チェルノブイリ並みの環境被害をもたらす可能性も? ロシアの閉鎖された化学工場をのぞいてみた

化学工場

ロシア南東部にあるウソリエキンプロムの化学工場。

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

  • チェルノブイリ原発事故はヨーロッパの広い範囲に放射性物質を放出したことから、世界最悪の核災害の1つと考えられている。
  • その事故現場近くでは今でも水や土が汚染されたままで、地元の子どもたちは甲状腺肥大やがん、呼吸器疾患といった健康問題に苦しんでいる
  • 天然資源開発監督局のトップは7月、ロシア南東部にある今は使われていないウソリエキンプロム(Usolyekhimprom)の化学工場が、同様の環境的大災害を起こす可能性があると警告した。
  • 工場には今も水銀や廃油、その他の化学物質があり、当局はこれが火事や洪水などによって空気や土、水の中に広がるのではないかと懸念している。

1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故の3日後、ソ連政府はこの事故によって2人が死亡したものの、状況は「安定」していて「アンダーコントロール(制御下にある)」だと発表した。

実際は、爆発によって有毒な放射性物質が空気中に放出されていた。そして、爆発後の火災によって、それはヨーロッパの広い範囲に拡散した

環境への影響は今日に至るまで続いていて、この事故は世界最悪の核災害の1つと考えられている。事故現場近くでは今でも水や土が汚染されたままでこの地域に住む子どもたちは甲状腺肥大やがん、呼吸器疾患といった健康問題に苦しんでいる

そして今、ロシア南東部で似たようなリスクが高まっている。天然資源開発監督局のトップ、スベトラナ・ラジオノワ(Svetlana Radionova)氏は7月下旬、シベリアにある今は使われていない化学工場に水銀やその他の化学物質が大量に放置されていると警告した。

この工場は「環境的なチェルノブイリ」になるリスクがあると、ラジオノワ氏は言う。

見てみよう。


ウソリエキンプロムのこの工場はかつて、塩素やその他の化学物質を製造していた。

工場

ロシアのシベリア地方にあるウソリエキンプロムの工場。

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

ロシアの化学会社「ウソリエキンプロム」は、数百もの産業用設備を所有している。シベリアのイルクーツクにあるこの工場がオープンしたのは1933年。広さは約1500エーカー(約6平方キロメートル)だ。

2017年に倒産したあと、工場は閉鎖された。

はがれ落ちた壁

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

今は使われていないこの工場は、人口8万人以上のウソリエ・シビルスコエ(Usolye-Sibirskoye)の街中にある。

7月、ラジオノワ氏はこの工場を視察した。

工場

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ロシア連邦天然資源開発監督局(Rosprirodnadzor)は、環境に負の影響を及ぼす可能性のある行動を監視している。

工場を視察したあと、ラジオノワ氏はロシア紙『イズベスチヤ(Izvestia)』の取材に対し、「半分壊れた状態」の「巨大な、化学的に危険な企業」を目にしたと語った

ラジオノワ氏は、工場で「膨大な量」の水銀を見つけたと話している。

工場

Vladimir Baikalsky/TASS

中でもラジオノワ氏は、工場に残された水銀に注目した。

高濃度の水銀にさらされると、腎臓や神経系がダメージを受ける。

建物の中には「化学的に有害な物質」が入ったコンテナが放置されていたと、ラジオノワ氏は言う。

工場内部の様子

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

同氏は「あそこに何があるか、誰も把握していない」とイズベスチヤに語った。また、廃油が工場の井戸に流れ込んでいるのも見たと話している。

地元当局は、「毒性の強い」塩素が土壌と地下水にしみ出していることを認識している。

工場内部の様子

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty IMages

イルクーツクの環境当局のトップ、アンドレイ・クリュチコフ(Andrey Kryuchkov)氏はシベリアン・タイムズの取材に、工場周辺の土壌および地下水に「毒性の強い有機塩素汚染物質がしみ出している」と語っている。これは、殺虫剤としてしばしば使用されるものだ。

科学者たちは殺虫剤が人体に与える影響について今も研究を続けているが、一部の研究結果は高濃度の特定の殺虫剤にさらされることで、白血病や非ホジキンリンパ腫といったがんのリスクを高める可能性があると示している。

工場やその周辺地域が洪水もしくは火災に見舞われれば、汚染物質が地域全体に広がる可能性もある。

工場と水たまり

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

8月14日現在、シベリアでは数百件の山火事によって2万1000平方マイル(約3万9000平方キロメートル)以上が消失した。こうした山火事のうち、62件あまりがイルクーツク周辺で発生している。

この地域では、洪水も頻繁に発生していて、6月の洪水では25人が死亡、7月の洪水では1000人以上が避難した。

チェルノブイリの事故が甚大な被害をもたらした理由の1つは、放射性物質を含む火災の煙が爆発の影響を直接受けた地域を越えて、広範囲に拡散したためだ。

ウソリエキンプロムの工場で火災もしくは洪水が起きれば、同じような影響が出かねない。

ラジオノワ氏は、工場の化学物質が近くを流れるアンガラ川に流れ込むことを懸念しているという。

工場

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

「これは環境的大災害の領域だ」とラジオノワ氏はイズベスチヤに語った

同氏は、廃油のたまった井戸が爆発すれば、アンガラ川は汚染されるだろうと指摘した。つまりこれは、汚染物質がイルクーツク中に広まる可能性があるということだ。

工場の汚染物質は、チェルノブイリと同じような環境的大災害をもたらしかねないと、ラジオノワ氏は警鐘を鳴らす。

工場

Vladimir Baikalsky/TASS/Getty Images

ラジオノワ氏はこの工場を「発生するのを待っている有毒な大災害」と表現したが、クリュチコフ氏は工場をチェルノブイリと同列に語るラジオノワ氏に反発、2つを同列に語ることは科学的に正確でないと主張している。

ただ、できるだけ早くこの土地を片付けるべきだという考えでは一致している。

[原文:An abandoned chemical plant in Russia could set off a Chernobyl-style environmental disaster. Take a look inside.

(翻訳、編集:山口佳美)

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