孫正義氏「名前は孫だが忖度させた事実はない」。スプリント合併、ヤフー・アスクル対立を語る:ソフトバンクG決算

ソフトバンクグループ 決算

ソフトバンクグループの決算を発表する会長兼社長の孫正義氏。

撮影:小林優多郎

ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)は8月7日、2019年4~6月期の決算説明会を開催した。同期の売上高は2兆3364億円と前年同期比3%増、営業利益は6888億円で4%減だった。

ソフトバンクグループ 営業利益

孫氏はArm Chinaによる一時益と、今後は子会社から外れるスプリントの利益を除けば、前年度同期比で実質37%増になると主張する。

会長兼社長の孫正義氏は、減益となったことについて、2018年6月に行った半導体事業の中国子会社であるArm Technology (China)の一部株式売却による一時益が前年同期に計上されていたことが1つの要因であると説明している。

同社の決算説明会は定例だと孫氏による戦略説明会のようになることが多いが、今回は一般的な決算説明の場に近く、「ビジョン」を語る姿はいつもより少なかった。

孫氏の頭を悩ませ続けたスプリント事業に一定の決着がついたことと、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)の第2号ファンドの本格始動が間近に迫っていることが、多少なりとも関係しているのではないか。

スプリント「苦しみはたくさんあった」

スプリント

スプリントとTモバイルUSの合併計画を、アメリカ当局は承認する見通しだ。ただ、複数の自治体が合併差し止めを求めて訴訟を起こしている。

冒頭は、海外通信事業を担う子会社のスプリントとTモバイルUSとの合併がほぼ決まったこともあり、その振り返りや今後の影響の説明に終始した。

合併作業が完了すれば、新生TモバイルUSへのソフトバンクGの出資比率は27%にとどまり、持ち分法適用会社となるため、ソフトバンクGにとっては経営リスクが薄まることになる。

スプリントへの投資は成功だったか、と報道陣から問われた孫氏は「苦しみはたくさんあった。時間と労力をとられた」としながらも「約1兆円の投資利益を得られた。これは悪くなかったと思う」と評している。

ソフトバンクGは今後、SVFが出資する企業と新生TモバイルUS間でのシナジー(相乗効果)の構築を模索してく方針だ。

SVF2号にもサウジ出資を調整中

ソフトバンク・ビジョン・ファンド2

ソフトバンク・ビジョン・ファンド2は、今後1~3カ月の間に投資を開始する方針。

SVFについては、第2号ファンドを設立すると7月26日に発表している。その細部についても孫氏は語った。

SVF2はソフトバンクGを筆頭に、アップルやマイクロソフトやみずほ、三井住友、三菱UFJといった日本のメガバンクなども参加予定。ファンドの規模は1080億ドル(約11.7兆円)を予定している。

SVF2 参加投資家

SVF2には、アップルやマイクロソフトなどが名を連ねている。

この1080億ドルという数字は、現状で基本合意(MOU)に至った企業の出資予定額の累計であり、公表された企業や投資家以外とも現在交渉を続けており、最終的な投資額は1080億ドルより膨らむ見込み。その中には、第1号の投資に参加したサウジアラビアやアブダビ首長国も含まれており、「具体的な条件について詰めている最中」(孫氏)という。

サウジアラビアは、イスタンブールのサウジ領事館でジャーナリストが殺害された事件に皇太子が関与しているという疑惑が報じられている。これに関して孫氏は「少なくとも起こるべきではない事件」としつつ「知っている範囲はみなさんと同程度。あまり深いところを知り得る立場ではない」と、事件そのものの詳細についてはコメントを控えた。

アスクル問題は「忖度させていない」

孫正義氏

「忖度させた事実はない」とする孫氏。

また、質疑応答の中ではヤフーとアスクルの対立問題についても一部取り上げられた。

ヤフーは現在、ソフトバンクGの子会社で国内通信事業を担うソフトバンクの子会社。8月6日のソフトバンクの決算で社長の宮内謙氏は基本的にはヤフーの方針を支持する旨を明らかにしている

これに対し、孫氏個人は「反対意見を持っている」と報じられているが、今回の決算会見では「アスクルの件は、裏で糸を引いたとか、名前は孫だが忖度させたとかいう事実はない」と、孫正義節を炸裂させた。

孫氏は「物理的には年をとってきているが、青春真っ只中という感じ」と、SVFで行っている世界各国のAI企業への投資に集中している旨を語った。

(文、撮影・小林優多郎)

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