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- アメリカでのキャンピングカーの売上は、2019年に入ってから毎月、一貫して前年比で減少している。
- この減速は、リセッション(景気後退)が迫りつつある予兆ではないかと、専門家は懸念している。
- 8月13日、米国債の短期債と長期債のイールドカーブ(利回り曲線)が、ここ10年で初めて逆転した。この変化は、過去7回のリセッションの先触れだった。
とりあえず、イールドカーブ(利回り曲線)のことは忘れよう。今や赤信号が点滅しているキャンピングカーの売上も、リセッション(景気後退)を告げる不気味な警告のひとつなのかもしれない。
アメリカRV産業協会のデータによれば、キャンピングカーの出荷台数は、2019年に入ってから毎月、2018年の水準を下回っていて、前年比で20%減少しているという。専門家はこの減少を、より深刻な経済指標が続く前触れの可能性があると指摘している。
「RV業界は、経済学者よりもリセッションを予測するのに長けている」と述べるのは、ボールステイト大学のマイケル・ヒックス(Michael Hicks)教授。アメリカにおけるRV製造の中心地、インディアナ州にある同大学の経済学教授であるヒックス氏は、8月19日にウォール・ストリート・ジャーナルに対してそう述べた。
だが、状況を複雑にしているのが、ドナルド・トランプ大統領が続けている中国との貿易戦争だ。RVは主に中西部で製造されているが、ソア・インダストリーズ(Thor Industries)、ウィネベーゴ(Winnebago)、LCIインダストリーズといったRVメーカーは、外国からの輸入に大きく依存している。
RVを構成する部品の多くは幸い、アメリカ財務省が先ごろ発表した、中国からの3000億ドル相当の輸入品に課す追加関税の対象除外品目に含まれている。関税は輸入者が支払わなければならず、そのコストは消費者に転嫁され、すでにアメリカのRV業界に損害を与えている。
アメリカ政府は8月13日、中国の輸入品に対する新たな関税の発動を、当初予定されていた9月1日から12月15日まで延期することを決めた。
ウィネベーゴのマイケル・ハッペ(Michael Happe)CEOは、8月にアナリストらに対して、「メキシコからの輸入品に関する追加関税という脅威は過ぎ去ったが、中国との貿易戦争はもっと長引きそうだ」と語った。
投資家も、貿易戦争が長引くというハッペの懸念に共鳴しているようだ。
8月13日、米国債の2年債と10年債の金利差がマイナスとなった。これは、過去7回のリセッションの前に起きた現象だ。資金が群れをなして短期債へ流れ、金融市場に衝撃を与えた結果、ここ数年で最大規模の売り注文につながった。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット(Lisa Shalett)最高投資責任者は8月19日、「こうした逆転は、過去の記録において、リセッションの前触れとなっていた。そしていま、株式投資家は状況を注視している」と述べた。
「金や通貨、商品、その他の金利に敏感な資産も、リセッションの兆候を示しつつある。S&P500構成企業の第2四半期の利益は、2期連続で前年同期比マイナスとなっていて、収益リセッション(収益不況)にあたる状況だ」
(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)