今村拓馬
言うまでもありませんが、面接は「相互評価」の場です。
たまに勘違いした人事や経営者が「こちらが選ぶ側」という態度で来たりしますが、優秀な人であればあるほど引く手数多(あまた)なわけですから、そんな会社は選ばれることなく辞退の憂き目に遭うことでしょう。
逆に転職者の側から言えば、受かろうとすることばかりに必死になるのではなく、相手の企業が自分の人生を賭けるに足るのかを「見抜く場」としても活用しなければなりません。
転職では最も避けるべきことは「間違って合わない会社に入ってしまうこと」なのですから。
面接の「最後の質問」で見抜こうとしてませんか?
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さて、それでは企業の体質を見抜くためにどこを見ればよいのでしょうか? 面接には質疑応答の時間があります。一般的にはそこで聞けばよいと思うはずです。
しかし、企業側は候補者からの質問に対して「どのように回答するか」訓練をしてますから、本音かどうかはわかりません。ありのまま良いことも悪いことも候補者に事前に伝えることによって、ミスマッチを防ごうとするRJP(Realistic Job Preview)の考え方も普及して久しいですが、とは言え、この採用難時代においてはどうしても企業側もアピールしたくなるのが人情です。
「無意識に現れるモノ」こそが本質
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むしろ、企業側が気を抜いているところ、あまり意識していないところにこそ、その企業の本質、体質が現れます。
大きな傾向で言えば、「言葉よりも行動」、「表情よりも身体の動き」、「内容よりも形式」、「意味よりも声の高低やスピード」などなど。どれも前者よりも後者の方が意識しにくい、つまりコントロールしにくいものです。
コントロールしにくいところだからこそ、普段からの「素」が出てしまうということです。では、具体的に注目すべきポイントを3つ挙げてみたいと思います。
ポイント1:社員同士の会話の内容
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企業担当者は現時点では社外の人である候補者に対しては当然ながら細心の注意を払って対応をします。礼儀正しい丁寧な言葉遣いをするでしょうし、親切にいろいろ情報提供してくれることでしょう(してくれないなら論外ですが)。
しかし、それは社内で担当者達が普段交わしている会話ではありません。候補者が知りたいのは「職場での会話」ですから、面接における会話は参考になりません。
職場を垣間見ることができるのは、社員同士の会話です。面接官と受付との会話、複数面接官がいた場合、面接官同士の会話、出迎えやお見送りの最中に出くわした上司や同僚や会話や対応……などです。
ものすごく丁重な人が、後輩にはぞんざいだったり、すれ違った社長にはやたらペコペコしていたなら、それがおそらく本質です。
ポイント2:面接官の時間の使い方
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面接ギリギリに登場したり、遅刻したりしていないか。自己紹介やアイスブレイク(候補者の緊張緩和のために行う何気ない会話)をきちんとしているか。
質問に対して回答するまでにどの程度待ってくれるのか、それともせっかちにせかすのか。
最後の質問の時間は十分に取ってくれているか。これらの時間の使い方は、質問内容よりは意識していない場合が多く、体質の情報源です。
どの会社も「うちは人を大切にしている」と言いますが、本当にそうしているかは時間の使い方で分かります。人生とは時間であり、人を大切にするとは相手のことを考えて時間を使うということです。
自己中心的に時間を使う面接官がいる会社は、社内でも人を利用する対象としか見ていない可能性もあります。
ポイント3:企業特有の「方言」
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最後の注目点は、その企業特有の「方言」です。
文化の強い企業であればあるほど、ジャーゴン(その集団の中だけで通用する特殊な言葉。いわば企業内の方言)をたくさん持っています。そして、中にいる人はそれがジャーゴンであることに気づきません。
まず「ジャーゴンが多いかどうか」で、文化の強い会社かどうかがわかります。ジャーゴンが多いと、一枚岩的な一体感がある一方で、やや排他的で自己中心的なところがある、などです。
また、ジャーゴンにまでなるものは、その企業で重要視されていて繰り返し使われていることですから、その企業の価値観がわかります。
以前、勤めていたリクルートでは「ハイ達成」という言葉がありました。目標よりも大幅に達成するということですが、社外に出るまでそれがジャーゴンだとは気づきませんでした。例えばこれは、リクルートの目標達成意欲の高さを示していたわけです。
言葉でないものほど、よく語る
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以上、注意すべき重要な3つのポイントについて述べてみましたが、他にも挙げるとすれば、すべて「言葉ではないもの」です。
会議室の壁に貼ってあるその会社の理念が、そのまま実際に浸透している理念とは限りません。そうではなく、服装、歩き方、表情、声の大きさ、高さなどの社員個々人の様子や行動、オフィスの使い方(オフィス自体をどうするかはプロが「意図的に」どうにでも構成できるので、あくまでも使い方。きれいに使っているのか、雑なのか等)などです。
言葉に惑わされずに、少し引き気味になって、受けている企業を冷静に「見る」ことが大切なのではないでしょうか。
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(文・曽和利光)
曽和利光:京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長を歴任し、2011年に株式会社人材研究所設立。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。著書等:「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」ほか