オハイオ州シンシナティの集会で演説するトランプ大統領(左)と、テキサス州エルパソの銃乱射事件の現場から避難する買い物客(2019年8月3日)。
Reuters, Mark Lambie/The El Paso Times via Associated Press
- アメリカでは、テキサス州エルパソとオハイオ州デイトンで24時間以内にそれぞれ銃乱射事件が発生、少なくとも29人が犠牲となった。これを受け、人権団体「南部貧困法律センター(SPLC)」のインテリジェンス・プロジェクト・ダイレクター、ヘイディ・ベイリッチ(Heidi Beirich)氏はBusiness Insiderに対し、アメリカ国内のテロリズムの半数以上はヘイト(憎悪)による暴力だと語った。
- ベイリッチ氏は、トランプ大統領が白人至上主義者による暴力を助長しているとし、共和党とトランプ政権は白人至上主義を「煽る」のを止めるべきで、トランプ大統領の発言は「人種差別的もしくは反移民」だと指摘した。
アメリカでは8月3日と4日に、テキサス州エルパソとオハイオ州デイトンで24時間以内にそれぞれ銃乱射事件が発生、少なくとも29人が犠牲となった。連邦捜査局(FBI)は、エルパソの銃撃犯パトリック・クルシウス容疑者(21歳)が書いたと見られる"反移民マニフェスト"を捜査している。このマニフェストには、ヒスパニックの「侵略者たち」がテキサスを「民主党の牙城」に変えようとしているという筆者の恐れが書かれている。
エルパソの銃乱射事件のあと、アメリカのヘイトグループやその他の過激派を監視している南部貧困法律センター(SPLC)は、このマニフェストと白人至上主義および反移民の発言を含むクルシウス容疑者のものと見られるソーシャルメディア・アカウントについて、声明文を発表した。
SPLCのインテリジェンス・プロジェクト・ダイレクター、ヘイディ・ベイリッチ氏はINSIDERに対し、こうしたマニフェストや投稿は、ニュージーランドのクライストチャーチで3月15日に起きた、モスク(イスラム礼拝所)で51人が死亡した銃乱射事件の容疑者も似たようなマニフェストを書いており、「新しい現象ではない」と語った。
また、アメリカで2018年に起きた国内テロリズムは、ノースカロライナ州シャーロッツビルの事件を含め、その大半が白人至上主義に根差したものだったと指摘している。アメリカではヘイトクライム(憎悪犯罪)と銃乱射事件が増加していて、銃乱射事件による犠牲者の数も増えている。
ベイリッチ氏は、「少なくともこの国では、イスラム過激派によるテロリズムは大幅に減っていて、こうした(白人至上主義などに根差した)類の暴力が増えている」と語り、トランプ大統領の人種差別的な発言がこれを助長していると指摘した。同氏は、トランプ大統領が4人の女性下院議員(このうち3人がアメリカ生まれ)に対し、自国へ「帰れ」などと発言、攻撃した件を例に挙げた。
再選に向けた選挙活動を始めて以来、トランプ大統領はメキシコ人を「レイプ犯」と呼ぶなどすることで、反移民、反イスラムといった考えを正統化し、白人至上主義者をつけあがらせたと、ベイリッチ氏は言う。
同氏は、容疑者が書いたと見られるマニフェストの言葉遣いは、ラテン系移民や亡命希望者について「侵略」「はびこる」といったフレーズを使うトランプ大統領の主張に同調するものだと指摘した。ベイリッチ氏の見方を、2020年の大統領選で民主党候補指名を狙う候補者たちも共有している。エルパソ出身のベト・オルーク候補もその1人で、オルーク候補は3日、トランプ大統領が移民への攻撃を助長していると批判した。
ベイリッチ氏は「こうした発言は、デービッド・デューク(David Duke)氏のような人物から聞こえてくるとは予想しても、ホワイトハウスから聞こえてくるとは思いもしないものだ」と語った。デューク氏は、白人至上主義で知られるクー・クラックス・クランの元最高幹部だ。その上でベイリッチ氏は、「(こうした発言が)ラテン系に対する恐れを正統化している。そして、容疑者らのマニフェストはトランプ大統領のツイッターから聞こえてくるのと同じような言葉をある意味、まとめたようなものだ」と言う。
銃乱射事件のあと、アメリカではトランプ大統領が過去の集会で、「(国境で)移民を撃て! 」と叫んだ支持者の発言を笑っている動画が話題になった。
3日夜、トランプ大統領は「この国の全ての人とともに、今日の憎むべき行為を非難する。罪のない人々を殺すことを正当化するような理由、言い訳は存在しない」とツイートしている。
(翻訳、編集:山口佳美)