「表現の不自由展」中止、海外メディアはどう報じたか。表現の自由問題と最悪の日韓関係

愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、慰安婦を象徴した「平和の少女像」などを展示していた「表現の不自由展・その後」が中止となった問題を巡り、「表現の自由」をめぐる論争が起きている。

表現の不自由展ロゴ

その展示内容に抗議が殺到したことから中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」。「脅迫で中止」という前例をつくった、という非難も。

出典:「あいちトリエンナーレ2019」HP より

実行委員会会長を務める大村秀章・愛知県知事は中止の理由を、「テロや脅迫ともとれる抗議があり、安全な運営が危ぶまれる状況だ」と述べたが、「テロに屈した前例をつくった」「日本国憲法で保証された『表現の自由』への弾圧」と反発を呼んでいる。

さらに政治家として公金を投入するにふさわしくないとこの展示に反対した河村たかし・名古屋市長と大村知事が、「表現の自由」と「憲法違反」を巡って応酬するなど議論は続いている。

「テロの恐怖を利用した」と批判

この問題を海外メディアをどう報じているのだろうか。

米紙ニューヨーク・タイムズは8月5日(米東部時間)の記事「展示会、表現の自由を讃え、黙らされる」で、こう断じた。

「それ(展示会)は、表現の自由を祝福するべきものだった。しかし、表現の自由は中止された(=潰された)」

さらに、

「(展示会中止に)批判的な人々は、愛知県の主催者が政治的圧力に屈したがために、テロの恐怖を利用したとしている」

と踏み込んだ。

「政府はテロに屈しないと強調しているのに」

オーストラリア国立大学のテッサ・モリス・スズキ名誉教授は、ニューヨーク・タイムズのメールでの取材に応じ、こう述べている。

「日本政府は、別の機会をとらえては、暴力やテロの脅威には屈しないと繰り返し強調している。政府が、同様の脅迫があったとして、(例えば)主なスポーツイベントを中止するとは想像できない。過激派からの脅迫が、なぜこんなに素早く行政側の降伏につながったのか」

ジャーナリストの津田大介さん

芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介さん。

撮影:竹下郁子

今回トリエンナーレの芸術監督であるジャーナリスト、津田大介氏が、「最近の状況は、表現の自由が蝕まれているというのを証明するものだ」としたのも引用した。

同様に、ライターの畠山理仁氏のツイートも紹介している。

「『日韓関係が緊張している時にやらなくても』という意見を目にした。 その緊張関係を作ったのは政治であり、責任を負うべきも政治だ。 芸術が政治の尻拭いをする必要は全くない。政治家の仕事は展示中止要請ではない。緊張緩和と表現の自由を守るために動くことだ」

「日韓関係はここ数十年で最悪」

しかし、「表現の自由の制限」や「政治介入」を懸念する独自記事を掲載したのは、主要欧米メディアではニューヨーク・タイムズぐらいだ。

展示会中止を真っ先に報じたのは、ロイター通信やAFP通信だが、それらは比較的短い記事で、掲載した新聞もニューヨーク・タイムズをはじめ数紙にとどまった。

そしてロイターもAFPも日韓の貿易摩擦と慰安婦をめぐる日韓の論争を背景として取り上げ、日本国内でもっとも懸念される「表現の自由」の危機には触れていない。

ロイターによると、日韓関係は、

「アメリカの同盟国である両国の間で貿易摩擦が外交関係を悪化させており、ここ数十年で最悪の関係にあるとされている」

と、貿易摩擦の緊張の中で起きたという位置付けだ。AFP通信も同様の表現を使っている。

また、ロイターは慰安婦(comfort woman)という言葉は、「多くの韓国人にとって、第2次大戦中の慰安所で強制的に働かされた人々を表す婉曲的な表現だ」としている。

(文・津山恵子)

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