ヤフーは8月2日、2019年度第1四半期決算を発表した。
撮影:伊藤有
子会社のオフィス用品大手アスクルの経営権問題で揺れるヤフーが、2019年度第1四半期決算を発表した。
・売上収益は前年同期比プラス2.9%の2386億円
・営業利益は同マイナス24%の361億円
・四半期利益は同マイナス14.7%の278億円
渦中のアスクル(21億円)と広告(18億円)の売上増が貢献し、売上収益は前年同期比67億円のプラスとなったものの、減価償却費と販売促進費、エンジニアを中心とした新卒採用による人件費の増加を受け、営業減益となった。
ヤフーは「第1四半期の減益は、前年同期の特殊要因(=IDCフロンティアの売却益79億円が計上されたことを指す)の反動があるため、想定済み」と説明している。
ヤフーが8月2日に発表した、2019年度第1四半期決算。
出典:ヤフー決算発表資料より編集部キャプチャ
ヤフー2019年度第1四半期決算のうち、営業利益の増減理由。
出典:ヤフー決算発表資料より編集部キャプチャ
また、ヤフーが事業譲渡を求め、アスクル経営権問題の引き金になったとされる個人向け通販サイト「LOHACO(ロハコ)」については、取扱高が前年同期比マイナス6%だった。
4月25日に発表した2018年度通期決算と基調は変わらず、アスクルの売上収益と広告関連の売上収益が伸びたものの、販売促進費や減価償却費、人件費がかさみ、増収減益という結果となった。
アスクルの「V字回復」
一方、7月3日に発表されたアスクルの2018年度(2019年5月期)通期決算は、物流施設の火災や新規立ち上げにかかわる減損、宅配クライシス(EC荷受量増加と人手不足を受けた配送費の値上げなど)に苦しんだものの、営業利益は前期比プラス7.8%の45億2000万円、当期利益は前期比マイナス90.7%ながら4億3400万円の黒字を確保。
アスクルが7月3日に発表した、2018年度(2019年5月期)連結決算の概要。
出典:アスクル決算発表資料より編集部キャプチャ
さらに、2019年度(2020年5月期)の業績は、営業利益で前期のほぼ2倍となる88億円、当期利益が54億円と、火災発生以前の水準を上回る躍進が見込まれている。
アスクルが7月3日に発表した、2019年度(2020年5月期)連結業績の見通し。
出典:アスクル決算発表資料より編集部キャプチャ
ヤフーは2019年度通期の業績について、前年度比で増収増益の見通しを明らかにしているが、上記のように大幅な増収増益を見込むアスクルとの関係を今以上にこじらせると、目算が狂うおそれもあるのではないか。
ヤフーの2019年度通期業績見通し。
出典:ヤフー決算発表資料より編集部キャプチャ
なお、決算発表会でヤフーは、アスクルについて「十分な数の社外取締役を迎え、新体制による早急な業績の回復を望む」と言及。決算会見と同日に都内で開かれた、アスクルの定時株主総会での、岩田彰一郎社長の退任を受けた発言とみられる。複数報道によると、アスクルの筆頭株主であるヤフーは、業績低迷を理由に、岩田社長と独立社外取締役3人の再任に反対、再任案は否決されている。
(文:川村力)