「分刻みで時間がない」“宙ぶらりん”議員次々勧誘、勢いづくN国の戦略とは

NHK

「NHKをぶっ壊す」の一言で、参院選を戦い抜いたNHKから国民を守る党(N国)。勢力拡大を虎視眈々と狙う。

Shutterstock/ Mirko Kuzmanovic

「NHKをぶっ壊す」

イデオロギーでも経済政策でもないこの一言で参議院に議席を獲得した、「NHKから国民を守る党」(N国)の拡大が止まらない。

議席を獲得した代表の立花孝志氏だけでなく、北方領土をめぐる発言で日本維新の会を除名になった丸山穂高衆議院議員が入党に合意。他にも数人の国会議員に入党を呼びかけている。

果たしてN国は、この先どこに向かうのだろうか。

立花代表とは何者か

参院選

先の参院選で、“想定外”の台風の目となったのがN国とれいわ新選組だった。

Reuters/ Issei Kato

「NHKにお金(受信料)を払わない方を全力で応援・サポートする政党(政治団体)です」と掲げて政治活動をするN国。立花氏は意外にも元NHK職員だ。本人が公開しているプロフィルによると、1986年にNHKに入局後、「不正経理を内部告発」し、2005年に退職。2013年に政治団体「NHKから国民を守る党」を設立している。

立花氏は2015年に千葉県船橋市議会議員選挙に当選、その後、2016年東京都知事選に立候補して落選。2017年に東京都葛飾区議選に当選し、2019年6月、大阪府堺市長選への立候補と落選を経て、今回参議院に議席を獲得した。そのほか各地方議会議員に計27人の議員が在籍している。

「ちなみに、すべての選挙は売名が目的となります。その目的が、当選ではなくていいのです。政治的な売名ならOKです。商品の宣伝などの売名はダメなのです。」

選挙への立候補について、立花氏は堺市長選に立候補した際にTwitterで、「すべての選挙は売名が目的となります」と語っている。任期中に別の選挙に次々立候補して、自動失職を繰り返す姿勢には有権者からの信託を蔑ろにしているという批判も巻き起こるだろう。

しかし、その「売名活動」が今回の参院選で実を結んだ。本人の当選だけでなく、選挙区における2.0%の得票率を達成し、政党要件を満たしたという事実が存在する。

「私怨」か「ジャーナリズム」か

N国ホームページ

N国ホームページでは、NHKからの3つの被害を掲げている。

公式ホームページからキャプチャ

あるNHKのOBは「立花氏がNHKを敵対視するのは私怨にほかならない」と公私混同であると批判する。立花氏がNHKに対して異様に執着していることは事実だ。

一方で、立花氏は「ジャーナリスト」を自称し、HPなどでNHKの問題を公表している。

N国のHPではNHKからの3つの被害として、受信料の支払いによる「経済的被害」、不払い者に対する集金による「精神的被害」、NHKの放送内容による「情報的被害」を掲げる。NHK職員による不祥事も列挙し、NHK職員の給与の高さを指摘するなど、「NHK受信料不払いを薦める理由」を8項目にわたって述べている。

今回の参院選では、希望者はNHKの電波の供給しない「スクランブル放送」の実施という1点を強調して訴えたが、これまで各地方議会では「NHK集金人」の個別訪問を禁止する条例を制定することも掲げている。条例を定めることで「安心してNHK受信料を不払いできる。安心で安全な街づくり」を成し遂げるという。

「情報的被害」は「公共放送なのに国営放送のような放送」や「反日的な報道」という問題の定義が曖昧な項目を掲げ、一部の番組や職員、集金の問題をNHKという局全体の問題として拡大してしまっている。

5人以上議員でNHKに出演

参院選

NHK改革に争点を絞った選挙戦を展開。過激な発言を繰り返す政見放送も注目を集めた。

撮影:今村拓馬

注目を集める過激な発言は、参院選での政見放送でも繰り広げられた。

立花氏は、週刊誌が報じたNHKアナウンサーの不倫疑惑を「不倫路上カーセックス」と7回繰り返して批判するなど、党名を含めて「NHK」を90回、うち「NHKをぶっ壊す」を18回述べて、NHKの受信料のみに争点を絞ったワンイッシュー型の選挙戦を展開した。

参院選後には「北方領土を戦争で取り返す」と発言して日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員に接触。丸山氏はN国への入党を決めた。

「ワンイシュー政党にてNHK改革以外は採決も行動も発言も全て自由で一切拘束なし。他の政策は独自に動きつつ、NHKの既得権をぶっ壊す、この一点で入党要請を受け共闘。そして、NHKの既得権と戦争へ。国会で一番自由な政党、それがN国かと。詳細は全公開の記者会見動画や文面、要約記事等をご確認下さい。」

無所属の渡辺喜美参院議員とも院内統一会派を結成。さらに秘書への暴行疑惑などで自民党新潟県連から除名処分を求められている自民党の石崎徹衆院議員ら、無所属を中心とする議員に「NHK改革」のみを条件に入党を打診、党勢拡大に余念がない。その背景には所属議員が「5人以上ではないと出られない」とするNHKへの出演という願望がある。

生活保護問題も公約

貧困層

N国はNHKl改革の他にも「生活保護費は現金支給から現物支給へ」という公約も掲げた。貧困問題へも取り組むのだろうか(写真はイメージです)。

Getty Images/ Koichi Kamoshida

実はN国が掲げた公約には、NHK以外のものも存在する。それは「生活保護費は現金支給から現物支給へ」というもの。生活保護者を「公共の施設」に入居させるとしているが、財源の捻出や生活保護受給者の自立などが問題になるだろう。

さらに、党名についても「いずれは『NHKから』をはずして、『国民を守る党』にしてまいります」としているものの、何からどのような手段で国民を守るのかということは明言されておらず、今後、安倍政権の最大の政治課題になる憲法改正についても、態度を明確にしていない。

一方、政見放送ではこんな発言も。

NHKに対する批判を収め、森友学園問題に言及した際、自らの「心の病」の経験から「しんどいときは休んだらいい」と述べ、政治家の姿勢を批判しつつ、政治家に必要な要素は「正義感、責任感、使命感」とした。

大手メディアの関係者をして「想定外」と言わしめた当選で活気づくN国。政党となった彼らのゴールや手法はまだ見えない部分が大きい。

立花氏は筆者の取材申し込みに対して、「さまざまなメディアが注目してくれている」とし、「分刻みのスケジュールでお盆明けまで取材を受ける日程すらつくれない」と答えた。

政党要件を得て拡大を狙うN国の行方は、もはや無視できるものではない。


竹内一紘:フリーランス記者。東京大学工学部都市工学科卒。元産経新聞社記者、自由民主党衆議院議員秘書。2017年の総選挙では希望の党の候補者を支援。著書に『希望の党の“あとに残った希望” 小池百合子「排除」の真相』。

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