三木谷氏「慎重に慎重を重ねたい」新・楽天モバイルの進捗が判明。世界初の完全仮想化ネットワークの姿

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楽天は10月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと肩を並べて携帯電話事業に参入する。決算の場で、その一部が明らかになった。

撮影:小林優多郎

楽天は8月8日に、2019年第2四半期の決算説明会を開催した。10月からのサービス開始で注目を集める「楽天モバイル」のMNO※1事業がスモールスタートとなるという見通しを示した。

楽天モバイルでは、自前のモバイルネットワークを構築するにあたり、従来は専用の設備や機器が必要とされた機能をソフトウェア化し、汎用サーバーで動作させる「仮想化ネットワーク」を採用している。

※1 MNOとは
自社で通信設備を所有する移動体通信事業者(Mobile Network Operator)のこと。日本では2019年8月現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社を指す。楽天モバイルは、10月からその4社目になる予定。

三木谷氏「慎重に慎重を重ねたい」

楽天 三木谷氏

楽天の019年度第2四半期の決算説明会に登壇した三木谷浩史社長。

撮影:太田百合子

これまで、楽天の三木谷浩史社長が繰り返し掲げてきた「低れんで利用しやすい料金」でのサービス提供は、この仮想化ネットワークの採用による設備投資の大幅なコストダウンを前提とするもの。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクも、その料金プランには注目している。

直近の各社決算会見でも、料金改定の計画について質問が飛ぶと「楽天の出方を見て検討したい」と口をそろえる。

一方で、制御装置や交換機などのコアネットワークだけでなく、基地局などの無線アクセスネットワークまで仮想化ネットワークを採用するのは、世界でも前例のない試みとなる。

それだけに三木谷氏は、

「ホップ、ステップ、ジャンプでやっていこうと思っている。第1弾はスモールにローンチし、安定性を確認した上で、オンラインを中心に受付しビッグローンチとしたい。最終的にはリアルな店舗も含めたグランドローンチと、段階的に展開していく」(三木谷氏)

と話し、「まったく新しいネットワークだけに慎重に慎重を重ねたい。1~2カ月は限定的な形で様子を見ることになるだろう」と、スモールスタートとなる見通しを示した。

新・楽天モバイル始動までに300万契約には届かず

DMM mobileなどを継承

楽天は、DMM.comのMVNO事業「DMM mobile」と、インターネットサービス事業「DMM光」を、9月1日に継承予定。

出典:楽天

楽天モバイルはこれまで、MNO事業のスタートまでに既存のMVNOのユーザーを「300万契約まで増やしたい」との目標を掲げてきた。多くのユーザーを獲得した上で10月以降MVNO※2からMNOへと移行してもらえば、安定した顧客基盤を確保できるとの狙いがあったからだ。

※2 MVNOとは:
自社で通信設備を持たず、MNOから借り受け事業を展開する仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator)のこと。

2017年に経営破綻したプラスワン・マーケティング社の通信事業「FREETEL」に続いて、2019年9月1日にはDMM.comのMVNO事業「DMM mobile」を買収し、ユーザーを引き継ぐ。9月1日時点で楽天モバイルが抱えるMVNOの契約回線数は、DMM mobileユーザーを含めて220万契約となる見込みだ。

スモールスタートとなることで、これらのユーザーがMNOへ移行できるタイミングも後ろ倒しとなるのか。楽天モバイルの山田善久社長によれば、三木谷氏の言う「ホップ、ステップ、ジャンプ」の具体的な計画については、9月上旬にあらためて発表する予定だという。

目標としてきた300万人に到達しないまま、MNOのスタートを迎えることについて三木谷氏は「やろうと思えば300万も可能だったとは思うが、今マーケティングに予算をかけるよりMNOがスタートしてからに回した方がいいと判断した」と説明。

「現状のMVNOの回線スピードも悪くはないが、サクサクとはいえない。MNOではより高速でクオリティーの高いサービスが提供できる、(300万よりもさらに)多くのユーザーに移ってもらえると思っている」と自信を見せた。

モバイルネットワークの“AWS化”も視野に

楽天モバイルの仮想化RAN

楽天モバイルが公開しているネットワーク装置。

撮影:太田百合子

仮想化ネットワークの採用はコスト面だけでなく、「通信の品質にも大きく寄与する」と三木谷氏。「高速で遅延が小さく、多くのユーザーが使える、つまり5Gで実現しようとしていることが、4Gの段階で実現できる」と説明する。

さらに「これまでのモバイルネットワークは土管。単につなげることがその役割だったが、エッジコンピューティングを導入することで役割は大きく変わる」とも話す。

楽天モバイルでは、約4000台のエッジサーバーを全国の基地局に設置する計画で、これにより従来はクラウドで提供されていたようなさまざまな機能やサービスを、より高速で遅延の少ないエッジで提供できるようになるという。

「安くて速いだけでなく、今までになかったようなネットワークのサービスを提供する。それはつまり“ネットワークにAIが入る”ということ。これはまさにネットワーク革命であり、今世界中のキャリアが我々に注目している」と三木谷氏は自信を見せている。

すでに他国のキャリアからさまざまな問い合わせを受けていることを明かし、「将来的にはアマゾンがAWS(Amazon Web Services)で行ったように、我々のモバイルネットワークをサービスとして、グローバルに展開していきたい」との新たな目標も示した。

楽天は「計画は順調に進んでいる」とアピール

タレック・アミン氏

楽天モバイルCTOのタレック・アミン氏(写真中央)。

撮影:太田百合子

一方で注目を集める存在だけに、失敗は絶対に許されないとの思いもある。楽天モバイルCTOのタレック・アミン氏は「コアネットワークに関してはすでに100%完了していて、すでに社員を対象にした実用運転を開始し、その安定性も確認している」と、現在の進捗状況を説明する。

「我々の仮想化ネットワークやエッジサーバーは世界的にも革新的な技術で、消費者により良い体験を提供できる。アーキテクチャーを完成させるまでの道のりは単純なものではなかったが、我々はそれを成し遂げた」

「あとは安定性とセキュリティーの強化。これらが確立されたのちに、10月1日のローンチを迎えることになるだろう」(アミン氏)

と技術的先進性を改めて強調しつつ話した。

また、三木谷氏自身も「(スモールスタートと言っても)ほんの短い期間のこと。10月1日のローンチが遅れるわけではない」と強調し、計画が順調に進んでいることをあらためてアピールした。

(文、撮影・太田百合子)


太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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