福岡のショッピングモールで、モバイルオーダーの実証実験が行われる。
撮影:小林優多郎
LINE Fukuokaは、8月1日から福岡市西区にあるショッピングモール「木の葉モール橋本」内にあるフードコートにおいて、席などで自分のスマートフォンを使って注文・決済まで完了する「モバイルオーダー」の実証実験を行う。
同社は過去にも「G20福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議」に合わせて行われたイベントでも同様の機能のトライアルを行っているが、民間施設での継続利用を見据えたモバイルオーダーの実験は今回が初めて。
実証実験は2つのフェーズに分けて行われる。支払いはLINE Payが使われる。
スタートの8月1日から当面、木の葉モール橋本の管理事務所の関係者100人が利用できる予定。その後、8月末から10月末までには、木の葉モール橋本で働く全従業員約1500人に拡大する見通し。
木の葉モール橋本の支配人を務める宮崎喜彦氏は、本格導入の時期について、実証実験の結果次第となると前置きをした上で、「目標としては11月か12月頃には本格導入(一般の来場者に提供できる形)にしたい」と話している。
一般のユーザーが触れられるようになるまでには、まだ時間がかかるが、筆者はいち早く木の葉モール橋本でのモバイルオーダーを試す機会を得た。実際の利用イメージを見てみよう。
必要なアプリはLINEアプリだけ。モバイルオーダー用のアカウントを友だちに登録する
実証実験中は、対象のユーザーにしか開放されない。
当初対応するのは2店舗のみ。今後、券売機導入店を除く全フードコート店舗への導入を予定
店舗ボタンの上側では、各店舗の混雑状況もチェックできる。
各店舗3つの商品に限り注文可能。商品アイコンをタップするとセットの詳細が見られる
商品の数は実証実験の進行や本格導入時に適宜変更される。
数量や持ち帰りかどうかを選ぶと、合計金額が表示される。問題なければ支払いへ
支払いはLINE Payで。指紋や顔などの生体認証を登録していれば、パスワード入力も不要
支払い元としてはLINE Pay残高もしくはLINE Payボーナス、LINEポイントが利用できる。
商品の準備が整うと通知が届くので、店頭まで取りにいく。待っている間は席を取っておいたり、水を用意したり自由に過ごせる
地域に根ざした施設として顧客満足度向上を目指す
実験が行われた木の葉モール橋本。
このようなモバイルオーダー(テーブルオーダーとも言われる)仕組みは、既に中国などでよく使われている方式だ。
日本でも、阪急うめだ本店で「微信支付(WeChat Pay)」を用いた訪日中国人向けのモバイルオーダーが開発されており、日本語がわからない客もしくは外国語がわからない店員の間にある、言語の壁を取り除くソリューションとしても注目を集めている。
一方、今回のLINE Fukuokaと木の葉モール橋本の取り組みは、完全に地元住民向けの施策となる。支配人の宮崎氏はこのような実験を進める狙いは、「行列によるお客の満足度の低下と機会損失の防止」「店舗側の注文決済オペレーションの効率化」だと話す。
取材日は猛暑で、またキャンペーンも行われていたこともあり、フードコート内のアイスクリーム店(実証実験の対象外)には長蛇の列ができていた。
実際にモバイルオーダーを試すと、待ち時間はその時の店の状況に応じて発生するが、注文と決済は手元で済んでしまうため、その時間はイートインであれば席を探したり、テイクアウトであっても他の店を見るのに使ったりなど有効活用できた。
まだ実証実験のため、店舗のオペレーションや操作画面のわかりやすさなど、改善の余地はあるが、だんだんとこなれていくだろう。
木の葉モール橋本は、LINE Fukuokaと手を組んだ理由として、すでに同施設のLINE公式アカウントに4万1000人の友だち登録があり、その導線を利用して「モバイルオーダーもスムーズに浸透させることができるのでは」(宮崎氏)と考えたからだとしている。
今後、約4~5カ月間の実験期間を経て、日本流のモバイルオーダーがどのような形になるか、注目したい。
(文、撮影・小林優多郎 取材協力・LINE Fukuoka)