7割のフリーランスが報酬トラブルあり、損保ジャパンが日本初の保険

女性

フリーランスで働く人の7割が、報酬トラブルを経験。

RUNSTUDIO/GettyImage

期限になっても報酬が振り込まれない、一方的に減額されたなど、フリーランスの報酬トラブルにかかる弁護士費用を保障します——。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会と損保ジャパン日本興亜は8月16日、日本初となるフリーランスで働く人向けの報酬トラブル弁護士費用保険「フリーガル」の提供を始めることを明らかにした。

背景にあるのは、約7割のフリーランスが取引先との報酬トラブルを経験しているとの調査結果だ。口頭契約も珍しくないフリーランスの世界では、報酬の不払いに対しても、弁護士費用が足かせとなり、多くが泣き寝入りという実態が見えてくる。

フリーランスは日本社会でなめられやすい

「フリーランスという立場が、日本社会でなめられやすいという問題があると思います。未払い報酬を取り戻しても、裁判にかかる費用で、相殺されてしまうケースも多い。(フリーランスへの未払いは)どうせ法的手段に訴えてくることはないと、企業によってはたかをくくっているのでしょう」

そう話すのは、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さん.だ。平田さんはPRプランナー(広報)として、複数の取引先の仕事を受けてきた。過去に一度だけ、理不尽な理由で、数百万円分の報酬が未払いのままとなった経験がある。

平田まりさん

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さん.

撮影:滝川麻衣子

「未払いには大きく分けて3種類あります。発注主と連絡が取れなくなる/契約書がないため、証拠がない/難癖をつけて支払いを拒否する ——です。私の場合は3つ目の、難癖でした」と、平田さんは説明。

「未払いを起こす発注主は資金繰りに窮している場合が多いです。自らが売り上げの回収ができずそれを予算の調整弁としていたフリーランスに向けてしまうという、未払いの連鎖も起こりがちです」

平田さんは弁護士に相談の上、訴訟を起こし、結果的に「和解」が成立。未払金については言い分が認められ、ほとんどが支払われることになった。

「信頼していた相手だったので、非常にショックで辛い思いもしました。ただ、ちゃんとした弁護士に相談して声をあげれば、未払い報酬は取り戻せることを身を持って証明できたので、気持ちも救われました」(平田さん)

裁判費用は数百万円にのぼり、フリーランスで働く身には、大きかったのは事実だ。この時の体験がベースになって、フリーランス協会の一般会員を対象に、報酬トラブル弁護士費用保険「フリーガル」が作られることとなった。

フリーで働く人の未払いトラブルに弁護士費用を補償

free

出典:損保ジャパン日本興亜の説明資料

フリーランス協会が8月から提供を始める「フリーガル」は、以下の特徴がある。

  1. 簡易な手続き:フリーランス協会の公式ホームページを通じてネットで加入手続きが完結。保障額に応じて年間5000円〜1万5000円。
  2. 弁護士による無料の電話窓口相談:報酬未払いや報酬に関する契約内容など、法律相談が無料で受けられる。
  3. 弁護士紹介制度:当事者間で解決できない場合、日弁連リーガル・アクセス・センターを通じて弁護士を紹介
  4. 保険金サポート:法的対応にかかる弁護士費用を保険金として支払う。

フリーランス協会の一般会員向けの福利厚生の一部としてスタートするが、協会に会員登録さえすれば、誰でもフリーガル保険に加入できるという。

会社や団体に雇用されるのではなく、個人事業主として働く「フリーランス」の人口は、341万人(内閣府調べ)とされる。副業はじめ多様な働き方を認めようという社会の流れもあって、フリーランスの立場で仕事を受ける人の数は増えると見込まれている。

4割の人が未払いに対して泣き寝入り

コワーキング

働き方が多様化する中で、フリーランスも増えつつあるが、社会的なインフラが整っているとは言い難い。

GettyImages/Yue_

引き受け保険会社となる損保ジャパン日本興亜の担当者はフリーガルの設計についてこう説明する。

「もちろん営利企業としては、働き方が多様化し、大きくなるマーケットに対して先手を売っていくという狙いがあります。ただ、もっと大きな意味では、フリーランスを取り巻く社会保障インフラが整っていないという社会課題の解決に、いち早く関わっていきたいという思いもあります」

フリーランス協会が、フリーランスで働く人を対象に実施した「未払い報酬に関するアンケート」(2018年12月実施、回答者数109人)では、回答者の7割が「報酬未払いを経験した」と回答。それに対して4割が「泣き寝入りをした」、2割超が「身近な人に相談をした」。「法律相談窓口へ行った」は、14%にとどまった。

泣き寝入りをした理由は「勝てる見込みがないと感じたから」「どうすればいいかわからなかった」が、いずれも37%ともっとも多かった。

フリーランス協会代表理事の平田さんはこう話す。

「フリーランスの中には、未払いにあった自分が悪いのではないか。恥ずかしいというような気持ちから声をあげられず、自信をなくしてしまう人もいます。今回の保険で、これまで泣き寝入りを強いられてきたフリーランスが裁判費用の負担を気にせず声を上げられるようになり、それが企業の抑止力になることを期待しています」

※フリーランス協会:一般会員2240人、無料会員1万4000人、年会費1万円で賠償責任保険や所得補償制度などの福利厚生制度の提供、実態調査や政府提言などを行なっている。

(文・滝川麻衣子、写真はイメージです)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み