8chanを所有・運営するジム・ワトキンス氏。
YouTube/The Goldwater
- 8月3日(現地時間)、テキサス州エルパソのウォルマートで発生した銃乱射事件では、22人が殺害され、20人以上が負傷した。
- 犯行前に容疑者はマニフェストを匿名のウェブ掲示板「8chan」に投稿したとみられている。8chanはジム・ワトキンス氏と同氏の会社「NTテクノロジー」が所有・運営している。8月5日以降、同サイトはアクセス不能な状態となっている。
- ワトキンス氏はアメリカ人で現在はフィリピン在住。8chanの運営に加えて、養豚場を経営している。
インターネットで最も悪名高いサイトを所有・運営する人物は、かつて自らを「とてもつまらない人間」と表現した。
その人物こそがジム・ワトキンス(Jim Watkins)氏。同氏が運営する「8chan」は、ヘイトに満ちた掲示板だが、言論の自由を何よりも重視することを信条としていた。
それゆえ2019年、8chanには3人の銃乱射事件の容疑者が犯行前にマニフェストを投稿したとみられている。8月5日以降、同サイトはアクセス不能な状態となっている。
フィリピンで養豚業を営みながら8chanを運営するジム・ワトキンス氏について分かっていることを見てみよう。
ワトキンス氏は50代半ば、フィリピンに住み、自らを「連続起業家」と呼ぶ。
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インターネットに携わる前は、20年近くアメリカ陸軍にいた。陸軍でコンピューターを学び、やがて急成長するインターネットについても学んだ。
最初に手がけたのは、ポルノサイト。自ら設立した会社「NTテクノロジー」が所有・運営していた。より具体的に言えば、日本の規制を回避するポルノサイトを構築した。
「その後の数年間、我々の仕事はまさに日本向けの無修正コンテンツを日本のユーザーに売り込むことだった」とワトキンス氏の仕事仲間は2016年、ニュースサイトのSplinterに語った。
1998年、ワトキンス氏はインターネットビジネスに専念するためにアメリカ陸軍を退役。
「アダルトサイトを運営していた私が去り、軍は喜んだだろう」とワトキンス氏はSplinterに語った。
2004年までに最初のインターネットバブルは弾けた。ワトキンス氏は家族とともにフィリピンに移り住んだ。現在もそこに住んでいる。
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Splinterによると、ワトキンス氏はフィリピンのマニラ郊外で養豚場を経営している。
だがメインのビジネスはウェブ。NTテクノロジーは自由主義を標榜するニュースサイト「The Goldwater」、「Audio.books」というオーディオブック企業など、さまざまなウェブサイトを運営している。
だが最も有名なのは、やはり8chan。
2014年、ワトキンス氏は8chanの所有権を取得した。創設者のフレドリック・ブレナン (Fredrick Brennan) 氏が自ら8chanとの関係を断った後のことだ。
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8chanの創設者、フレドリック・ブレナン氏は、もはや8chanとはなんの関係もない。
2014年時点で8chanを公式に所有、運営していたのはワトキンス氏だった。両者はしばらく一緒に仕事をしていた。ブレナン氏が技術面、ワトキンス氏が管理業務を担当した。
だがその後、関係は崩壊した。ブレナン氏は複数の銃乱射事件と8chanのユーザーが関係していることを受けて、8chanを批判するようになった。
「世界のために、サイトを閉鎖すべきだ」とブレナン氏は8月4日、ワシントン・ポストに語った。
テキサス州エルパソで8月3日に発生した銃乱射事件では、22人が殺害され、20人以上が負傷した。この事件は、容疑者が犯行前に8chanにマニフェストを投稿したと思われる最新の事例となった。
「またもテロリストは8chanを使ってメッセージを拡散させた。人々がそのメッセージを保存し、拡散することを知っている」とブレナン氏はワシントン・ポストに語った。
「掲示板は、アメリカ国内のテロリストを受け入れる観客となっている」
なぜ8chなのか? 「言論の自由」なのだろうか
2016年、52歳の時に受けたSplinterのインタビューで、ワトキンス氏は現実の世界での恐ろしい悲劇としばしば関連づけられる匿名掲示板の運営を続ける理由を説明した。
誰かに危害を加えるという差し迫った脅威がない限り、彼らの発言は守られるべき政治的な発言。トランプ氏、ヒラリー・クリントン氏、あるいは他の誰でも、それは同じ。
Business Insiderはワトキンス氏とNTテクノロジーにコメントを求めたが、返答はなかった。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue、増田隆幸)