オーストリア、ウィーンの連邦首相府の屋上でハチの巣をチェック。2012年7月6日。
REUTERS/Lisi Niesner
- 2018年、アメリカにおけるミツバチのコロニーの40%が死滅あるいは消滅した。冬期のハチの減少では、史上最も深刻な状況だ。
- 世界中のハチの数は、何年も前から減り続けている。地球上のすべての昆虫は、100年以内に絶滅する危機に瀕している。
- ハチがいなければ、世界中の農業は苦境に陥るだろう。ナッツ、果物、野菜の生産が困難になり、より高価になる。
世界中のハチの数が減り、貴重な存在になっている。カリフォルニアのアーモンド農場からハチの巣箱を盗み、法外な値段で販売する輩がいるほどだ。
こうした事態になったのは、飼育されているミツバチと野生のハチが過去数十年にわたって減り続けているためだ。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、花粉を媒介する動物が絶滅する速さは100~1000倍になっている。花粉を媒介する無脊椎動物の約40%、特にハチとチョウは世界中で絶滅の危機に瀕しているという。
今日、アメリカにはミツバチのコロニーが250万しかない。これは1940年代の半分にも満たない数だ。
ハチは果物、野菜、ナッツの生産にとても重要な役割を果たしている。ハチによる受粉が行われなければ、ベリー、リンゴ、アーモンド、キュウリ、コショウ、いろいろな種子などの栄養価の高い食物が、食べられなくなる(あるいは非常に高価になる)かもしれない。
ハチがいなくなると世界はどう変わるのか、見てみよう。
養蜂家4700人を対象としたメリーランド大学による年次調査では、アメリカの養蜂家が管理するハチのコロニーは、2010年から毎年平均37.8%ずつ消滅している。特に昨年はそれよりも悪化した。
バイエルの株主総会を前に、農薬大手のモンサントとの合併に抗議し、死んだハチを抱える養蜂家。2019年4月26日、ドイツ、ボン。
Wolfgang Rattay/Reuters
昨年、アメリカの養蜂家が管理するハチのコロニーの40.7%が消滅した。これは13年前に調査が開始されて以来、最大の損失だ。
容器の中には女王バチが入っている。
Eric Risberg/AP
科学者はハチを殺しているものが何か、まだ解明したわけではないが、有力な原因は病原体、害虫、ストレス、農薬の4つに分類されると考えている。
ハチの巣箱をチェックするアマチュア養蜂家。フランス西部、サンテニャン=グランリュー、2013年4月。
Stephane Mahe/Reuters
野生のハチも減少している。いくつかの研究で、野生のハチは飼育されているハチよりも効果的に受粉を行うことが示されている。
アドリア海に浮かぶクロアチアのブラチ島で、ヒマワリから花粉を集める野生のマルハナバチ。
Reuters
このままいくと、地球上のすべて昆虫は2119年までに絶滅するかもしれない。
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受粉を担うハチがいなければ、世界の農地の35%で収穫量が低下し、世界の主要な農作物の87品種が影響を受けるだろう。
John Moore/Getty Images
あなたの好きな食べ物も入手困難になり、値段が上がるかもしれないし、あるいはなくなってしまうかもしれない。ベリー、チョコレート、リンゴ、ナシ、カボチャ、タマネギ、キュウリ、キャベツ、これらはすべてハチによる受粉に大きく依存している。
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アーモンドの受粉は、完全にハチに依存している。カリフォルニアは世界のアーモンドの80%を生産していて、毎年130万の蜂のコロニーが必要だ。
AP
ハチがいなければ、朝のコーヒーも飲めなくなるだろう。あるいは非常に高価なものになる。
Bryan Thomas/Getty Images
世界で消費される油脂の半分以上は植物から得られていて、ハチがいなければ生産が困難になる。すべての油糧種子は、少なくとも部分的にはハチによる受粉に依存しているからだ。
イギリス、ウォリックシャーの菜種畑。2005年5月。
Darren Staples/Reuters
ハチによる受粉は農作物の品質も向上させる。ブルキナファソで行われた研究では、ハチによって受粉した綿花と胡麻は、自家受粉のものよりも、品質と生産量が平均62%高いことがわかった。
ブルキナ・ァソ、ボボ・ディウラッソ近郊のコットンマーケット。2017年3月。
Luc Gnago/Reuters
出典 : Nature
欧州委員会による研究でも、ハチにより受粉されたイチゴは、風媒あるいは自家受粉のものよりも、重く、赤く、身も詰まっており、変形したものも少ないことが明らかになった。
Gerry Broome/AP
牛や羊も、アルファルファやクローバーといったハチによる受粉に依存した作物を食べる。ハチがいなくなれば、乳製品もより高価になるだろう。
ウィスコンシン州チルトンの牧場。2012年5月。
Carrie Antlfinger/AP
ハチを失うことは、あなたの着たいコットンの服を失うことを意味するかもしれない。綿には1ヘクタールあたり8つのミツバチのコロニーが必要。
Amit Dave/Reuters
もちろんハチ以外にも花粉媒介者は存在するが、ハチが最も優れている。ミツバチの1つのコロニーには2万から8万匹のハチがいて、数キロ先の花へと一斉に飛び立つ。
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ミツバチはしばしば、特定の花の蜜を集める。1種類の花粉をその花に運ぶことになるので適切に受粉できる。
マリーゴールドの蜜を集めるミツバチ。ベラルーシ、2011年7月。
Vasily Fedosenko/Reuters
つまり、ハチを失えば極度の食糧不足につながる可能性がある。
トウモロコシ、麦、米といった穀類は受粉をハチに依存していない。
Kim Kyung Hoon/Reuters
FAOによると、受粉を要する農作物はそうでないものの5倍の価値がある。ミツバチはアメリカ経済に150億ドルの貢献をしていると推定されている。
バージニア州マークハムのリンゴ農園に設置されたミツバチの巣箱。2014年9月。
J. Scott Applewhite/AP
ミツバチの仕事を人間やドローンなどのテクノロジーで行うこともできるが、コストがとても高くなる。
中国、河北省のナシ農園。ドローンで受粉作業が行われている。2018年9月。
China Out via Reuters
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)