会社員よりメンタル良好?ストレス低いフリーランスがやっていること

フリーランス

自由度の高さとともに、自己責任の世界で働くフリーランス。彼らのメンタルヘルスの実態とは。

撮影:今村拓馬

「フリーランス」という言葉を聞いたとき、読者のみなさんはどんな印象を持つだろう? 働き方の自由度や、専門性の高さなどのプラスイメージと同時に、「不安定」「孤独」などのマイナスイメージを抱く人は少なくないはずだ。しかし、フリーランスのメンタルヘルスを調査したところ、意外にも、フリーランスのほうが会社員に比べて「メンタルヘルスは良好」との結果が出た。

筆者は2013年にフリーランス女性と企業とのマッチング事業の会社を共同創業。1万人以上のフリーランスやフリーランス希望の人材と、1700社以上の顧客企業との案件のマッチングを行うかたわら、毎年、フリーランスをテーマにさまざまな調査・分析を行ってきた。著者自身、過去にフリーランスとして働いていたこともある。

2019年の調査テーマに選んだのが「フリーランスのメンタルヘルス」だ。フリーランスはその自由さの反面、仕事の獲得・推進から日々の時間管理、お金の管理などすべて自己責任の世界でもある。筆者はフリーランスマッチングの会社を経営しているものの、すべての人がフリーランスに向いているとは1ミリも思っていない。

それだけ緊張感を強いられる働き方でもあると感じているからだ。実際、これまで体調を崩し業務の遂行が困難になるフリーランスの姿も見てきた。そこで、フリーランスのメンタルヘルスの状況を明らかにするべく、このテーマを選んだ。

メンタルヘルスが良好なフリーランス7割

今回調査では、会社員データについては、調査の監修をお願いしたくまもと産業医サービス顧問産業医の中田博文氏より提供されたさまざまな業種・職種をふくむ会社員データと比較した。

具体的にはメンタルヘルスが良好なフリーランスが69.5%に対して、会社員は56.9%だった。メンタルヘルスの状態を細分化した「疲労感」「ミス増加」といったストレス反応項目で比較しても、フリーランスは会社員に比べてストレス反応が出ている人は少なく、メンタルヘルスが良好だった(下図参照)。

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出典:Warisフリーランスのメンタルヘルスに関する調査

調査結果からは1人で自由に働くスタイルがメンタルヘルス良好に役立っていることが示された。付け加えるなら、1人で働く上で必要なビジネスリソース(人的ネットワークや仕事環境)を手軽に整えられるようになったことも、フリーランスとして働くストレス要因の減少に役立っていることが考えられる。

具体的には、クラウドストレージ/ビデオチャットによるリモートワークを実現するテクノロジーの発展/コワーキングスペース/ 各種アシスタンスサービス/フリーランスの事務作業の手間・コストの削減/業務委託ベースの人材紹介/シェアリングエコノミー/クラウドソーシングのマッチングプラット フォームの増加——といったことが挙げられる。

これらにより、以前より手間や金銭の負荷が 少なく、人的ネットワークや仕事環境を整えられるようになり、ストレス要因が低減しているのではないだろうか。

メンタル不調の特効薬は「睡眠の確保」

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とりわけ、良質な睡眠が、良好なメンタルヘルスの鍵を握っている。

Shutterstock

一方で、回答したフリーランスのうち、「健康診断を毎年は受けていない」フリーランスは回答者の40.5%に達しているのは注目だ。さらに、10%に「仕事に支障をきたす健康問題」があり、30.5%は「メンタルヘルスの不調」を自覚していた。また、「睡眠で疲れが十分取れない」と回答した人も18.6%いた。「フリーランスになって新たに病気を発症した」人は18.6%にのぼるなど、健康問題を抱えるフリーランスは少なくなかった。

では、こうした状況にどう対応していったらいいのか?

どうやらメンタルヘルスが良好なフリーランスは生活習慣(食事・運動・睡眠)や仕事のスタイルに工夫があることがわかった。調査では特に睡眠に気をつけることで、良好なメンタルヘルスがもたらされるという結果が出ている。

私たちはつい「ストレスがあるから眠れない」と考えてしまいがちだが、産業医の中田博文氏によれば「寝ないからストレスがたまってしまう」側面もあるのだと言う。働く時間の自由度が高いだけに、業務が立て込むと睡眠時間を削って働くフリーランスは少なくないが、自身でメリハリをつけて睡眠時間だけはなんとしてでも確保する姿勢が健康維持には有効だ。

マイルールと人的ネットワークで仕事の負担を軽減する

仕事

仕事上のマイルールと人的ネットワークの確立が、仕事の負担を軽減する(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

また、今回の調査では仕事の負荷がストレス反応を高めることが分かった。仕事をしていれば、誰だって仕事の負荷は避けられないものだ。しかし今回の調査分析によると、「(仕事上の)マイルールの確立」と「人的ネットワークの拡充」が、仕事の負荷の低減に有効なようだ。

ストレス反応の低いフリーランスの方に個別に行ったヒアリング調査では、クライアント企業との契約基準や自身の働くスタイル(稼働時間、稼働場所)を明確化し、自身で受注する内容を予め決めておく「マイルール」を確立しているのが特徴的だ。例えば、過去の案件で方針が二転三転したクライアントからの新規の仕事は断る、子育て中のため基本的に日中しか打ち合わせ時間は設けない、といったことだ。

また、仕事上で必要な協力を周囲から得られるといった人的ネットワークを持っていることが、仕事の負荷を緩和している結果も出た。こうしたマイルールや人的ネットワークは、フリーランスになる以前に従業員として勤務した経験によって、培われることが容易に想像される。実際、従業員勤務経験年数が長いフリーランスほど、人的ネットワークが充実していた。

健康増進は社会がバックアップしていく必要がある

診察

健康問題への対処は、社会的な支援が必要だ(写真はイメージです)。

Shutterstock/ Chinnapong

フリーランスが健康的に働くためには、こうした個人での生活習慣の管理や明確な仕事スタイルは欠かせないものだ。ただ、働き方に関係なく誰にでも起きる生活健康上の問題への対処には、社会的な支援も必要だ。

多くのフリーランスが加入している自治体の国民健康保険の健康診断に、より予防医療の観点を盛り込む。会社員も含めて健康増進活動を促すために、人間ドックの受診料やスポーツクラブなどの利用料を、予防医療の観点から所得控除の対象とする。こうした案についても、前向きに議論していく必要があるだろう。

また、フリーランスを支援する団体・企業の中にはフリーランス向けの健康支援に取り組むところも出てきている。フリーランスで働く人たち自身が、こうした情報を正しく理解し、サービスを選択できるようにすることも一助になるはずだ。


田中美和:雑誌記者を経て2013年に多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWaris(ワリス)を創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス/複業/女性のキャリア/ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。国家資格キャリアコンサルタント。

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