DAZNが語る“国内拡大の手応え”。赤字報道も「日本の成長は堅調、長期的に投資」

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2019年上半期の総括や今後の取り組みを説明したDAZN Japan Executive Vice President のマーティン・ジョーンズ氏。

撮影・大塚淳史

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東京都内で営業するスポーツカフェバー「DAZN CIRCLE」。

出典:DAZN

スポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」は8月7日、東京都内のスポーツカフェバー「DAZN CIRCLE」で、2019年上半期の総括や今後の展開についてメディア向けに説明会を開いた。日本法人のエグゼクティブ・バイスプレジデントのマーティン・ジョーンズ氏は、日本で順調にサービスが拡大していることを数字を交えてアピールした。

日本でOTTサービスが浸透

DAZNのようなOTTサービスが伸びている、と第三者機関の調査をもとに説明。自社のユーザー総数や、増加率には言及しなかった。

日本市場の責任者であるマーティン・ジョーンズ氏は「日本で(DAZNのユーザーは)確実に伸びている。OTT(Over The Top※)が浸透している。どのチャンネルでスポーツを見るかというアンケートでは、地上波で見る人は減り、DAZNで見るという人が増えている」と手応えを口にした。

テレビ視聴とDAZNを比較したスポーツ視聴の変化

インターネット上で、DAZNを知っている20代以上の男女661人にアンケート調査。20代、30代、40代、50代、60代それぞれを均等に配分した独自調査になっている。

「DAZNを知っている人」を対象にしている点である程度の偏りはあるが、詳細な数字を対外的に発表することが珍しい同社としては、これを根拠にテレビ視聴からDAZN視聴へとシフトが進んでいる、と説明する。

OTT(Over The Top):動画や音声などのコンテンツをインターネットを介して提供するサービスや事業者。コンテンツ配信プラットフォーマー。

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DAZNのブランド認知度は着実に高まっているという。

「ローンチして3年が経ち、今年で4年目。3年間で認知度が伸び、継続的に認知度が上がっている。DAZNへの購買意欲に関しても上がっている」(ジョーンズ氏)

その一例として、DAZNが独占配信した、2019年6月のサッカーUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)決勝は、日本では土曜深夜にも関わらず、当時の最高のライブ視聴数を記録した。

さらに、同じく独占配信した、6月に放送された南米一を決めるサッカー大会「コパ・アメリカ」では、大会に参戦した日本代表の第3戦・エクアドル戦で、歴代最高のライブ視聴者数を記録を更新した。ジョーンズ氏によると「UCL決勝と比べても1.8倍」と明かした。

「DAZNを通してスポーツを見るというのが浸透しているのかなと思う。OTTサービスに適しているのが、通勤中だったり、また、試合のハイライトがすぐに見ることができる。DAZNは日本のスポーツ市場おいて、ゲームチェンジャーになっている」(ジョーンズ氏)

合計視聴者数に“久保建英効果”

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合計視聴者数の上位5位のうち、4つが久保建英関連の試合。

2019年の現時点までのライブ、見逃し配信、ハイライトの合計視聴者数では“久保建英効果”が見られたという。

サッカー日本代表・久保建英は6月、スペインの名門レアル・マドリードに移籍した。実戦のデビュー戦、7月にアメリカであったインターナショナル・チャンピオンズカップのバイエルン・ミュンヘンとレアル・マドリードの試合が、合計視聴者数第5位となった。

欧州のチームのこの時期の試合は、シーズン前の強化試合の意味合いが強く、日本のサッカー好きですら注目度はそう高くない。しかし、久保が加入したこともあってか、視聴数が伸びた。

「今後も日本にとっての注目、世界で活躍する日本人選手のフォローアップをしていく」(ジョーンズ氏)

巨額赤字報道も「長期的な目線で投資」

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「スポーツ業界には投資が必要」と語るジョーンズ氏。

撮影・大塚淳史

スマホやパソコンなどで野球やサッカーなどスポーツの試合を見る人は、体感としても確かに増えている。わずか3年ちょっとで、日本のスポーツ視聴習慣を変えつつある、という主張は確かにそうだろう。

一方で気になるのは、DAZNのビジネス面だ。

Jリーグのネットの独占配信権を10年間で計2100億円で契約するなど、巨額投資に対し、恒常的にサービスを提供し続けられるのか危惧する関係者や視聴者もいる。ブルームバーグは7月8日の記事の中で、2018年度のDAZNの損失額が6億2700万ドル(約666億円)の巨額赤字だったと報道している。

日本におけるサービスの収支状況についてジョーンズ氏にたずねたところ、「日本での利益については公表していないが、問題なく成長している」とし、現時点でまだ投資の段階と強調する。

スポーツ業界には投資が重要。スポーツファンのためにいろんな方面から投資していくことが必要です。DAZNはスポーツ業界に長期的な目線で投資している。スポーツに興味のある、スポーツを見る人口を育てていくことが大切になると思っている。まず、スポーツのライトファンに投資していく」(ジョーンズ氏)

一方で、単にスポーツの試合の配信だけでなく、独自のドキュメンタリー番組やインタビューなども今後増やしていく。

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DAZNはプロ野球・読売ジャイアンツと包括提携を結び、ジャイアンツのドキュメンタリー番組シリーズを10月以降より配信予定。

DAZNのグローバルアンバサダーであるサッカー・ブラジル代表ネイマール、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド、 レアル・マドリードなど欧州の強豪クラブで監督を歴任し優勝に導いてきたジョゼ・モウリーニョ氏が、自分の人生のターニングポイントとなった試合を振り返る番組を8月9日から世界9カ国で配信する。

日本でのオリジナルコンテンツもある。プロ野球・読売ジャイアンツのドキュメンタリーシリーズを10月より順次公開していく。

これからの取り組みとして、非会員でも一部のコンテンツを視聴体験できるオープンブラウザーの紹介や、1パッケージ(会員になればすべてのコンテンツを楽しめる)の形ではない視聴者に合わせた料金形態の案などを紹介した。

(文、写真・大塚淳史)

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