Reuters/Pilar Olivares
- モルガン・スタンレーが7月下旬に出したレポートによると、地球温暖化は命にかかわるような熱帯病のまん延をもたらし、新たなワクチンに対するニーズを高めそうだ。
- アナリストは、温暖化の進むペースや深刻度によって、ジカ熱やデング熱、その他の熱帯病の感染リスクにさらされる人が、2050年までに3億8300万人から7億2500万人増える可能性があると指摘する。これらの病気と戦うには、500億ドル(約5兆5000億円)から1700億ドル相当のワクチンが必要になるという。
- モルガン・スタンレーは、こうした病気との戦いで最も有利なのはサノフィとグラクソ・スミスクラインで、モデルナや武田薬品工業、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門ヤンセンファーマ、ファイザーも大きな役割を果たすだろうとしている。
モルガン・スタンレーが7月下旬に出したレポートによると、地球温暖化は感染症のまん延をもたらし、製薬会社に「重要な役割」を与えそうだ。
レポートは、蚊を媒介して広まるジカ熱やデング熱、黄熱病といった熱帯病の感染リスクにさらされる人が、2050年までに3億8300万人から7億2500万人増える可能性があると指摘した。中でも、蚊の増加による新たな感染症や伝染病の影響を最も受けやすいのはヨーロッパで、2050年までに約4億人が蚊が媒介する熱帯病の感染リスクにさらされるようになるという。
気候変動に関する4つのシナリオが詳しく述べられているこのレポートで、アナリストはこうした病気と戦うには、500億ドルから1000億ドル相当のワクチンが必要になるとしている。さらに複雑なワクチンが必要となれば、そのコストは830億ドルから1700億ドルに達する見込みだ。
レポートによると、気候変動関連の災害はすでに過去3年間で6500億ドルの経済損失を出している。
モルガン・スタンレーは、同社が注目する製薬会社7社を挙げ、これらの企業が既存のパイプラインやこれまでの成功をもとに、いかにしてワクチン開発に貢献できるか分析した。
1. サノフィ
レポートは、サノフィがすでに主な熱帯病に対する治療薬の開発を進めていて、その流通に必要な製造資本も持っているとしている。
2. グラクソ・スミスクライン
サノフィ同様、グラクソ・スミスクラインもすでに主な熱帯病の治療薬を開発中で、大規模な生産能力が必要だ。
3. モデルナ
レポートによると、モデルナはその比較的小さな規模を強みにしている。同社の開発プロセスは早く、ジカ熱やチクングニア熱の治療薬用に使えるパイプラインがあると示している。
6. ヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門)
ヤンセンファーマには、米保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)との長年にわたる関係があり、エボラ出血熱のワクチン開発に成功している。同社には治療薬の大規模な生産能力があるが、現在はレポートで名前の挙がった主な熱帯病に関する研究パイプラインをほとんど持っていない。
7. ファイザー
モルガン・スタンレーによると、ファイザーには開発中の熱帯病ワクチンはないようだが、パイプラインをスタートさせるだけのリソースはある。同社はその時価総額で業界トップだ。
(翻訳:露原直人、編集:山口佳美)