サムスンはGalaxy Noteシリーズ最新モデル「Galaxy Note 10」2機種を発表した。
撮影:平澤寿康
ここ数年、スマートフォン市場でサムスンの苦境が続いている。2019年2月に発表したフラッグシップ機「Galaxy S10」シリーズは、非常に完成度の高い端末に仕上がっていたものの、全世界での売上げは思ったほど伸びていない。
IDCの調査結果によると2019年第2四半期(4月から6月)では、サムスンもファーウェイも出荷台数を落としている。
出典:IDC
アメリカの調査会社・IDCの調査によると、2019年4〜6月期のスマートフォンの世界シェア(出荷台数ベース)は、サムスンが1位(22.7%)を維持するも、2位はファーウェイ(17.6%)となっている。
ファーウェイは米中貿易摩擦の影響から、グローバルで出荷台数を落としている状況。しかし、日韓関係の緊張感が高まっていること、日本の輸出規制強化などの背景もあり、サムスンも楽観視していられる状況でないことは、今後もしばらく変わりそうにない。
Galaxy Noteブランドのファンは熱狂的だが、限定的
Galaxy UNPACKED 2019に登壇した、サムスンのDJ Koh氏。
そんな中、8月7日(現地時間)にアメリカ・ニューヨークで開催された発表会「Galaxy UNPACKED 2019」で、Galaxy Sシリーズと並ぶフラグシップスマホ「Galaxy Note 10」シリーズが発表された。
価格はグローバルで、Galaxy Note 10が949ドル(約10万1000円)から、Galaxy Note 10+が1099ドル(約11万6000円)からだ(日本での展開は未定)。
Sシリーズは、幅広いユーザー層をターゲットとする端末なのに対し、Noteシリーズは、最高峰の性能とペンを利用した「手書き機能」という他のスマホにはない特徴を世代を重ねるごとに磨き上げてきた。メインターゲットは、クリエイターや、常に最高の性能を求めるユーザーだ。
こうしたユーザーからは根強い人気があり、ある程度の販売台数は問題なく確保できる。一方、特定の人が買う「ニッチな製品」と見られているのも事実で、Noteの特徴が台数増のボトルネックになっている側面もある。
冒頭では、Galaxy Note 10シリーズの新機能を詳しく紹介された。
新機能の1つであるビデオ撮影時のライブ“ボケ”機能。開場時詰めかけたファンから、新機能発表ごとに大きな歓声が上がっていた。
いつもと違う“Windows 10との連携機能”&“PC版Galaxyの発表”
DeX新機能が紹介されたあたりから、会場の雰囲気が一変した。
ここまでは例年通りの光景だった。しかし、GalaxyをPCのように利用できる「Samsung DeX」の新機能を紹介し始めたあたりから、その雰囲気が変化した。
DeXに続いて発表されたのが、マイクロソフトとの協業の強化だ。
Windows 10向けスマホ連携アプリ「Your Phone」の機能を、マイクロソフトの担当者が実演を交えてかなり詳しく紹介。加えて、“隠し球”としてクアルコムのチップセットSnapdragon 8cxを搭載したWindows PC「Galaxy Book S」も発表された。
マイクロソフトの担当者が実演を交えてPC連携の新機能を紹介。
隠し球としてSnapdragon 8cx搭載Windows PC「Galaxy Book S」も発表された。
ファン+クリエイターに加えて、ビジネスパーソンをターゲットに
サムスンは、マイクロソフトとの協業について大々的にアピール。
正直に言って、この部分の会場の雰囲気は、来場者の歓声もあまり上がらず、盛り上がりに欠ける印象だった。しかし、それだけでは終わらず、発表製品の発売時期や価格を発表した後に、サプライズとしてマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏がステージに迎え入れられたことで、サムスンの意志がはっきり伝わった。
マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏がサプライズとして登壇。このことからもサムスンの軸足の変化が伝わってくる。
ナデラ氏のスピーチに、すばらしい何かがあったわけではない。スピーチ自体は、真っ当ではあるものの、言ってみれば特に注目すべき部分はなかった。
しかし、サムスンがGalaxy Note 10シリーズを皮切りに、従来同様のクリエイティブツールとしてだけでなく、仕事の効率を高めるビジネスツールとして販路を拡大していこうという意思表示として、十分すぎる演出だった。
もちろん、サムスンの思惑通りに行くかどうかは未知数な部分が多い。
ただ、サムスンが現状に危機感を抱き、それを打開するために取り組んでいることは、UNPACKEDの内容から十分に伝わってきた。
今後も茨(いばら)の道は続きそうだが、逆境をどう跳ね返していくかは注目しておいて良いだろう。
(文、撮影・平澤寿康)