東京・原宿に期間限定でオープンしている「東京タピオカランド」。
画像:三田理沙子
8月13日から東京・原宿にオープンしている、新感覚テーマパーク「東京タピオカランド」。この夏一番のインスタ映えの聖地……だったはずが、Twitter上では「写真と実物が違う」などと批判が殺到する事態に。
なぜタピオカランドは炎上してしまったのか、考えてみた。
「炎上していて気になって来た」来場者
Twitterでは「文化祭レベル」などとさんざんな叩かれようだが、実際にタピオカランドに来場した人たちはどう思っているのか。まずは現地で聞いてみた。
訪れたのは、オープンから数日が経った8月16日。すでにTwitterやテレビでも話題になっていたこともあって、主催者に対して、大きな不満を抱いているような来場者は見たところでは目立たなかった。
何人かの来場者に聞いてみても、報道されている状況が実際どうなのかを、むしろ楽しんでいるように見えた。
「いいネタになるなと。近くに来る用事があり、話題になっているから来てみました。ウェルカムドリンクにタピオカが(報道のように)入っていなかった」(社会人5年目、男性二人組)
「Twitterで炎上していたので気になった。夏休みを利用して、長野県からはるばる来ました」(大学2年生、女性二人組)
「TVで炎上していると知って、どのようなものかと気になってきた」(中学1年生、女性二人組)
など、「炎上」騒動は一巡し、むしろどんな状況なのか見にくる、というような集客効果もあるようだ。
家族連れのなかには、「子どもが楽しめる場所があり、来て良かった」という意見もあった。
インフルエンサー活用で高まりすぎた期待値
その上で、タピオカランドがなぜここまでの騒ぎになってみたかを考えてみた。まず、オープン前に「期待値を上げすぎた」ことが原因のひとつではないか。
口コミ分析ツールを提供するユーザーローカルの「Social Insight」のデータによると「東京タピオカランド」「タピオカランド」に関する投稿が急増したのは7月17日の発表時と8月13日のオープン直後の2回。
「東京タピオカランド」「タピオカランド」のツイート件数の推移。最初の盛り上がりが7月17日頃、2回目の盛り上がりが8月13日頃。
出典:ユーザーローカル
オープン前の記事を見てみると、拡散した大きな要因は「東京タピオカランド」というパンチ力あるネーミングへの反響だが、それだけではない。
タピオカランドは多くのインフルエンサーを事前のレセプションに招待して様子を拡散してもらう、インフルエンサーマーケティングを大々的に打ち出していた。
調べただけでも、レセプションに参加していたインフルエンサーは18人で、ほとんどがインスタグラム上で数万人規模のフォロワーを持っている。
さらにはTikTokとも連動し、イベントの“公式テーマソング”「タピる?」を発表、「謎解きゲーム」やフォロワー数に応じた企画など、SNS連動型のコンテンツを事前に多く発表していた。
SNSで拡散される準備が万端だった分、運営面や会場の作り込みに不満が生じるようなことがあれば、「炎上」状態になりやすいのは当然、ともいえる。
タピオカランドはそうしたSNS上の「期待値コントロール」の難しさが露呈した出来事だった、と思う。
“インスタ映え”はもう古い
さらに現地に行って気になったのは、タピオカランドはそもそも「コンセプトからして流行からズレていた」のではないか、ということだ。
そう感じたのは、ブースの一つとして設置されていた「辛ラーメン」のフォトスポットを見た時だ。正直「なぜここに辛ラーメン……?」と感じた。
「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれたのも、すでに2年前。時代は進み、消費者の目線も肥えてきた。
単に「キラキラした」「カワイイ」フォトスポットがあるだけにとどまらない、空間全体を使ったあたらしい体験ありきの“インスタ映え”が、今のトレンドになっていると言えるだろう。
その典型的な成功例が、2019年に中目黒にオープンした“高級スタバ”こと「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」や、2018年からお台場で展示されている「チームラボボーダレス」だ。
さらには、そのスポットにどのような背景ストーリーがあるのかも、より強く問われるようになっている。
「辛ラーメン」は一定の人気も知名度もあるが、タピオカランドにブースを設けることが来場者の期待に沿うものだったかというと、疑問はやはり残る。
Twitter=世論ではない!?
最後に「タピオカランドはそもそも、広範囲で“炎上”していたのか?」についても触れておきたい。内装や運営に関してTwitterで批判を呼んでいることは確かだ。その一方で、SNSをプラットフォーマー別に見ていくと全く異なる世界があることもわかる。
インスタグラムで「タピオカランド」とタグ検索すると、1000件以上の投稿が見つかり、多くがキラキラのインスタ映えスポットとして現地を紹介している。TikTokにもいくつかの動画が投稿されており、タグだけを追えば、率直に言って「炎上」にまでなっている様子は見られない。テレビや報道、Twitter上とは違い、タピオカランドを楽しんでいるように見える。
インスタで「#タピオカランド」と検索した時のトップ画面。
出典:インスタグラム
そもそも、インスタグラムやTikTokを使っているユーザーにタピオカランドを訴求したかったのだとすれば、Twitterなどで大きな批判が来てしまったことは、想定していないユーザーに「見つかってしまった」ケースだ、と考えられる。
その点から見ても、イベントや商品のマーケティングを考えるときに「誰に届けたいか?」「それをどう届けるか?」をきちんと設計することは重要だ。
タピオカランドの“炎上”は、SNS時代における、適切なターゲット層への適切なマーケティングとは何か?という問題に、示唆を与えてくれているように思われる。
(文・写真、西山里緒、三田理紗子)