平和的だったデモがなぜ空港占拠にまでなったのか。香港雨傘運動リーダーが語る

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デモが続く香港国際空港では8月12日、全便欠航の事態となった。

提供:アグネス・チョウ

デモが続く香港で、事態が急速に悪化している。

8月9日から香港空港で数千人規模のデモが発生。12日には全便欠航という事態に発展し、空港を利用する人々が混乱に陥った。日本でもビジネスマンが香港出張を取りやめにしたり、旅行中の日本人が欠航で滞在の延期を余儀なくされるなど、大きな影響が出ている。13日はデモ隊が引き上げたこともあり、飛行機の運航を再開し始めたが、昼以降再び空港でデモを行うといった話も出ている。

一方、中国共産党の機関誌である人民日報は12日夕方、中国のSNSである微博(ウェイボー)やTwitter上の公式アカウントで、香港の隣にある深セン市に中国の武装警察を集結させ、いつでも投入できると示唆するような動画を流した。

きな臭さがいよいよ漂い始めた香港。果たしてどう事態が決着するのか。

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をきっかけとして、6月に起こった香港での大規模デモ。いまのところ収束する気配はまったくなく、香港の行政府も歩み寄る姿勢を見せず平行線をたどったままで、デモ隊と香港警察との対立が激しくなっている。

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全便欠航を通知した香港国際空港のホームページ。

香港国際空港ホームページより編集部キャプチャ

アグネスさん「空港でのデモは外国の方へのアピール」

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空港のデモに参加したアグネス・チョウさん(写真は6月10日に、日本記者クラブで会見を行った際のもの)。

世界的な経済都市である香港にとって、空港は重要な場所。そこでのデモの実施について、2014年に民主的な選挙を求めた「香港雨傘運動」を主導した団体の主要メンバーの一人で、今回もデモに関わっているアグネス・チョウ(周庭)さんは8月12日夜、こう説明した。

「9日から11日までの3日間は、空港でさまざまな国の人々と接する機会があるので、香港に来た外国の方や、香港から出発する外国の方に、『いま香港で何が起こっているのか』『警察がどれくらい暴力的なのか』『政府がどれだけ酷いのか』を英語や日本語などで説明しました。

ただ、きょう12日のデモの目的は、前日に香港警察が至近距離からデモ参加者を撃ったり、警察がデモ参加者のふりをして逮捕したりしたため、怒りと抗議を表す目的でデモを行いました。空港でのデモは平和的に行われています」

香港の蘋果日報 (アップルデイリー)によると、8月11日にデモに参加していた女性の右目に、警察が鎮圧するために撃った弾が直撃。右目は重傷で、デモ隊が空港で抗議した。

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8月12日の香港国際空港のデモでは、前日11日に女性が警察の弾によって右目に重傷を負ったことに対して、抗議の意を示した。

Issei Kato/Reuters

空港機能の麻痺は香港経済にとって大きな打撃だ。しかし、空港でのデモに参加した香港の20代男性は、それも仕方ないとする。

「空港でのデモには、その機能を停止させる目的がありました。空港は経済を重視する政府にとって大切な場所です。(あなたの会社にも影響が出るのでは、との記者からの質問に対し)仕事よりも大切なことがあります。それに、そもそも給料も低いですしね(苦笑)」

デモが続いて3カ月、経済的な影響がわかりやすく出始めているのが旅行客だ。香港のゲストハウスで働く60代の中国人女性は、ため息をつきながら話した。

「すっかり宿泊客が減ってしまったよ。おかげで私の働く日数も少なくなった。今月はまだ勤務予定があるけど、来月以降は不透明だね。しばらく(中国本土にある)家に帰ろうかと思っているよ」

香港経済直撃も「政府は聞こえないふりをした」

経済的な苦境を招く可能性があったとしても、アグネスさんらは動じない。

「もともと香港政府が自ら作った政治的な問題です。香港人は平和的で民主的なデモを行ってきました。空港の集会も、激しいデモも、最初からこうやろうとしたのではありません。社会的な影響が出ないように行っていました。

しかし、香港の政府は聞こえないふりをし続けました。この3カ月間、私たちは5つの要求を掲げて戦ってきましたが、香港政府はずっと無視し、警察はどんどん暴力的になっていきました。

他の国だったら200万人ものデモ(6月9日に行ったデモの参加者の主催者側発表人数)が発生したら普通、政府は終わりますよ。それでも終わらないのが香港政府です」(アグネスさん)

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香港で激しさを増すデモ隊と警察の衝突(8月11日)。

Tyrone Siu/Reuters

6月から7月頭にかけては、ヴィクトリア公園、銅鑼湾(コーズウェイベイ)、行政府のビルがある中環(セントラル)といった香港島側でのデモが主だった。

そこから、海を挟んだ九龍地区の尖沙咀や、中国本土に近い新界地区の元朗にもデモが広がっていき、デモ隊、警察、そして地元暴力団と見られる集団の暴力的な衝突がたびたび発生してきた。

また、地下鉄駅構内で催涙弾が放たれ、デモ隊だけでなく一般市民まで巻き込まれる事態が発生している。なぜここまで悪化したのか。

「香港の警察がより攻撃的になっています。デモ隊や(デモを取材する)記者に対する警察側の憎しみが強くなってしまったように感じます。また、中国政府も香港警察をバックアップするようになったので、何をやっても大丈夫といった感じになってしまったように思います」(アグネスさん)

負傷者が発生しただけでなく、アグネスさんも所属する民主派政党「香港衆志(デモシスト)」のメンバーや香港市民も多く逮捕されたという。

中国側では不気味な動き

中国本土側では不気味な動きが生まれている。中国共産党の機関誌である「人民日報」は8月12日夕方に、微博やTwitter上で、香港と境界を挟んだ深セン市に武装警察の車両部隊を集結させている動画を投稿。また、デモ隊を「テロ分子」として批判した。

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中国共産党の機関誌「人民日報」は8月12日深夜、中国のSNS「新浪微博」の公式アカウント上で“警告”を発した。

これまで中国政府の会見では、香港のデモについて警告こそすれ、武力による解決策は表に出してこなかった。しかし、ついにこのような動画が投稿されるに至り、微博上では「#大批武警車隊深圳集結」といったハッシュタグがランキング上位にくるなど、大きな話題になり始めている。

中国政府の武力による介入という最悪の事態が発生するのか。香港はいま予断を許さない状況となっている。

(文・吉田博史)

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