今回発表されたGalaxy Note 10シリーズ2機種。左がGalaxy Note 10、右がGalaxy Note 10+。
撮影:平澤寿康
- Galaxy Noteシリーズ初、画面サイズ違いの2モデルを用意
- ペン機能がさらに進化し、テキスト変換なども容易に
- PCとの連携機能が大きく進化
サムスンは8月7日(現地時間)、アメリカ・ニューヨークで新製品発表会「Galaxy UNPACKED 2019」を開催。スマートフォンの最新モデル「Galaxy Note 10」シリーズ2機種を発表した。グローバルでは8月23日発売予定だが、日本での展開は未定。
Noteシリーズは、デジタルペン対応の大画面スマートフォンだが、最新モデルの特徴はどこにあるのか。現地のファーストインプレッションをお送りする。
シリーズ初の“持ちやすさ重視”の2モデル展開
Galaxy Note 10は、比較的持ちやすい印象。
Galaxy Note 10では、シリーズ初の試みとして、6.3インチディスプレイ搭載の「Galaxy Note 10」と、6.8インチの「Galaxy Note 10+」の2モデルが存在する。これは、女性などを中心として、比較的小さめのGalaxy Noteシリーズが欲しいという声があり、それに応えたものだという(前機種のNote 9は画面サイズは6.4インチ)。
Note 10+は、Galaxyシリーズ全体としてディスプレイ、本体ともに最大サイスとなるが、一方でNote 10は5月に発売された「Galaxy S10+」よりも小さなサイズとなっている。
もちろん、6.3インチのスマートフォンが小さいとは言えないが、Note 10+と比べると明らかに持ちやすく、手の小さい人にとってはかなり魅力的なサイズになっていると感じる。
Galaxy Note 10+はさすがにかなり大きいが、ペン入力はやりやすそうだ。
また、両機種ともディスプレイ内に正面カメラを配置するいわゆる“パンチホール”のデザインを採用するとともに、上下左右ともベゼル幅を極限まで減らすことで、正面はほぼ全体がディスプレイといった印象となっている。
ディスプレイの縦横比は19対9とS10シリーズ同様だ。「ペンによる手書きを最優先するなら、紙のノートに近い縦横比(4対3)の方が扱いやすいのでは」という意見も根強くあるようだが、実際に扱ってみると縦長でも思ったほど手書きに合わないという印象はなく、本体の持ちやすさという点では有利と感じた。
ディスプレイはいずれもDynamic AMOLED(有機EL)を採用し、高精細な動画視聴体験を可能にする「HDR10+」に対応。画面解像度はNote 10+が3040×1440ドット、Note 10が2280×1080ドットとなる。
上下左右ともベゼル幅が非常に狭くなり、正面から見るとほとんどディスプレイとなっている。
本体デザインは、左右側面こそなだらかな曲線となっているが、ディスプレイの角の曲線もS10に比べて明らかに鋭角で、上下側面はスパッと切り落とされたようになっているため、直線的な印象がある。
重さは、Note 10+が196gで、手にするとかなりずっしり重い。それに対し、Note 10は168gと、イマドキのスマホとして標準的な重さだ。実際に手にしてもかなり軽快に扱えて、好印象だ。
手書き関連機能が強化され、より便利に
スタイラスペンのS Penも進化して利便性が高められた。
Galaxy Noteシリーズの最大の魅力となるのが、付属するデジタルペン「Sペン」を利用した手書き入力機能だ。Note 10シリーズでは、Sペン関連の機能がさらに強化され、より便利に活用できるようになっている。
Sペンの書き心地は非常になめらか。
専用の手書き入力アプリ「Samsung Notes(日本名はGalaxy Notes)」では、入力した手書き文字を指でタップするだけで簡単にテキストデータに変換できるようになった。
こちらは日本語にも対応しており、ひらがなやカタカナ、漢字をきちんと認識する。実際に試してみたが、多少崩れた手書き文字でも高精度に認識し、正直圧倒された。
また、キャンバスを最大300%まで拡大できるようになり、細かな文字やイラストも書き込めるようになった。その他、手書き入力データをMicrosoft Word形式に保存できるようになったことで、活用の幅も広がっている。
手書き文字を指でタップするだけでテキストデータへの変換が可能。
手書きデータをMicrosoft Word形式に保存できるようになり、活用の幅が広がった。
ほかにも、動画編集機能「Video Editor」では、複数の動画をつなげたり、部分的に再生速度を変更するといった機能強化が実現されているが、それらをSペンで軽快に操作できる。
「Video Editor」は機能が強化され、ペンで簡単に操作して動画編集が可能。
Sペン自体も進化した。Note 9のSペンではカメラのシャッター操作ができていたが、Note 10/10+のSペンは、新たに6軸モーションセンサーが搭載され、ジェスチャー操作が可能となった。
これによって、カメラアプリ上では、Sペンを上下や左右、回転といった動作を駆使して背面・正面カメラの切り替えや、機能の切り替え、拡大・縮小などが行える。
Sペンにモーションセンサーが搭載され、ジェスチャー操作でアプリをコントロールできるようになった。
出典:サムスン
また、Sペンのジェスチャー機能を他のアプリでも利用できるようにSDK(ソフトウェア開発キット)も配布される。実際に、カメラのコントロールを試したが、慣れが必要なのと、反応がわずかに遅い印象で、正直どこまで受け入れられるか微妙そうではあった。しかし、SDKの配布によってサードパーティアプリでも利用されるようになれば、大化けする可能性も秘めている。
Note 10+のカメラは「Galaxy S10 5G」相当
Note 10+の背面カメラは、超広角、広角、望遠、TOFカメラのクアッドレンズ仕様。
カメラ機能も従来から大きく進化している。Galaxy Note 10+のリアカメラは、超広角・広角・望遠に加えて、被写体までの距離を計測できるTOFカメラ(深度計測カメラ)を加えたクアッドレンズ仕様となった。
TOFカメラ以外の仕様は、以下のとおり。基本的にはNote 10+もNote 10もカメラ機能は同じだが、Note 10には前述のTOFカメラがない。
- 超広角レンズ:1600万画素、画角123度、F値2.2
- 広角レンズ:1200万画素、画角77度、F値1.5/F値2.4、光学手ブレ補正対応
- 望遠レンズ:1200万画素、画角45度、F値2.2レンズ、光学手ブレ補正対応
Note 10+ではTOFカメラを使ってぬいぐるみを3Dで取り込める。
背面カメラの新機能として、リアルタイムに人物を抜き出して背景をぼかして撮影できる「Live Focus」が、動画撮影時にも利用可能となった。
また、Note 10+ではTOFカメラを利用してぬいぐるみなどを立体的に取り込むことが可能に。取り込んだデータは3Dアバターとして利用したり、3Dプリンターに転送して、印刷することも可能という。
AR Doodleでは、空間に絵や文字を書き込んで映像化できる。
さらに、Sペンを利用して空間に絵や文字などを書き込む「AR Doodle(AR手書き)」機能も用意される。
映像内に立体的な絵を書き込んだり、人物の顔を認識し、顔の周囲に文字や絵を書くと、それらが顔の動きに追従して動くといった、新しい映像体験を可能としている。この機能は、映像クリエイターなどに特に喜ばれそうだ。
正面カメラはパンチホールデザインで搭載。パンチホールが極限まで小さくなっているため、思ったほど邪魔とは感じない。
正面カメラは2機種とも同仕様のシングルレンズで、1000万画素、画角80度のF値2.2となる。Noteにとって“顔”とも言えるディスプレイに穴が空いているデザインを憂慮する声もあるが、カメラ部は極限まで小さくなっている。それでも存在感は残っているが、思ったほど邪魔という印象はなかった。
そして、画面全体を録画するスクリーンレコード時にフロントカメラで捉えた映像も加えられるようになった。ゲーム配信などに、プレーヤーも同時に撮影するといった活用が可能となる。
このように、カメラ機能もかなりの進化を遂げており、Noteシリーズのターゲットでもあるクリエイティブユーザーにとって、かなりの魅力となりそうだ。
マイクロソフトとの協業で、PCとの親和性が高められた
PCと接続して、PCのディスプレイにDeX(スマートフォンの拡張画面)を表示可能になった。
Note 10/10+では、PCとの親和性も大きく高められている。その最も大きな成果が、GalaxyスマートフォンをPC相当として利用できる「Samsung DeX」機能だ。
DeXは従来、スマートフォンにディスプレイやキーボードを接続してPC同等の利便性を提供するものだ。その基本的な考え方は変わっていないが、Note 10のDeXでは、新たにWindows PCもしくはMacに接続して表示できる「Samsung DeX for PC」が追加された。PC上にDeXのウィンドウが表示され、DeXからPCへ、またPCからDeXへファイルのドラッグ&ドロップを可能としている。
これによって、双方で扱っているコンテンツを簡単に転送したり共有できるようになり、作業効率を大きく高められる、といったものだ。
PCからDeX、DeXからPCへファイルをドラッグ&ドロップできる。
今回ので発表会の大きなトピックの1つが、マイクロソフトとの協業を大きく深めたことだ。発表会にはマイクロソフトCEOであるサティア・ナデラ氏が登壇したことからも、その関係性がかなり緊密であることが想像できる。
UNPACKEDにMicrosoftのCEO、サティア・ナデラ氏(右)が登壇し、SamsungのDJコー氏(左)と握手。
先に紹介したように、Samsung Notesで手書きデータをMicrosoft Word形式に変換できるようになっていたり、マイクロソフトが提供しているWindows 10とそのスマートフォン連携アプリ「Your Phone」で、Galaxy Note 10の表示画面をWindows上にミラーリングして表示する「Phone Screen」機能が利用できる(Note 10以外の一部Galaxyでも利用可能)点は、協業による成果と言えるだろう。
Windows 10の「Your Phone」で、Note 10の画面表示をPCにミラーリングできる。
ただ、現時点では協業のメリットがまだ大きく感じられないのも事実。とはいえ、今後の機種で協業の成果がいろいろ見えてくることになるはずで、将来への期待度はかなり高い。特に、Galaxyスマートフォンを利用するWindowsユーザーにとっては期待が高まる。
不振の続くサムスンにとっても今後を占う
大画面・ペン対応のNoteシリーズのファンはある程度いるものの……。
Note 10シリーズは、性能や機能面が正統進化し、現役最強と呼べるスマートフォンに仕上がっている。また、Sペンの魅力も他のスマートフォンには真似のできない部分で、完成度は申し分ないほどに高い。
ただ、従来までのNoteシリーズ同様に、広く一般のユーザーに受け入れられるかというと、それは難しいという印象もある。豊富な機能を使いこなせるハイエンドユーザーならともかく、一般ユーザーはここまでの機能を必要としているかというと、かなり疑問だ。
加えて、Galaxy Note 10は949ドル(約10万1000円)から、Galaxy Note 10+は1099ドル(約11万6000円)からという価格も、かなりハードルが高い。
Noteシリーズには熱狂的なファンがいるので、一定数は確実に売れるはずだが、そこからの上積みをどれだけ得られるかが勝負だ。価格面から考えても、苦境の続くサムスンとって、救世主となる製品にはならない可能性が高い。
従来からいかにユーザー層を広げられるかが、今後サムスンにとって重要なミッションとなるだろう。
(文、撮影・平澤寿康)