上海にあるWeWorkの共有スペース。
WeWork
- シェアオフィスの運営を手掛ける「WeWork(ウィーワーク)」の親会社「We Company(ウィーカンパニー」は8月14日(現地時間)、IPO(新規株式公開)を申請した。
- WeWorkは、ニューヨーク市ソーホー地区のあるオフィス・スペースから始まった。今では世界124都市で、約800店舗が運営中もしくはオープン間近だ。
- We CompanyはシェアオフィスのWeWork、共同生活を手掛ける「WeLive」、起業家精神を学ぶ学校「WeGrow」 、ウェルネス体験を手掛ける「Rise by We」で構成されている。
創業から9年のコワーキングスペース「WeWork」を含む、企業価値470億ドル(約4兆9800億円)の「We Company」がIPOを申請した。
創業者でCEOのアダム・ニューマン(Adam Neumann)氏が、最初のWeWorkをニューヨーク市ソーホー地区にオープンしたのは2010年。以来、同社は「We Company」と名称を変え、共同生活を手掛ける「WeLive」や起業家精神を学ぶ学校「WeGrow」を含め、事業を拡大してきた。
WeWorkのこれまでを振り返ってみよう。
WeWorkの創業者、アダム・ニューマン氏とミゲル・マッケルビー氏は…… もちろんオフィスで出会った。
ミゲル・マッケルビー氏(左)とアダム・ニューマン氏(右)。2017年撮影。
Scott Legato/Getty
ニューマン氏がニューヨーク市に来たのは2001年、イスラエル軍を辞めた直後だった。ハイハイをする赤ちゃん用にひざ当てのついた服を売る「Krawlers」という会社を始めた。
「ぼくたちは同じビルで働いていたんだ。共同創業者のミゲル・マッケルビーは小さな会社の建築家だった」とニューマン氏は2015年、Business Insiderに語った。
Source: Business Insider
ニューマン氏は不動産にも興味があった —— ブルックリンのダンボで働きながら、ウォーターストリートにある空きビルに恋をした。
Google Street View
Fast Companyのインタビューで、ニューマン氏は家主にこのビルについて尋ねたときのことを語っている。家主は「赤ちゃんの服を売っているんだろう? 不動産の何が分かるんだ? 」と言った。
すると、ニューマン氏はこう返したという。「ビルは空っぽじゃないか。不動産の何が分かるんだ? 」
ニューマン氏と新たな友人マッケルビー氏はここで不動産ビジネスをスタートさせるための契約を結んだ。「Green Desk」は今もここにある。
Source: Fast Company
2008年、Green DeskはWeWorkの前身となった。リサイクルされた家具やフリートレードのコーヒー、観葉植物などが置かれた持続可能なコワーキング・スペースを提供したのだ。
不況でも、Green Deskは好調だった。ニューマン氏は、人々はコミュニティーの一部になりたがっているとの仮説を立てた。金融危機でレイオフされた人たちが、Green Deskから新たなビジネスをスタートさせた。
Source: Fast Company
ニューマン氏とマッケルビー氏はひらいめいた。持続可能性ではなく、コミュニティーにフォーカスすべきだと。これが人々をGreen Deskに引きつけていたのだ。2010年、2人はGreen Deskを売却し、WeWorkを始めた。
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Source: Forbes
最初のWeWorkは、ソーホー地区のアパートのようなビルの約280平方メートルほどのスペースだった。床はきしみ、レンガが見えていた。
ニューヨーク市ソーホー地区の最初のWeWork。
WeWork
Source: Forbes
早い段階から、ニューマン氏とマッケルビー氏は、オフィス・レンタルをエコシステムの一部と捉えてきた。マンション、ジム、理髪店などが揃うことで、共同生活というコンセプトが成り立つ、と。
ニューマン氏(左)とマッケルビー氏(右)。
Business Insider
Source: Business Insider
彼らはソーホー地区の旗艦店(立ち上げ後、1カ月で利益を生み出したと報じられている)にデベロッパーや投資家を招き、WeWorkブランドを成長させてきた。
ニューヨーク、チェルシーのWeWork。
WeWork
Source: Forbes
その後、2年間でWeWorkはさらに4店舗をオープンした。そしてWeWorkは、ツイッター(Twitter)やウーバー(Uber)にも早くから投資していたベンチャーキャピタル「ベンチマーク(Benchmark)」の目に留まる。
ニューヨークのチェルシーにあるWeWork。
WeWork
Source: Business Insider, Forbes
収入源を多様化させるため、WeWorkは2016年、住宅用不動産に参入した。「WeLive」は家具完備の小さなマンションを提供し、利用者はコミュニティーに入ればすぐに無料インターネットやメイドサービスといったアメニティーが使用でき、新たな友人にも出会える。
「WeLive」の部屋の様子。
WeWork
Source: Business Insider
2017年には、WeWorkは「WeGrow」を発表。2歳から11歳の子どもたちを対象とした、起業家精神を学ぶ学校だ。
WeGrowの創業者兼CEOでアダム・ニューマン氏の妻でもある、レベッカ・ニューマン氏。
WeWork
Sources: WeGrow, Business Insider, Business Insider
2017年10月、WeWorkはニューヨーク市の老舗百貨店ロード・アンド・テイラーの旗艦店の建物を8億5000万ドルで買収した。
Reuters/Shannon Stapleton
Sources: Business Insider, WeWork
同じく2017年10月、WeWorkは初めてのジムをオープンした。「Rise by We」はニューヨーク市のブロードストリートにある。ヨガやボクシングのクラスがあり、「スーパースパ」もある。
Sarah Jacobs/Business Insider
Source: Business Insider, Business Insider
WeWorkは2018年12月、We Companyとして非公開で上場申請書を提出。ニューマン氏は2019年4月にこれを発表した。
上海にあるWeWork。
WeWork
Source: Business Insider
そして8月14日、企業価値470億ドルのWe Companyは、上場に向けた目論見書を証券取引委員会(SEC)に提出した。
アダム・ニューマン氏。
Michael Kovac/Getty Images for WeWork
目論見書は、WeWorkの財務状況が詳しく分かる初めての文書だ。これにより、過去3年にわたって赤字が続いていること、2018年には売上高が約18億ドルで、最終損益は約16億ドルの赤字だったことが分かった。
また、CEOのアダム・ニューマン氏が2018年の給与の受け取りを辞退していたことも分かった。
Source: Business Insider
(翻訳、編集:山口佳美)