アドビは、新しいドローアプリ「Adobe Fresco」を2019年後半に向けて準備中だ。
撮影:小林優多郎、イラスト:福田愛子
アドビは、デジタルペンに特化したお絵かきアプリ「Adobe Fresco(アドビ フレスコ)」のベータ版をプレス向けに公開した。アドビは、Frescoを2019年後半登場予定としているが、現時点で価格や公開時期などを明らかにしていない。
筆者は絵心がないものの、仕事柄、原稿の修正やデザイナーへの図版発注の指定などにデジタルペンを使っている。Frescoの機能性と、クリエイターのツール環境をどのように変えそうなのか、タッチ&トライを通して解説してみよう。
Frescoはさまざまな形状やタイプのブラシを利用できる
ブラシはPhotoshop向けのものもインポートできるほか、Apple Pencilの筆圧検知などにも対応。
最も驚くのは“ライブブラシ”。水彩画と油絵の質感や色のにじみなどが表現できる
じわじわと色が変わっていく様子は、アドビのAI技術「Adobe Sensei」の学習結果に基づくもの。
レイヤー構造やその合成モードなど、アドビ製品ではお馴染みのメニューもサポート
撮影:小林優多郎、イラスト:福田愛子
写真を下絵に絵が描けるというので、筆者も試してみることに
なお、筆者の中学時代の美術の成績は「5(10段階評価)」だ。
クリエイターの効率化、クリエイティブの大衆化が進む
豊富なブラシや機能は、表現の幅を広げる。
イラスト:さかいあい
iPad向けには「Procreate」や「CLIP STUDIO」などのイラストレーション向けソフトがすでに多く存在している。そんな中でFrescoの強みはどこにあるのか。特徴は以下のとおり。
- Photoshop向けのピクセルブラシがインポートできる
- 一般的なピクセルブラシと、拡大縮小しても絵が粗くならないベクターブラシを同時に利用可能
- リアルな水彩と油彩の表現が可能なライブブラシ機能
- Adobe Creative Cloudでのバックアップや各アプリとの連携が可能
Frescoは、言ってみれば高機能なお絵かきアプリ。しかし、実際にクリエイターの作業環境を改善できる要素がある。
Photoshop向けのブラシやAdobe Creative Cloudとの密接な連携はその代表的なものだ。また、水彩画や油絵の表現をより精細に可能としたのも、金銭的コストの削減につながる、とも言える。
プロの要求にこたえつつ、誰にでも簡単なお絵かきアプリを狙った
アドビでマーケティング本部 Creative Cloud執行役員を務める古村秀幸氏。
Frescoはプロ向けのアプリとして開発されているが、アドビでマーケティング本部 Creative Cloud執行役員を務める古村秀幸氏は「(機能やインターフェースが)シンプルなので、誰もが使えるアプリを目指している」と語っている。
油絵のような質感が大切なものを、今すぐFrescoで置き換えられる、というつもりはない。ただ、アドビのツール群の中でスケッチ用途のワークフローを完結できるのは、クリエイターにとっては、やはりありがたい機能にはなるはずだ。
スマートデバイスのペン対応が進んでいる。アドビはそこで生まれる需要に応える。
なお、Frescoは2019年後半に登場予定だが、公開当初はiOS 12.4以降のiPad Pro(全モデル)、第3世代iPad Air(2019年)、第5世代以降のiPad(2017年以降)、第5世代iPad mini(2019年)で利用可能。
古村氏は、FrescoはiPad以外のデバイス・OSへの展開も「視野には入れている」とのことで、「今後マイクロソフトのSurfaceシリーズに対応、ワコム(のペン技術を搭載したデバイス)の対応も検討している」と話している。
(文、撮影・小林優多郎 イラスト・さかいあい)