イギリスの新首相、ボリス・ジョンソン氏が就任まもなく直面する5つの大問題

ボリス・ジョンソン氏

ボリス・ジョンソン氏。

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  • イギリスでは、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)氏が保守党党首選挙を制し、メイ首相に代わって新首相に就任する。
  • 前外相のジョンソン氏が、現外相のジェレミー・ハント氏に勝利した。
  • 10月31日に期限が迫る欧州連合(EU)離脱など、ジョンソン氏には取り組むべき問題が山積している。
  • イギリスの新首相が直面する5つの最大の問題とは?

1. ブレグジットの再交渉

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Samantha Lee/Business Insider

ボリス・ジョンソン氏が直面する最大の喫緊の課題は、メイ首相を辞任に追いやった「ブレグジット(EU離脱)」だ。

ジョンソン氏は、EUの首脳たちの「目を見て」、メイ首相がEUと合意した離脱協定を再交渉すると約束している。

EU側の首席交渉官ミシェル・バルニエ(Michel Barnier)氏や複数のEUの首脳たちは、合意済みの離脱協定の再交渉はないと繰り返し述べていて、ジョンソン氏の強硬なスタンスはイギリスを「合意なき離脱」に向かわせると警告してきた。

保守党議員の一部は、これは"はったり"で、メイ首相は失敗したが、ジョンソン氏なら実現できると考えている。

あるブレグジット推進派のベテラン議員は、「メイ首相は、真剣に再交渉しようとしなかった」と、Business Insiderに語った。

メルケル首相、マクロン大統領

ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領(2017年6月29日)。

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だが、懐疑的な声もある。

6月、ブリュッセルでEU加盟国の代表らを訪問したある保守党議員は、「どんな形でも再交渉の可能性を示唆した国は1つもなかった」と、Business Insiderに語っている。

もしジョンソン氏がEUとの再交渉に成功しても、イギリス議会で離脱協定案を通すのは恐ろしく困難だろう。メイ首相は何度もそれに失敗していて、どんな協定案なら合意できるのか見通しがつかない。

2. 「合意なき離脱」への準備

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Samantha Lee/Business Insider

こうした状況から、「合意なき離脱」の可能性が高まっている。ジョンソン氏は10月31日の離脱について、「死ぬ覚悟でやる」と強調している。

同氏は、実際的な必要性としても、交渉戦術としても、イギリスは合意なき離脱に備えるべきだと述べている。

とはいえ、ロジスティクス面でも政治面でも、合意なき離脱に備えるのは、非常に難しそうだ。

Business Insiderが6月に報じたように、合意なき離脱の準備に必要な倉庫の多くのスペースは、すでに埋まっている。

また、ブレグジットの準備を担当する政府の部署は、ここ数カ月、ベテランスタッフの流出に苦しんでいる。

シンクタンク「Institute for Government」のジョー・オーウェン(Joe Owen)氏は、次の首相は「就任後すぐに、3月よりも10月(の離脱)に向けた準備ができていないという大きなリスクに気付く」だろうと、Business Insiderに語った。

3. 総選挙への準備

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Samantha Lee/Business Insider

イギリス議会は、EUとの「合意ある離脱」も「合意なき離脱」も、どちらも繰り返し否決してきた。

ジョンソン氏が何があってもブレグジットを実現すると約束していることを考えると、最終的には総選挙をするしかなくなるかもしれない。

だが、保守党議員はそれを全く望んでいない。世論調査での政党支持率は、歴史的な低さを記録していて、5月の欧州議会議員選挙でも惨敗している。

それでも、混沌としたブレグジットのリスクと総選挙の間で、どちらかを選ばなければならない状況になれば、議会は後者を選ばざるを得ないだろう。

ある保守党議員は、「近く総選挙が行われるとしたら、それは政府が失敗したときだ」と語った。

だが、7月に入って、ジョンソン氏の側近が早い時期の総選挙に向けて準備をしていると報じられた

ある選挙関係者は、「できるだけ早期に、党を戦いのモードに入れる必要がある」と、The Timeに語った。

4. イギリスの"財布"を開く

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Samantha Lee/Business Insider

メイ首相が就任したとき、首相は所得の不均衡や手頃な住宅の不足、社会保障の危機といった「差し迫った不公平」に取り組むことを約束した。

だが、こうした課題に取り組む代わりに、メイ首相の在任期間の大半はブレグジットが占め、後世に語り継がれるような功績を残せなかった。

同じようなミスを避けたいジョンソン氏は、すでに大胆かつ"金のかかる"国内政策を打ち出している。

同氏は、高所得者の減税や砂糖入り飲料に対する課税の廃止、2020年までに警察官を2万人増やすことを約束している。

だが、こうした"金のかかる"約束は、非現実的だとして批判されている。

フィリップ・ハモンド氏

フィリップ・ハモンド氏。

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ジョンソン氏が首相就任なら財務相を「辞任する」としていたフィリップ・ハモンド氏は、合意なき離脱によるダメージによって、このような約束を果たすための経済的余裕はなくなると警告。イギリスの財政問題研究会も、ジョンソン氏の計画を批判している。

5. トランプ大統領への対応

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Samantha Lee/Business Insider

ジョンソン氏には外相として、アメリカのトランプ大統領に対応した経験があり、個人的にも良好な関係を築いているようだ。

トランプ大統領はこれまでジョンソン氏を繰り返し称賛。先週は、イギリスの新首相とは「良い関係」が築けるだろうと期待を示していた。

ジョンソン氏も、トランプ大統領には「数多くの良いところ」と「トークのセンス」があるとして、称賛してきた。

ジョンソン氏は首相就任後、早い段階でアメリカを訪問する見込みだ。

だが、トランプ大統領は予測不可能だ。メイ首相とキム・ダロック(Kim Darroch)駐米大使への攻撃は、二国間の関係を悪化させ、深刻な外交危機を生んだ。

[原文:5 big problems Boris Johnson has to deal with on his first day as prime minister]

(翻訳、編集:山口佳美)

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