中国のラーメンメーカーは、「不健康」のイメージ払しょくに力を入れてきた。
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世界ラーメン協会(WINA)によると2018年の世界の即席めん販売量は1036億食で、そのうち中国市場での販売が402億5000食と全体の38.85%を占めトップだった。
2位はインドネシアで125億4000万食。3位は60億6000万食のインド。長らく3位を維持してきた日本は、57億8000万食で4位に順位を下げた。
また、米コンサルティングRies & Riesが7月に発表したレポート「インスタントラーメン業界の分析と見通し」によると、2018年の世界の1人あたり即席めん消費量は13.6食だった。国別では韓国が74.6食でトップ。2位はベトナム、3位はネパールだった。中国は29食でトップ3圏外。
2015年から市場縮小のピンチ
中国の消費力向上で、低価格帯商品は今も不振。
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どこでも即席麺を食べている「即席麺大国」のイメージが強い中国だが、実は販売量は2014年の444億食をピークに減少に転じ、2016年には385億2000万食まで減った。
2015年以降の中国市場縮小の原因は、中国人の消費力の向上とフードデリバリー市場の拡大だった。テンセント(騰訊)傘下の美団点評など業界大手がシェア拡大のために割引を乱発し、即席めん市場が浸食されたのだ。
危機感を強めた即席麺メーカーは、商品開発やマーケティングの見直しに力を注いだ結果、2018年の国内販売量は3年ぶりに400億食を回復した。
Ries & Riesのグローバルパートナー張雲氏は、「フードデリバリー市場の寡占が進み、消費者にクーポンをばらまかなくなったこともあり、イノベーションを進めてきた即席めん業界は反撃に出ている」と分析した。
今後は日韓メーカーとガチンコ対決
大手メーカーがこの数年で注力してきたのが、高級商品の開発による即席めんのイメージアップだ。「不健康」というレッテルを払しょくし、きちんとした食事として認知してもらうため、食材や製法の改善に取り組んできた。1食2~4元(31円〜62円)の従来価格帯の商品は相変わらず不振だが、7元(109円)以上の中・高価格帯商品が業界復活のけん引力となっている。
「サッポロ一番」で知られるサンヨー食品が出資する中国最大の食品メーカー康師傅(カンシーフー)の2018年の売上高は、前年比2.94%増の606億8600万元(約9500億円)で、そのうち39%を占める即席めん事業は同5.73%成長し、239億1700万元(約3750億円)だった。同社の業績は2015年、2016年と悪化したが、2017年以降回復軌道に乗り2018年の売上高は2014年水準まで戻った。
中低価格の袋麺は売り上げは減少したものの、高価格帯の袋麺が10.61%伸び売上高に大きく貢献したほか、カップ麺も5.5%伸びた。
康師傅はアニメキャラクターとのタイアップした商品や、栄養バランスに配慮した商品も次々と発売している。
業界大手の統一中国も、中高価格帯の「湯達人」がヒットし、2018年の即席めん事業の売上高が同5.7%の84億2500万元(約132億円)となった。
このほか、一時期日清食品グループと提携していた今麦郎は、2018年に日本で新商品発表会を開催。日本市場への進出意向を表明した。
張雲氏は「中国の即席めんメーカーは、成長を続けるためには中国市場を脱出しなければならない。今後は日本、韓国メーカーとの戦いが避けられない」とコメントしている。
(文・浦上早苗)