ことに上がったのが、「家族が一緒について来てくれるか」「子どもの教育」「遠距離恋愛できるか」。 自分以外の人が関わる部分で「妥協できない」と考える人は多いようだ。
一方、地方で働いている人で「勤務先がUIターン転職者の受け入れ対策をしている」と答えたのは、1割以下と非常に低い。
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地方で働く20〜50代のうち93.5%の人が、自分の勤務先はUIターン転職者の受け入れを「やっていない」または「わからない」と答えている。受け入れ体制が整っているとは言い難い状況が浮き彫りになっている。
地方企業で働いている人の6割が「勤務先は人手不足」だと回答。
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受け入れ態勢に課題はあるものの、多くの企業で人手が足りていない。これからますます加速する少子高齢社会で、特に若手人材が足りない傾向はさらに強まりそうだ。東京、神奈川県、千葉県、埼玉県以外で働く20〜50代に聞いた。
「地方の人手不足は深刻で、経営者の方に話を聞いても『人が集まらない』『採用できない』というのは頻繁に聞きます。とりあえず応募してくれた人はフィルターをかけず全員採用してしまうということも起こっています」
地元の静岡県熱海市に家族でUターンし、東京での編集者の仕事と並行して、地元と他地域から来た人材をつなぐサイトを運営する水野綾子さんは、調査を受け、地方への転職実態についてそう話す。そして、受け入れ側にも「変化」が必要と指摘。
「首都圏から人材を集めるには、やりがい創出や魅力的な業務の切り出しが必要になりますが、できていない企業がほとんどで、そこにも地方企業の意識改革が必要になってきます」
「地方で働く」入り口として、移住までしなくても、熱海市のように都心の人材が週末働きにくるなど、地方での仕事を「副業」にする動きも出ているという。
「都心から人材を迎えるために、受け入れ企業が自社の魅力や価値を棚卸して求人を作ることをきっかけにして、人が集まる『採用力のある企業』に変われる可能性があります」
地方で働くことへの関心は、若年層を中心に決して低くない。地方自治体や企業が、うまくこうした関心の波をつかむことができれば、人の移動の流れも大きく変わる可能性もありそうだ。
※パーソルキャリアが実施する、転職サービス「doda」は、「地方への転職」をテーマに、インターネットによるアンケート調査を実施。20〜50代のビジネスパーソ1200人が対象。調査期間は2019年4月17日〜22日。
(文・滝川麻衣子、写真はイメージです)