エントリーシートがお金になる。就活サイトの経済圏

学生が企業に送ったエントリーシート(ES)に金銭的価値が生まれている。

エントリーシートには、志望動機を書かせる単純なものから、「3000万円あったらなにをしますか」や「最高に面白いエピソードは?」など、学生の回答にユニークさを求めるものもあり、人気企業を通過したエントリーシートを見たい学生も多い。

就活サイトでは最高報酬、1枚あたり3000円

スマホを見ている写真

就活を終えた学生の収入源となっている(写真はイメージです)

撮影:今村拓馬

就職活動を終えた都内の私立大学4年のカナさん(21、仮名)は今年の6月頃から就活情報サイトである「就活会議」や「ユニスタイル」にESを売ることにハマったと言う。カナさんは、サイトのキャンペーンからESが売れることを知り、友人もやっていたことから始めた。

就活情報サイトは、企業や内定先を通過したESを定期的に募集している。 サイトにより、そのESの換金方法や値段のつけ方は異なる。

各企業の新卒採用・ インターンの口コミを閲覧できる就活生限定のサービスを提供している「就活会議」はESを一律500円で受け付けており、一つの会社につき先着5枚までとなっている。選考やインターンシップの体験記を追記すると、最大で3000円の値段がつくものもある。本サイトによると、選考体験記を20件以上提出し5万円の謝礼金を受け取った人もいると言う。

就活会議のホームページ

就活情報サイトの「就活会議」。今は募集を終了をしている。

出典:「就活会議」HPより

カナさんは5社分のESを、募集していた各就活サイトに提出。合計15000円を手にした。内定先のESや面接の雰囲気なども追記した情報には、実際に、「就活会議」の最高報酬額である3000円の価値がついた。企業の面接の進み具合によってもらえる額は異なる。

「お小遣い感覚で割りがいいです。サイトに記入する時間の約20分でお金がもらえるし」

このように作成したESをお小遣い感覚で企業に提出する学生は多い。 ワンシーズンで総額10万円を稼ぐ学生もでており、学生の間でじわじわとひろまっている。

Twitterにはこんな声も。

「Unistyle(編集部注:ユニスタイル)ようやく今日7950円きた。 これでES・体験記関連では総額15000円くらい稼いだ。」

「選考体験記の投稿で10万稼いだ。アマゾンギフト券がもうすぐ使い果たしちゃいそう。」

就活費用は平均で約16万円。学生には痛い出費

就活生

撮影:今村拓馬

就職活動支援サービスを支援する企業、サポーターズが約560人の学生を対象に行なった調査によると、就活費用は全国平均で16万1312円かかるという。 地方学生は関東の学生よりも5万5000円ほど高い。

交通費や都内での宿泊費用などの思いがけない出費により困窮してしまう学生も少なくない。また、就活の変動的なスケジュールにより、アルバイトをする時間を確保できず収入源に困る人も。 ESを買い取ってもうことで自分の就職活動で派生する行為からお金が稼げることは、学生にとって貴重な収入源として注目されている。

学生だけでなく企業にもメリット

ビル

ESの買取は就活情報サイトの「ONE CAREER]や「外資就活」でも行なっている(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

では、ESを買い取る企業のビジネスモデルはどのようになっているのか。

ESの買い取りをしている就活情報「ユニスタイル」でマーケティング責任者をしている郡山隼人さんは、このビジネスモデルは「リクナビ(リクルートが運営する大手就職情報サイト)と同じ構造」だと言う。主に企業の採用広告でサイトが成り立っている。

「多くのESがサイトにあることで、サイトの魅力が増すと、学生の登録者数が増え、採用率も高まる。このため、企業からの広告出稿も増えます。この広告収益を学生に還元しています。」

大量集客大量エントリー型のリクナビやマイナビといった大手就活サイトは就職氷河期以来、就活市場の一時代を築いてきた。

しかし学生が売り手市場の近年、新興サービスも数多く登場し、就活市場は多様化・多角化が進んでいる。ES買い取りに象徴されるような、就活市場で学生を集めるサービス合戦は、就活生ですら戸惑うほど、ますます白熱化しているようだ。

(文・三田理紗子/取材協力・山口真菜美)

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