大人の質問に言葉をしっかり選びながら答える子ども(動画に登場するのはいずれも東京都内の小学5年生)。
提供:ユーグレナ
藻の一種ミドリムシや廃食油を主原料に、日本初の国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化に取り組むユーグレナが7月23日、突如として「未来の大人たちに聞いてみた。」と題した1本の動画を公開した。
カメラの前の子どもが、大人の問いかけに静かに答える。
大人「いま、みんなが生きてる世界と未来の世界って、どっちが幸せな世界になるかな?」
子ども「まあ、こっちの(いま生きてる)世界ですね」
大人「それはどうして?」
子ども「あの、いままだ止められる状況なんですけど、その、未来になると、もう手遅れっていう感じになるから」
環境問題についても、こんなやり取りが続く。
大人「地球温暖化ってさ、目に見えないでしょ?目に見えないものなのに、何でそんなに問題だって自分で思えるのかな?」
子ども「子どもは感性豊かで何でも想像がつくけど、大人は想像力が子どもよりちょっと鈍いって感じがすると思います」
ユーグレナが公開した動画。公開日の7月23日は、2018年に埼玉県熊谷市で41.1℃を観測し、日本の観測史上最高気温記録を更新した日だ。
提供:ユーグレナ
このストレートで耳の痛い問答は、ユーグレナ副社長の永田暁彦さんと小学生たちとの間でかわされたものだ。上の動画では、このやり取りのあとも複数の小学生たちが登場し、地球の未来を憂い、自分たちの手で明るい未来をつくり出したいと、気丈に語る。
投票日に直営店を一斉休業した企業
参院選の投票日(7月21日)、パタゴニアはすべての直営店を休業した。写真はパタゴニア鎌倉店の当日の様子。
撮影:川村力
最近、別の企業がやはり突如として打ち出した取り組みが、SNSなどを通じて拡散されて大きな話題を呼んだ。
アウトドア製品で知られるパタゴニアが、7月21日の参院選投票日にすべての直営店を休業することを発表したのだ。
同社によると、2016年の参院選と2017年の衆院選でも投票を呼びかけるキャンペーンは行っていたが、売上減を伴う直営店の一斉休業は初の試み。2018年末に掲げられた新たなミッション「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」のもとで考え出されたプロジェクトという。
同社の一部店舗では、政治や社会問題について語り合う「ローカル選挙カフェ」も開かれた。参加者たちはカフェでの議論に心を動かされたことをTwitterに記している。
「パタゴニアの選挙カフェに行って、一緒に話した方々と『今、私達大人が議論をしていく場を残していかないと、子どもたちの足枷(あしかせ)になってしまう』と想いが皆あるんだと知った」
地方新聞社の社員からもこんな声が。
「パタゴニア日本支社福岡店のローカル選挙カフェに私も個人的に参加しました。共感もあり、発見もあり、意味のあるやり取りもあり。うちも何かをしていかなくては。低投票率だから、ではなく、責務として」
未来の大人たちに選ばれる企業とそうでない企業
未来を生きる子どもたちと、私たちは真剣に向き合えているだろうか。
Ippei Naoi/Getty Images
ユーグレナは冒頭の動画の最後で、こんな宣言をしている。
「断言します。私たちの会社は、未来を生きる子どもたちのためにあります」
同社は動画の発表と同日、バイオジェット・ディーゼル燃料製造の実証プラントを置く横浜市と協定を結び、「バイオ燃料地産地消プロジェクト」に取り組むことを明らかにした。環境負荷の低い微生物由来のバイオ燃料の普及啓発をうながすとともに、プラント見学や出前授業を通じた小学生の環境意識を醸成するという。
あなたの会社は、足もとの景気に右往左往して「企業を存続させるための企業」であり続けるのか。それとも、ユーグレナのうたうような「未来を生きる子どもたちのための企業」を目指すのか。
直近の決算期で「上場中堅の4社に1社が最高益」(日本経済新聞、2019年4月15日付)という景気に浮かれるいま、実は、未来の大人たちに選ばれる企業とそうでない企業の二極化が進んでいる気がしてならない。
(文:川村力)