グーグルのディープマインド買収は「非道」…… テック大手による独占に待ったをかける科学者が語った

ドミニク・ウィリアムズ氏

ドミニク・ウィリアムズ氏。

Monica Semergiu

  • ドミニク・ウィリアムズ(Dominic Williams)氏は、インターネットの基礎となるソフトウエアを"改革する"ことでテクノロジー分野の起業家がテック大手と競えるよう支援することを目指す非営利団体 「ディフィニティ(Dfinity)」の創業者でチーフ・サイエンティストだ。
  • これを達成するためにディフィニティは、ウィリアムズ氏が「インターネット・コンピューター」と呼ぶ、インターネットをより効率的でセキュア、かつ起業家にとって使いやすいブロックチェーン基盤のクラウド・コンピューティング・プラットフォームを構築している。これは理論上、アマゾンのクラウド・サービス「AWS」に匹敵するものだ。
  • その価値は20億ドル(約2100億円)ともいわれるディフィニティは、ベンチャーキャピタルの「アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)」といった投資家たちから、2億ドル近くもの資金を調達したという。
  • テック大手に対する規制についてウィリアムズ氏は、こうした大企業への規制は失敗してきたとの考えを示し、2014年のグーグルによる人工知能開発会社「ディープマインド(DeepMind)」の4億ポンド(約520億円)での買収は、「非道な行為」だとBusiness Insiderに語った。

テクノロジー分野の起業家にとって、インターネットをよりアクセスしやすいものにしたい —— これを目指す価値20億ドルの非営利団体の創業者は、2014年のグーグルによるディープマインドの4億ポンドでの買収は「非道な行為」だと語った。

非営利団体「ディフィニティ」の創業者でチーフ・サイエンティストのドミニク・ウィリアムズ氏の大きな目標は、自身が「インターネット・コンピューター」と呼ぶものを構築することだ。インターネット・コンピューターは、ブロックチェーン基盤のクラウド・コンピューティング・プラットフォームで、インターネットをより効率的でセキュア、かつテック分野のスタートアップにとって使いやすいものにすることを目指している。

ディフィニティの本部はスイスのツークだが、アメリカとドイツにも研究センターがある。

ウィリアムズ氏は、インターネット・コンピューターがあれば、テック分野のスタートアップが自身のインターネット・サービスを構築するのにテック大手のAPIを必要としなくなると言う —— これは現状では「ほぼ不可能」だ。これによって、スタートアップがテック大手と競争しやすくなると、同氏は指摘する。

ディフィニティはインターネット・コンピューターを2019年初めにリリースする計画だったが、リリース日を延期した。ネットワークのテストは年内にスタートさせる予定だが、フルバージョンの発表は2020年にずれ込むだろうと、広報担当者はBusiness Insiderに語った。

グーグルによるディープマインドの買収は規制当局のミス?

アメリカにおけるグーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)といったテック大手への規制強化についてBusiness Insiderが尋ねると、ウィリアムズ氏は「規制する側が自分たちが何をしているか分かっていない。彼らはテック大手の友達だ」と語った。

「グーグルにWazeやディープマインドを買収させるべきでなかった —— どういうわけか同社は、数十億、数百億相当の価値があったディープマインドを4億ポンドで買収することができた。フェイスブックにも、インスタグラム(Instagram)やワッツアップ(WhatsApp)を買収させるべきでなかった」

ディープマインドの共同創業者たち

ディープマインドの共同創業者たち。左から、ムスタファ・スレイマン氏、デミス・ハサビス氏、シェイン・レッグ氏。

DeepMind

「ディープマインドは大きかった。グーグルはディープマインドを4億ポンドで買収した。その価値は数百億ドルとも言われていた。彼らがどうやって買収を成し遂げたのか分からない。まさに非道な行為だ」

「シリコンバレーで4億ポンドがどれだけのものか、考えてみるべきだ。間違いなくジョークだ。イギリスは、莫大な税収を失った」

「ディープマインドは、イギリスのグーグルになれたかもしれない」

ウィリアムズ氏はまた、グーグルによるディープマインドの買収は、ディープマインドがヨーロッパにおけるグーグルの代わりになることを防ぎ、グーグルの力を確固たるものにしたと考えている。

「最大の悲劇は、ディープマインドがこの巨大テック企業をヨーロッパから追い出せただろうということだ」と同氏は言い、「ディープマインドはイギリスのグーグルになれたかもしれない。だが、グーグルはディープマインドを4億ポンドで手に入れた」と語った。

「つまり、規制当局は機能していないということだ。EU一般データ保護規則(GDPR)ですら、テック大手を止められない。これは銀行に少し似ているかもしれない。銀行は規制当局がいつ規制を強化するか知っていて、銀行だけがそれに従うためのリソースを持っている。そして守りを固める」

ウィリアムズ氏

DFINITY

ウィリアムズ氏は続けた。

「今の規制当局はテック大手の周りに城を守るための堀を作っている。意図してではない。良かれと思ってやっている。だが、テック大手はそれを自分たちを守るために使うだろう。わたしたちはソフトウエアを作り直すことがその解決策になると考えている。テック大手にとっての真の脅威は競争と他のテクノロジーであって、規制ではない」

「(規制当局は)フェイスブックによるワッツアップの買収を止める、フェイスブックによるインスタグラムの買収を止める、グーグルによるWazeの買収を止める、グーグルによるディープマインドの買収を止めるといった、やるべきことをやっていない。今後も彼らはすべきことを何もしないだろう」

「テック大手と競合すれば、テック大手がルールを変えて、競合できなくなる」

ウィリアムズ氏はまた、「FarmVille」や「Texas HoldEm Poker」といったソーシャルゲームで知られる「ジンガ(Zynga)」を、テック大手が成功したスタートアップを支配するもう1つの例として挙げた。2011年にIPO(新規株式公開)がうまくいき、その価値は約70億ドルに達したジンガだが、株価はその後9カ月で85%値下がりした

「大手VCの支援を受けてIPOしたとはいえ、フェイスブックがルールを変更し、APIへのアクセスを無効にすると決めた時、ジンガには身を守る術がなかった」と同氏は語った。

ジンガはフェイスブックと親密な関係にあったが、2012年にフェイスブックがジンガを他のゲーム開発者会社と同じように扱うと決めたことで、両社の関係は変わった

ウィリアムズ氏は「(構築中の)インターネット・コンピューターは、APIを保証する手段を提供するものだ」とし、「これがなぜ重要かと言えば、今日、テック大手のAPIに依存することなく新たなインターネット・サービスを生み出すのはほぼ不可能だからだ。だからこそ、テック大手による地固めが進んでいるとわたしたちは見ている」と続けた。

「テック大手と競合すれば、テック大手がルールを変えて、競合できなくなる。テック大手の上にサービスを構築すれば、テック大手に所有されるということだ」

[原文:The scientist who's built a $2 billion nonprofit to end big tech's monopoly says DeepMind’s sale to Google was 'an outrage’]

(翻訳、編集:山口佳美)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み